俺がこの世に生まれた意味
余韻
「くっそー、負けたー!」
アースカティアは冷たい地面に背中を預け、敗北の余韻に浸っていた。
あの時、レレが放った雷青龍の猛攻を叩っ斬った時、勝ったと確信してしまった、油断してしまった。
まさかあの後に、レレが、
「私があの攻撃の後に追撃してくると思わなかったでしょ。」
「ああ、思わなかった。油断した俺の負けだ。やられた。完璧にやられた。あー、なんだろこの気持ち、負けたのに妙にスッキリする。ありがとな、レレ。」
「そうだよ、もっとレレに感謝してよね......ふふ、あはは!」
「あははは!」
二人は笑って、この戦闘に終止符を打った。
勝者はレレ、敗者はアースカティア。
勝者も敗者も関係なく、二人ともとても清々しい、心の中が晴れ渡ってるみたいだ。
こんな爽快感、生まれて初めてなのかもしれない。
レレが倒れているアースカティアに手を差し伸べて、アースカティアがレレの手を取り、立ち上がる。
視線が重なり、二人とも笑顔が溢れる。
「ご満悦のところ悪いのですけど、二人とも何をしてるの?」
そこに割って入る声、振り向いてみれば、紫紺の瞳でこちらを見つめ、紫髪をたなびかせる美女、マイヤがいた。
その横にはララもいる。
マイヤは冷たい視線を二人に浴びせ、ララは顳顬を掻きながら苦笑いを浮かべている。
マイヤは用事を済ませ、ここに来たばかりだ。
「何って.......もちろん訓練さ、魔法の。」
アースカティアは目を泳がせながら、一拍の溜めを置き、そう言った。
嘘ではない。確かに魔法の訓練はやっていた。
模擬戦の時も魔法を使っていたし、レレだって魔法の試行テストだったんだ。
後ろめたさを感じることは何もない、はず、
「それならいいんだけど、周りを見てみてよね。ほら、君たちのせいでこんなになってるじゃない。」
マイヤに促され、周りを見回す。
戦っている時は全く気づかなかったが、これはひどい。
流れ弾ならぬ流れ魔法が空けたと思われる無数の穴、斬撃が抉ったとしか思えない縦に伸びた浅い谷、雷によって焼け焦げた地面、集中豪雨でも起きたかのような水溜り。
落ち着いた今だからこそ理解できる、訓練場の損傷が激しい、やり過ぎた。
「模擬戦も良いけど、ほどほどにしてよね。音だってすごかったんだから、大切な用事だったのにちょっと巻いてきたのよ。それに、これを修理するのにどれだけかかると思うの?分かってるの?」
「げっ!?もしかして、高いの?いくらくらい?」
「それはね.......」
アースカティア、それにレレの額を冷や汗が伝う。
高かったらどうしよう、払えなかったらどうしよう、二人は緊張で唾を飲んだ。
「タダだよ。」
「へ?」
「へ?も何も、見てごらん、訓練場の傷が治っていくでしょ?」
マイヤが真に迫った言い方をするから緊張していたのに、いざ返事を聞いてみたら拍子抜けだ。
二人は瞠目し、そんままさっきまでズタボロになっていた場所を見た。
「本当だ、訓練場が生きてるみたい。」
レレが言った通り、訓練場はまるで命を吹き込まれたかのように、損傷した部分だけが、奇妙に畝り、みるみる内に塞がっていく。
これなら確かに修理なんて必要ないし、資源で動いてないのだとすれば費用もかからない。
強者が集まるここパールシアギルド本部には、うってつけで画期的な場所だ。
けれども何だ、あのマイヤの思われぶりな言動、まるで多大な費用がかかるみたいに言って、アースカティアはちょっとビビっていた。
「何だよ、自己修復するなら修理代なんて関係ないじゃねえか、俺たちをからかったのか?」
「ふふっ、私に無駄な心配をさせた罰だよ。それに、焦ってるアースカティアくんの顔、可愛かったよ。」
「ば、馬鹿にすんな!」
慌てるアースカティアを見て、マイヤはニヤニヤと微笑を浮かべている。
全く性格の悪い女だこと。
だが、アースカティアとレレに非があるのも確か、あまり深く咎めることはできなかった。
この件に関しては、だけど、
「ねえ、マイヤは何の用事で呼び出されてたのかしら。大変なことでもあったの?」
「あ、そうだった。そのことでユナン様に全員で来るように頼まれたの。今から行くよ。」
「え?今から?」
「そう、急ぎの用事だから、すぐに来るようにって命令。だからほら、早く早く。」
ララからの質問に、毎度の事ながら、今思い出したかのように手を叩いたマイヤは、唐突にユパから呼び出されたという。
ギルドの最高権力者であるユパからの呼び出しなんて、何か一大事でもあったのだろうか。
まさか、さっきの模擬戦での騒音に文句をつけるつもりなのか?
でも、それだと、マイヤが呼び出されたタイミングと一致しないし、わざわざユパが呼び出すはずもない。
かといって、三人に何かが思い当たる節もない。
異端児三人は頭をはてなマークを浮かべながら、早足のマイヤの背中を追った。
アースカティアは冷たい地面に背中を預け、敗北の余韻に浸っていた。
あの時、レレが放った雷青龍の猛攻を叩っ斬った時、勝ったと確信してしまった、油断してしまった。
まさかあの後に、レレが、
「私があの攻撃の後に追撃してくると思わなかったでしょ。」
「ああ、思わなかった。油断した俺の負けだ。やられた。完璧にやられた。あー、なんだろこの気持ち、負けたのに妙にスッキリする。ありがとな、レレ。」
「そうだよ、もっとレレに感謝してよね......ふふ、あはは!」
「あははは!」
二人は笑って、この戦闘に終止符を打った。
勝者はレレ、敗者はアースカティア。
勝者も敗者も関係なく、二人ともとても清々しい、心の中が晴れ渡ってるみたいだ。
こんな爽快感、生まれて初めてなのかもしれない。
レレが倒れているアースカティアに手を差し伸べて、アースカティアがレレの手を取り、立ち上がる。
視線が重なり、二人とも笑顔が溢れる。
「ご満悦のところ悪いのですけど、二人とも何をしてるの?」
そこに割って入る声、振り向いてみれば、紫紺の瞳でこちらを見つめ、紫髪をたなびかせる美女、マイヤがいた。
その横にはララもいる。
マイヤは冷たい視線を二人に浴びせ、ララは顳顬を掻きながら苦笑いを浮かべている。
マイヤは用事を済ませ、ここに来たばかりだ。
「何って.......もちろん訓練さ、魔法の。」
アースカティアは目を泳がせながら、一拍の溜めを置き、そう言った。
嘘ではない。確かに魔法の訓練はやっていた。
模擬戦の時も魔法を使っていたし、レレだって魔法の試行テストだったんだ。
後ろめたさを感じることは何もない、はず、
「それならいいんだけど、周りを見てみてよね。ほら、君たちのせいでこんなになってるじゃない。」
マイヤに促され、周りを見回す。
戦っている時は全く気づかなかったが、これはひどい。
流れ弾ならぬ流れ魔法が空けたと思われる無数の穴、斬撃が抉ったとしか思えない縦に伸びた浅い谷、雷によって焼け焦げた地面、集中豪雨でも起きたかのような水溜り。
落ち着いた今だからこそ理解できる、訓練場の損傷が激しい、やり過ぎた。
「模擬戦も良いけど、ほどほどにしてよね。音だってすごかったんだから、大切な用事だったのにちょっと巻いてきたのよ。それに、これを修理するのにどれだけかかると思うの?分かってるの?」
「げっ!?もしかして、高いの?いくらくらい?」
「それはね.......」
アースカティア、それにレレの額を冷や汗が伝う。
高かったらどうしよう、払えなかったらどうしよう、二人は緊張で唾を飲んだ。
「タダだよ。」
「へ?」
「へ?も何も、見てごらん、訓練場の傷が治っていくでしょ?」
マイヤが真に迫った言い方をするから緊張していたのに、いざ返事を聞いてみたら拍子抜けだ。
二人は瞠目し、そんままさっきまでズタボロになっていた場所を見た。
「本当だ、訓練場が生きてるみたい。」
レレが言った通り、訓練場はまるで命を吹き込まれたかのように、損傷した部分だけが、奇妙に畝り、みるみる内に塞がっていく。
これなら確かに修理なんて必要ないし、資源で動いてないのだとすれば費用もかからない。
強者が集まるここパールシアギルド本部には、うってつけで画期的な場所だ。
けれども何だ、あのマイヤの思われぶりな言動、まるで多大な費用がかかるみたいに言って、アースカティアはちょっとビビっていた。
「何だよ、自己修復するなら修理代なんて関係ないじゃねえか、俺たちをからかったのか?」
「ふふっ、私に無駄な心配をさせた罰だよ。それに、焦ってるアースカティアくんの顔、可愛かったよ。」
「ば、馬鹿にすんな!」
慌てるアースカティアを見て、マイヤはニヤニヤと微笑を浮かべている。
全く性格の悪い女だこと。
だが、アースカティアとレレに非があるのも確か、あまり深く咎めることはできなかった。
この件に関しては、だけど、
「ねえ、マイヤは何の用事で呼び出されてたのかしら。大変なことでもあったの?」
「あ、そうだった。そのことでユナン様に全員で来るように頼まれたの。今から行くよ。」
「え?今から?」
「そう、急ぎの用事だから、すぐに来るようにって命令。だからほら、早く早く。」
ララからの質問に、毎度の事ながら、今思い出したかのように手を叩いたマイヤは、唐突にユパから呼び出されたという。
ギルドの最高権力者であるユパからの呼び出しなんて、何か一大事でもあったのだろうか。
まさか、さっきの模擬戦での騒音に文句をつけるつもりなのか?
でも、それだと、マイヤが呼び出されたタイミングと一致しないし、わざわざユパが呼び出すはずもない。
かといって、三人に何かが思い当たる節もない。
異端児三人は頭をはてなマークを浮かべながら、早足のマイヤの背中を追った。
コメント
姉川京
マイヤ可愛いなwww
あ、宜しければ僕の作品もよろしくお願いします!