俺がこの世に生まれた意味

高木礼六

いざ、出発!

四人の視界が回復すると、其処には広大な草原が広がっていた。

見渡してみてもあるのは地面を覆い尽くす緑草、ところどころ膨らんだ小さな丘、澄み渡る雄大な青空。

あとは、ひとつだけ場違いな雰囲気を纏った大穴だけだ。


「これが魔窟の入り口。如何にも悪魔が住んでますよって感じだな。薄気味悪いぜ。」


石造の魔窟の入り口は、ぽつんとひとつだけ草原に浮き出ていて、其処からは別世界だと言わんばかりに、奥には闇が広がっている。

その形状を見る限りどうやらその先は地下につながっているらしく、内部がどれほどの大きさなのか推測が出来ない。

異端児三人は、緊張に冷や汗が伝う。


「君たちはここが初めての魔窟だったね。それなのに、僕が一緒だなんて無粋、申し訳ない。」

「いや、かえって英雄様がいてくれれば、光栄だし心強いかしら。」


そんな三人の緊張をよそに、一人だけ余裕の表情だ。

彼からして見ればこんな難易度一の魔窟、朝飯前どころか、寝起きでも余裕の攻略対象だろう。

グランバイトの謙遜した言葉にララが心強いと言うと、彼はこの先の自分の動きについて伝え始めた。


「そのことについてなのだけど、僕は君たちとこの魔窟に入りはする。だけど攻略には参加しない。」

「え、そうなの?」

「ああ、説明が遅くなってすまない。僕の用は別件で、だから単独で行動をする。つまりは別行動だ。」


元からこのクエストは三人のものであってグランバイトはついでのようなものだ。

彼がいないのが本来の形であるはずなのに、魔窟内では別行動だと聞いた途端、不安が込み上げてきた。

為すべきものが簡単だとわかっていても、それが未知だとしたら、十分不安を駆り立てる材料として成立する。

ましてや三人はまだ育ち盛りの少年少女、その丈も大きい。自分の鼓動がよく聞こえてくる。


「みんな、そろそろクエスト開始の時間だ。準備はいいかい?」

「ああ!勿論。」


アースカティアは震える手を握りしめ、過ぎる邪念を振り払って魔窟攻略への決意を固めた。
それに続き、ララ、レレもグランバイトに返事を返す。


「それじゃあ行こうか。君たちの記念すべき初冒険だ。」


英雄の号令を機に、クエスト開始だ。

グランバイトが先頭を行き、アースカティア、レレ、バックパックを背負ったララと順に後に続いていった。

この初めての魔窟にして初めてのクエスト、難易度一の最低レベル。

三人はこの後、魔窟の恐ろしさを身を以て知ることになる

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