異世界に行ったら国が衰退していたので、不動産屋をしていた経歴を生かしてエルフの王女と国を立て直す。

とっぱな

第21話お母さん! 異世界に水洗トイレを作る!④

昨夜の雨雲は遠くに行き、雲一つない青空が広がる。
初夏のような高さを我が物顔で陣取る太陽が燦燦と小さな窓から顔を見せる。


「... ...」


昨夜はよく眠れなかったのか、魔法少女は「おはよう」の挨拶もせず、気怠そうな様子で自分の部屋から出てきた。
魔法少女の部屋の扉が開く音に合わせるように魔法婆も部屋から出てくる。
恐らく、魔法少女の事が気掛かりだったのだろう。
魔法婆の目元には薄っすらとクマが。
魔法少女は近くにあった椅子にまるで老婆のようにゆっくりと腰掛ける。
関わらないで欲しいオーラをぶち破り、俺は魔法少女に提案。


「新しい水洗トイレを作るぞ!」


「... ...は?」


空気の読めない鼻デカに対し、眉をひそめ、本気の嫌がり顔。
こいつ、聞こえてないのでは?
大きな声でもう一度!
せーの!


「私は反対よ。もう、あんな思いするくらいなら今まで通りで良い」


何だよ。
全然、聞こえているじゃあないか。


「今回は外に作らず中に作ろうと思う! それに、川の水を利用するのではなく雨水を利用しよう!」


「あなた、私の話聞いてた? あたしは今まで通りで良いって!」


魔法少女は見るからに花島に対して敵意がある目をしている。
ジトッとした視線からまるで呪いをかけられそう。


「お前! 花島がせっかく考えているのに何て態度取るみそ!」


俺の事を庇ってくれるのはお前だけだよ... ..。
将来の嫁さん候補にゴーレムを入れようと誓う。


「何よ! こいつがデリカシーないこと言うからでしょ!」


同性に反発されたからか、魔法少女はゴーレムの胸倉を掴みかかり、ゴーレムも応戦。
あかん!
これ、ポロリがあるぞ!
と俺は一眼レフを異世界に持ってこなかった事を後悔した。


「花島はみんなの事思ってるんだみそ!」


「あたしの事は考えてないじゃない!」


叫ぶように思いの丈をぶつける魔法少女。
俺はみんなの為にやっているのに... ...。
魔法少女の言葉を聞くと自分がやろうとしている行為はただのマスターベーションをしているように感じ、寂しさがドッと押し寄せてくる。


「もういい! 知らない!」


魔法少女はゴーレムの腕を乱雑に振りほどくと、逃げるように自室に戻る。


「... ...」
「... ...」


辺りは冷蔵庫の中のように静まり返る。
このプロジェクトは魔法少女の力がなければ完成しない。


「俺が行くよ... ...」


魔法婆が俺が行くことを止めようと一瞬、俺の事を見るが、俺は「大丈夫。任せろ」と合図を送り、魔法少女の部屋の扉をノックした。

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