俺がこの世に生まれた意味

高木礼六

意識の違い

「いやいや〜。どうもありがとうございます御三方々。おかげさまでこの村にも平和が戻ってきましたよ〜。」

「いいよそんな社交辞令は。どうせそんなこと思ってもないんだろ?」

「滅相も無い。私は心から感謝申し上げております。それではこれを、報酬金でございます。」

「けっ、まあいいよ。それじゃあな。行くぞ。ララ、レレ。」


少年、アースカティア・ディグルは小太りの厭らしく小汚い、まるで豚の様な商人から目当てのものを受け取ると、すぐにその場を立ち退いた。

彼にとってこんな場所はとても居心地が悪い。


「...ちっ、やっと行きやがったか、調子に乗りやがって、この異端児どもが。」


これが真実。

商人の本音。

見た目だけでなく中身まで厭らしい豚だった。

アースカティアはそれを見抜いていたからこそこんな腐った場所を即刻立ち退いたのだ。


「あの豚、見ているだけで反吐がでるわ。今からでも倒しに行こうかしら。」

「やめとけララ。そんな事しても俺たちの評判を下げるだけだ。」

「評判も何も、私たちの評判はすでに地に落ちているかしら。」

「うん、それもそうだな。だが、倒しにいくのはやめとけよ。お前の人としての格を下げちまう。それこそあのクソどもと一緒だからな。」

「分かった、ディグルが言うならララはやめとくかしら。」


彼らはこの村ではとても嫌われている。
と言うよりかは存在自体を否定されている。

世の中に蔓延る創世の歴史。
これを信じ、これを崇めることこそ、この世の在り方で人としての在り方。
謂わば性である。


「けっ、何が創世の歴史だ。そんなもの自分の目で確かめるまでは絶手ェに信じねえからな。」


これこそが三人が忌み嫌われる理由。

絶対にして唯一の創造を否定し、自分の生き方を貫き通す。

見たもの感じたものしか肯定しないその生き方を...

周りからしてみれば自分の信じるものを否定されればたまったもんじゃ無い。
そんな相手を拒絶するのも仕方がないものだ。

だがこちらとてそれは同じ。

三人にとって周りは敵のようにしか見えない。


「これからどうする?レレはもう疲れたから家で休みたいな〜。二人はどう?」

「ララも今日は疲れたかしら。早く家に帰って休みたい。」

「そうだな。たまには家でゆっくりするもの悪く無いな。外にいても文句を言われるばっかりだし。」


三人にとって心休める場所とは家しか無い。

外にいても聞こえるのは村人たちから聞こえる陰口だけ。

もう慣れたにしても不快なものは不快なものでしか無い。

三人は心の安寧を求めて家へと向かった。

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