俺の悪役令嬢が世界征服するらしい 番外編
SS プレゼント
俺はある重大な事を見落としていた。
いやホント毎回の如く自分の気の回らなさには呆れかえる。
まあ人生なんていうのは「もっとこうしておけばよかった」とかそういう『タラレバ』で溢れている。
さて、そこまで尺もないので本題に入ろう。
この俺、周防ミコトが一体何を見落とし、現在進行形で悩んでいるのかと言うと――
「俺、お嬢様にプレゼントとかしたことないんですよ……」
「「最低ぇ~」」
俺の自室でくつろぎまくるアリシアさんとサクラさんはまったく同じタイミングでそう言った。
「あれ、でもアンタ誕生日とかあげてなかったっけ?」
アリシアさんはベッドでゴロゴロしながら漫画を読みつつ空いた片手でクッキーを摘む。
「いえ、それがあげた事ないんですよ、なんかこう何をあげればいいか結局思いつかなくッ――はぶッ!?」
床に正座をする俺の口にアリシアさんは絶妙なコントロールでクッキーを投げ入れる。
「乙女か!! お前は!!」
「いやでも相手はあのお嬢様じゃないですか、変な物あげようものならどんな罵倒が飛んでくるか分からないし……」
「だからってあげないという選択肢は無いよね~」
椅子に座って漫画を読んでいるサクラさんが口を開いた。
彼女が読んでいるのは俺が所持している物ではなく私物のBL漫画である。
「婚約してからも特に何もできてませんし…… お二人なら俺の知らないお嬢様の欲しい物を知っていると思って……」
「それで私達を呼びつけてプレゼントの相談って訳ね」
「はい……」
「でもやっぱりミコトちゃんの方がエリちゃんの好みを分かってるんじゃないの? 十年も一緒にいるんだし」
「好き嫌いは分かるんですけど、プレゼントってなるといまいちピンとくるものがなくて……」
それに以前エリザベートに『今欲しいものはなんですか?』と尋ねたら『ん~ 巨大隕石かな~』とか訳の分からない答えが返ってきたからな。アルマゲドンでも起こす気かアイツは……
しかし一番の問題はエリザベートがある程度の物を全て所持しているという点なのだ。
金、地位、宝石に土地、今では魔法も使えて大抵の事はできる女にこれ以上何をあげればいいというのか。
「あー もうめんどくさい!! 超一流アイドルである私を呼びつけて惚気話? ほんとありえないんだけど!! それよりもこれの9巻はどこにあるのよ!!」
「あー それは今フレデリカさんに貸してるんですよ」
この前エリザベートに置き去りにされていたのでお詫びの意味も込めてね。
いや全然釣り合ってないとは思うけど。
「はあ? めっちゃいい所で終わってるんですけど!! 私のこのモヤモヤをどうしてくれんの!!」
「買えばいいじゃないですか、お金持ちなんだから」
「今はコンサートホールを買い取ったせいで無駄遣いしちゃダメってキャスカに言われてるのよ!!」
そういえばそうでしたね。
アリシアさんは「もういいわ! 他のを読んでモヤモヤを相殺よ!!」と俺の本棚を漁りはじめた。
「ん~ エリちゃんの好きなものね~ なんだろう。玩具、とかかな?」
「玩具ってお人形さんとかって話ですか?」
そんな可愛い趣味あったかな?
「いや人間の玩具っていう意味ね」
「それは人としてどうなんすか……」
あ~なるほど!! と言いかけたが寸前で言葉を摩り替えた。
サクラさんは再び考える仕草をとる。
「……ん〜 やっぱりここはミコトちゃんの身体、主に下半身を提供して――」
「ワー!! ワー!! ワー!!」
「? サクラ今なんて言ったの?」
「何でもないですよアリシアさん、ささこの漫画とか凄いこじらせてるバトル漫画ですからきっと面白いですよ!!」
俺はとりあえず物凄く中二病全開の漫画をアリシアさんに押し付けて話を逸らす。
「あ、ありがと…… でもアンタ何をそんなに焦ってるのよ……」
「ナンデモアリマセンヨ、サアヨンデヨンデ」
カタカナ発音のまま俺はアリシアさんを部屋の隅に追いやる。
「ちょっとサクラさんいきなり何を言ってるんすか……」
「え、結構真面目に考えたんだけど」
「アリシアさんの前でそういう話はNGってキャスカさんが言ってたじゃないですか」
「私的にはそろそろアーちゃんにまともな性教育を施すべきだと思うけどね~ 今時『子供はキスしたらドラゴンが運んでくる』とか信じてる十八歳いないよ?」
「だからって俺とお嬢様を題材にしないで下さい」
そういうのは二人の時にしてくれ……
「コホンッ 話は逸れたけどこうなったらコレしかないね」
そう言うとサクラさんはメガネを外した。
どうやらとんでも便利スキルの《神眼》を使うつもりらしい。
「サクラさんあんまり眼を使うとダメなんじゃ」
「いいのいいのこれくらい。これでエリちゃんの姿を確認して何が欲しいか覗けば解決でしょ」
珍しくツバキさんがいないからってこの人は……
「どれどれ~ うわッ!! エリちゃんの下着エロ!! ははッ たまんねえ~な!!」
未だに寝室で寝ているエリザベートを《神眼》で覗き見るサクラさん。
しかしコメントが親父すぎる……
「ほほ~ なるほどなるほど。そういう事ね」
何に納得したのかサクラさんは和服の胸元から小さな紙とペンを取り出した。
なんだ、この人の谷間は四次元にでも繋がっているのか?
「サラサラサラ~ ほい完成!!」
「ん?」
サクラさんが俺に渡してきた紙にはこう書かれていた。
 『周防ミコトが何でも言うこと聞いちゃうチケット』
「これがお嬢様の欲しい物なんですか? これじゃあ今とそんなに変わらない気がするんですけど……」
「だーかーら。そういう事なんだってば」
「はい?」
「考えても見てよ、あのエリちゃんがプレゼントを渡さないミコトちゃんを怒らない理由を」
「理由…… はっ!? もしかして既に別の男がいて俺に興味がないとか!?」
「なんでいきなりネガティブになるの……」
そうじゃなくて、とサクラさんは立ち上がり俺にこう耳打ちした。
「一番欲しい物はもう持ってるから何もいらないって事でしょ」
その日、俺は相談にのってくれたアリシアさんとサクラさんに夕食をご馳走した。
いやホント毎回の如く自分の気の回らなさには呆れかえる。
まあ人生なんていうのは「もっとこうしておけばよかった」とかそういう『タラレバ』で溢れている。
さて、そこまで尺もないので本題に入ろう。
この俺、周防ミコトが一体何を見落とし、現在進行形で悩んでいるのかと言うと――
「俺、お嬢様にプレゼントとかしたことないんですよ……」
「「最低ぇ~」」
俺の自室でくつろぎまくるアリシアさんとサクラさんはまったく同じタイミングでそう言った。
「あれ、でもアンタ誕生日とかあげてなかったっけ?」
アリシアさんはベッドでゴロゴロしながら漫画を読みつつ空いた片手でクッキーを摘む。
「いえ、それがあげた事ないんですよ、なんかこう何をあげればいいか結局思いつかなくッ――はぶッ!?」
床に正座をする俺の口にアリシアさんは絶妙なコントロールでクッキーを投げ入れる。
「乙女か!! お前は!!」
「いやでも相手はあのお嬢様じゃないですか、変な物あげようものならどんな罵倒が飛んでくるか分からないし……」
「だからってあげないという選択肢は無いよね~」
椅子に座って漫画を読んでいるサクラさんが口を開いた。
彼女が読んでいるのは俺が所持している物ではなく私物のBL漫画である。
「婚約してからも特に何もできてませんし…… お二人なら俺の知らないお嬢様の欲しい物を知っていると思って……」
「それで私達を呼びつけてプレゼントの相談って訳ね」
「はい……」
「でもやっぱりミコトちゃんの方がエリちゃんの好みを分かってるんじゃないの? 十年も一緒にいるんだし」
「好き嫌いは分かるんですけど、プレゼントってなるといまいちピンとくるものがなくて……」
それに以前エリザベートに『今欲しいものはなんですか?』と尋ねたら『ん~ 巨大隕石かな~』とか訳の分からない答えが返ってきたからな。アルマゲドンでも起こす気かアイツは……
しかし一番の問題はエリザベートがある程度の物を全て所持しているという点なのだ。
金、地位、宝石に土地、今では魔法も使えて大抵の事はできる女にこれ以上何をあげればいいというのか。
「あー もうめんどくさい!! 超一流アイドルである私を呼びつけて惚気話? ほんとありえないんだけど!! それよりもこれの9巻はどこにあるのよ!!」
「あー それは今フレデリカさんに貸してるんですよ」
この前エリザベートに置き去りにされていたのでお詫びの意味も込めてね。
いや全然釣り合ってないとは思うけど。
「はあ? めっちゃいい所で終わってるんですけど!! 私のこのモヤモヤをどうしてくれんの!!」
「買えばいいじゃないですか、お金持ちなんだから」
「今はコンサートホールを買い取ったせいで無駄遣いしちゃダメってキャスカに言われてるのよ!!」
そういえばそうでしたね。
アリシアさんは「もういいわ! 他のを読んでモヤモヤを相殺よ!!」と俺の本棚を漁りはじめた。
「ん~ エリちゃんの好きなものね~ なんだろう。玩具、とかかな?」
「玩具ってお人形さんとかって話ですか?」
そんな可愛い趣味あったかな?
「いや人間の玩具っていう意味ね」
「それは人としてどうなんすか……」
あ~なるほど!! と言いかけたが寸前で言葉を摩り替えた。
サクラさんは再び考える仕草をとる。
「……ん〜 やっぱりここはミコトちゃんの身体、主に下半身を提供して――」
「ワー!! ワー!! ワー!!」
「? サクラ今なんて言ったの?」
「何でもないですよアリシアさん、ささこの漫画とか凄いこじらせてるバトル漫画ですからきっと面白いですよ!!」
俺はとりあえず物凄く中二病全開の漫画をアリシアさんに押し付けて話を逸らす。
「あ、ありがと…… でもアンタ何をそんなに焦ってるのよ……」
「ナンデモアリマセンヨ、サアヨンデヨンデ」
カタカナ発音のまま俺はアリシアさんを部屋の隅に追いやる。
「ちょっとサクラさんいきなり何を言ってるんすか……」
「え、結構真面目に考えたんだけど」
「アリシアさんの前でそういう話はNGってキャスカさんが言ってたじゃないですか」
「私的にはそろそろアーちゃんにまともな性教育を施すべきだと思うけどね~ 今時『子供はキスしたらドラゴンが運んでくる』とか信じてる十八歳いないよ?」
「だからって俺とお嬢様を題材にしないで下さい」
そういうのは二人の時にしてくれ……
「コホンッ 話は逸れたけどこうなったらコレしかないね」
そう言うとサクラさんはメガネを外した。
どうやらとんでも便利スキルの《神眼》を使うつもりらしい。
「サクラさんあんまり眼を使うとダメなんじゃ」
「いいのいいのこれくらい。これでエリちゃんの姿を確認して何が欲しいか覗けば解決でしょ」
珍しくツバキさんがいないからってこの人は……
「どれどれ~ うわッ!! エリちゃんの下着エロ!! ははッ たまんねえ~な!!」
未だに寝室で寝ているエリザベートを《神眼》で覗き見るサクラさん。
しかしコメントが親父すぎる……
「ほほ~ なるほどなるほど。そういう事ね」
何に納得したのかサクラさんは和服の胸元から小さな紙とペンを取り出した。
なんだ、この人の谷間は四次元にでも繋がっているのか?
「サラサラサラ~ ほい完成!!」
「ん?」
サクラさんが俺に渡してきた紙にはこう書かれていた。
 『周防ミコトが何でも言うこと聞いちゃうチケット』
「これがお嬢様の欲しい物なんですか? これじゃあ今とそんなに変わらない気がするんですけど……」
「だーかーら。そういう事なんだってば」
「はい?」
「考えても見てよ、あのエリちゃんがプレゼントを渡さないミコトちゃんを怒らない理由を」
「理由…… はっ!? もしかして既に別の男がいて俺に興味がないとか!?」
「なんでいきなりネガティブになるの……」
そうじゃなくて、とサクラさんは立ち上がり俺にこう耳打ちした。
「一番欲しい物はもう持ってるから何もいらないって事でしょ」
その日、俺は相談にのってくれたアリシアさんとサクラさんに夕食をご馳走した。
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