俺の悪役令嬢が世界征服するらしい 番外編
アイドルナイト・フォーエバー
今日はやけにスポットライトが眩しく感じる。
最後のライブだからって感傷的になっているのかしら。私らしくもない。
そんな事より歌わなきゃ。
「下僕共ー まだまだバテるには早いわよ!!」
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』
でもまさかこんなに早くアイドルを辞める事になるなんて夢にも思わなかったわね。
寿退社って言うんだっけこういうの。え? 少し違う?
まあ細かい事はいいわ。意味が伝わればいいのよそんなの。
どちらにせよ私、アリシア・フローレンス・スタンフィールドは今日この日をもってアイドルを引退するのだから。
◇
 ――私は小さい頃から特別だと言われて育ってきた。
スタンフィールド家、ミスリム帝国三大貴族の一つにして由緒正しい騎士の家系。
その長女として生を受けた私は本来人間が一つしか授からない加護と呼ばれる特殊な力を二つも授かった。
《無剣の加護》はありとあらゆる聖剣や魔剣を使いこなす事ができる力、ああでも最近どこぞのちびっこい魔女から聞いた話だと本当は『手にした物の全てを聖剣や魔剣に変えて使用できる力』なのだそうだ。
道理で小さい時にフォークでテーブルが切断できた訳ね。
《剛腕の加護》はそのままの意味で常識を超えた筋力を発揮できるというもの。
これは完全に制御するのに結構苦労した。
なにせ何かのはずみで人を付き飛ばしでもしたら即死レベルの危険な加護だったから。
よく使用人を何人も病院送りにしたっけ。
そんな並外れた加護を二つも授かった私は幼少期から騎士としての才覚を発揮した。
大人顔負け、将来は歴代でも最強の騎士になるだろうと太鼓判を押された。
私自身、ゆくゆくは騎士になるのだろうと漠然と考えていた。
しかし五歳になったある日、王族主催のパーティーで出会った金髪碧眼の少女。
エリザベート・エレオノール・ブリュンスタッドに私は負けた。
別に手加減していた訳じゃない、お父様の面目を保つ為にそれなりに本気でやった。
でも負けた。
他の勝負はともかく剣で負けたのはかなりショックだった。
世の中には私なんかよりずっと特別で凄い人間がいるのだと思い知らされた。
そこからは習い事の毎日。遊ぶ事も許されない辛い日々。
それもこれも全部あの金髪女のせいよ!!
まあ結局はお母様が教えてくれた歌でエリザベートを負かしてやったけどね。
ざまあみろよ。
でもその勝負を見ていたアルライド王子が数年後、私に婚約を持ちかけてくるのだから私も大概ざまあないわね。
◇
私が九歳になった年、お父様とお母様が事故で死んだ。
遠方からの帰り道に馬車が大規模な土砂崩れに巻き込まれたのが原因だった。
私は運良くサクラの家に遊びに行っていたから助かった。
でも本音を言えば私も二人と一緒に死にたかった。
しかし私には悲しみに暮れている時間は無かった。
スタンフィールド家を守れるのはもう私しかいないのだから。
それから少しして新しいメイドが家にやってきた。
名前はキャスカ・ミレニア。
まあ彼女と私の間にあったもろもろに関してはまた次の機会にキャスカ本人の口から語ってもらう事にしましょう。
なにせ少し長い話なる――
歌姫、つまりアイドルとして活動するようになったのは十歳になった時だった。
最初に言い出したのはキャスカだ。
『アリシア様の歌はもっと多くの人に届けるべきです!!』と鬼気迫る顔で迫られたのが発端。
かくして正式に家督を継いだ私は騎士とアイドル、二束の草鞋を履く事になった。
私の輝かしい伝説ロードのはじまりはじまり~
◇
はい、という訳で今日は私の人生最後のライブよ。
はじまりはじまりって言っておきながらもう終わりみたい、ごめんね。
だって、あんまり余計な事考えてると歌詞が飛んじゃいそうなんだもの。
「――ッ」
これで十曲目も終わり、後一曲歌ったら休憩ね。
「……??」
なんか私、いつもより疲れてる?
おかしいな、体力だけならエリザベートにだって負けない自信があるのに。
――もし、アイドルを辞めたくないって言ったら。誰か私を助けてくれたかな。
「ッ!!」
駄目よアリシア。
決めたじゃない。スタンフィールド家の為にも婚約を受け入れるって……
だから歌いなさい。口を開けて、声を出して、私の歌を聞きに来てくれた人達の為に。
せめて最後の――お母様の曲を歌い終わるまでは泣いちゃ駄目。
◇
「アーちゃんお疲れ~ ほいタオル」
休憩時間に入って舞台袖に戻ると何故か控えていたサクラが私にタオルを渡してきた。
「ここ関係者以外立ち入り禁止なんだけど?」
「まあまあそう硬い事言わないで。ささ姫、お手をどうぞ」
そう言ってサクラは半ば強引に私の手を引く。
どうやら楽屋まで付いて来るつもりらしい。
ていうかヒメはアンタでしょ。
「それで、なんでアンタがここにいるのよ。平民…… マネージャーは?」
さっきまで舞台袖にいたと思ったのにどこにいったのよあのグズ。
主と一緒でホント自分勝手なんだから。
「そのミコトちゃんに頼まれたの、ちょっとの間アーちゃんをよろしくってね」
「どういう意味?」
「ん~ ナ・イ・ショ」
「なによそれ……」
まあいいか。途中で仕事を放棄するような奴じゃないし、その内戻ってくるでしょう。
……それに比べてキャスカったらどこをほっつき歩いてるのかしら。
いつも嫌ってくらい私にベッタリな癖に。
「いやぁ~ アーちゃんのライブはいつ見ても最高だね~」
サクラは私のイライラを察知したのか唐突に話を切り替える。
私は「フンッ 当の然よ」と答えた。
「私も幼馴染として鼻が高いよ~ きっと天国のおじ様とおば様も喜んでるね~」
「……そうだといいけど」
イザヨイ・ヒスイ・サクラノヒメとはもう随分長い付き合いになる。
何気にエリザベートよりも出会うのは早かった。
御三家同士という事もあり幼少期は互いの家をよく行き来して遊んだものだ。
お父様とお母様が事故にあったあの日、もしサクラが遊びに誘ってくれなかったら私はたぶん生きてはいなかっただろう。
そういう意味合いでいえば命の恩人と言えなくもない。
「そういえばツバキはどうしたのよ、一緒じゃないの?」
「あ~ 今はちょっと別行動中~」
「?」
珍しい事もあるものだ、基本的にアレはサクラの傍を離れたりしないのだけど。
相当大事な用事でもあるのかしら。
「そんな事よりもアーちゃん。私は少し、いえ結構怒っています」
「は? なんでよ?」
「結婚の話、どうして私に相談してくれないの!!」
「ああ、その事ね」
誰から聞いたのか知らないが既にサクラも私が今置かれている状況を把握しているようだった。
いや、サクラなら人に聞かずとも眼を使えば大抵の事は分かってしまう。
「だってアンタ同人誌製作で忙しそうだったから」
「なんでそこで引いちゃうのよ!! もっと攻めて攻めて攻めて倒してよ!! アーちゃんは受けだったの!?」
「なんかソレ意味が違ってきてない?」
要はもっと頼って欲しかったらしい。
自分の方がよっぽど秘密主義な癖に随分と勝手な言い分だ。
「私だけじゃないよ、なんでもっと皆を頼らないの? アーちゃんって昔からそういう所あるよね」
「いや、言ったって仕方ないじゃない。相手は王族なんだから」
「王族が何よ! あんな傀儡政権で幅を利かせてる連中なんて怖くないんだから!!」
場所によってはその場で処刑されてもおかしくない事を口走るサクラ。
今日は随分とテンションが高い。
「御三家の当主も世代交代したんだからさ~ いつまでも王族王族って気にしなくてよくない?」
「王族お抱えの預言者がそれを言う?」
「未来予知のお仕事はお金になるから引き受けてるだけだもん。別に忠誠心とかじゃないし」
ハッキリと言い切ったわねこの女。
まあでも昔に比べて王族の内情が腐敗しているのは紛れもない事実ではある。
二代だか三代だか前から良からぬ人身売買に手を出しているとも聞くし、かなり先行きが不安だ。
「もしかしてアンタ、それもありきでエリザベートの計画を支持してたりするわけ?」
「ん? まあ途中からね。上手く立ち回れば皆がハッピーになれそうだし」
「腹黒ね」
「?? 何か言った?」
「別に」
どうやら眼ほど耳はよくないらしい。
「話戻すけど、別にアーちゃんが結婚したからって誰も幸せにならなくない?」
「でも私が折れなきゃ結果として皆が不幸になるじゃない」
王族の意向を無視すれば騎士団の存続も、スタンフィールド家の名誉も失いかねない。
私が結婚する事で、アイドルを辞めることでそれを避けられるのなら……
「アーちゃんさ~」
楽屋の前に到着してドアノブに手をかけたサクラはゆっくりと扉を開けながらこう言った。
「私達舐めすぎ」
「!!?」
楽屋の内部を見た私は自分の目を疑った。
だって――
「王様だーれだ?」
「王様だーれだ?」
「王様だーれだ?」
「王様だーれだ?」
だって楽屋の中にはありとあらゆる拷問器具が並べられ、その中央で楽しそうに王様ゲームをしている知り合い達の姿があったからだ。
顔ぶれはエリザベート、周防ミコト、キャスカ、ツバキの四名。
「うし! 妾じゃ!!じゃあ次は特大ゴムパッチンでいってみよ~」
「ヒィッ!!?」
「ヒィッ!!?」
怯えているのは既に全裸で空中に吊るされている知らない男二人。
どうやら彼等に対する罰を決める王様を選別しているらしい。
「ね? 残念ながら私達、アーちゃんの意見なんか無視で助けちゃうんだから」
サクラはニッコリと笑いながら「私も混ぜて~」と輪の中に入っていった。
私は状況を理解できないまま、ただその場に立ち尽くす。
果たして私のラストライブはどうなってしまうのだろう……
最後のライブだからって感傷的になっているのかしら。私らしくもない。
そんな事より歌わなきゃ。
「下僕共ー まだまだバテるには早いわよ!!」
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』
でもまさかこんなに早くアイドルを辞める事になるなんて夢にも思わなかったわね。
寿退社って言うんだっけこういうの。え? 少し違う?
まあ細かい事はいいわ。意味が伝わればいいのよそんなの。
どちらにせよ私、アリシア・フローレンス・スタンフィールドは今日この日をもってアイドルを引退するのだから。
◇
 ――私は小さい頃から特別だと言われて育ってきた。
スタンフィールド家、ミスリム帝国三大貴族の一つにして由緒正しい騎士の家系。
その長女として生を受けた私は本来人間が一つしか授からない加護と呼ばれる特殊な力を二つも授かった。
《無剣の加護》はありとあらゆる聖剣や魔剣を使いこなす事ができる力、ああでも最近どこぞのちびっこい魔女から聞いた話だと本当は『手にした物の全てを聖剣や魔剣に変えて使用できる力』なのだそうだ。
道理で小さい時にフォークでテーブルが切断できた訳ね。
《剛腕の加護》はそのままの意味で常識を超えた筋力を発揮できるというもの。
これは完全に制御するのに結構苦労した。
なにせ何かのはずみで人を付き飛ばしでもしたら即死レベルの危険な加護だったから。
よく使用人を何人も病院送りにしたっけ。
そんな並外れた加護を二つも授かった私は幼少期から騎士としての才覚を発揮した。
大人顔負け、将来は歴代でも最強の騎士になるだろうと太鼓判を押された。
私自身、ゆくゆくは騎士になるのだろうと漠然と考えていた。
しかし五歳になったある日、王族主催のパーティーで出会った金髪碧眼の少女。
エリザベート・エレオノール・ブリュンスタッドに私は負けた。
別に手加減していた訳じゃない、お父様の面目を保つ為にそれなりに本気でやった。
でも負けた。
他の勝負はともかく剣で負けたのはかなりショックだった。
世の中には私なんかよりずっと特別で凄い人間がいるのだと思い知らされた。
そこからは習い事の毎日。遊ぶ事も許されない辛い日々。
それもこれも全部あの金髪女のせいよ!!
まあ結局はお母様が教えてくれた歌でエリザベートを負かしてやったけどね。
ざまあみろよ。
でもその勝負を見ていたアルライド王子が数年後、私に婚約を持ちかけてくるのだから私も大概ざまあないわね。
◇
私が九歳になった年、お父様とお母様が事故で死んだ。
遠方からの帰り道に馬車が大規模な土砂崩れに巻き込まれたのが原因だった。
私は運良くサクラの家に遊びに行っていたから助かった。
でも本音を言えば私も二人と一緒に死にたかった。
しかし私には悲しみに暮れている時間は無かった。
スタンフィールド家を守れるのはもう私しかいないのだから。
それから少しして新しいメイドが家にやってきた。
名前はキャスカ・ミレニア。
まあ彼女と私の間にあったもろもろに関してはまた次の機会にキャスカ本人の口から語ってもらう事にしましょう。
なにせ少し長い話なる――
歌姫、つまりアイドルとして活動するようになったのは十歳になった時だった。
最初に言い出したのはキャスカだ。
『アリシア様の歌はもっと多くの人に届けるべきです!!』と鬼気迫る顔で迫られたのが発端。
かくして正式に家督を継いだ私は騎士とアイドル、二束の草鞋を履く事になった。
私の輝かしい伝説ロードのはじまりはじまり~
◇
はい、という訳で今日は私の人生最後のライブよ。
はじまりはじまりって言っておきながらもう終わりみたい、ごめんね。
だって、あんまり余計な事考えてると歌詞が飛んじゃいそうなんだもの。
「――ッ」
これで十曲目も終わり、後一曲歌ったら休憩ね。
「……??」
なんか私、いつもより疲れてる?
おかしいな、体力だけならエリザベートにだって負けない自信があるのに。
――もし、アイドルを辞めたくないって言ったら。誰か私を助けてくれたかな。
「ッ!!」
駄目よアリシア。
決めたじゃない。スタンフィールド家の為にも婚約を受け入れるって……
だから歌いなさい。口を開けて、声を出して、私の歌を聞きに来てくれた人達の為に。
せめて最後の――お母様の曲を歌い終わるまでは泣いちゃ駄目。
◇
「アーちゃんお疲れ~ ほいタオル」
休憩時間に入って舞台袖に戻ると何故か控えていたサクラが私にタオルを渡してきた。
「ここ関係者以外立ち入り禁止なんだけど?」
「まあまあそう硬い事言わないで。ささ姫、お手をどうぞ」
そう言ってサクラは半ば強引に私の手を引く。
どうやら楽屋まで付いて来るつもりらしい。
ていうかヒメはアンタでしょ。
「それで、なんでアンタがここにいるのよ。平民…… マネージャーは?」
さっきまで舞台袖にいたと思ったのにどこにいったのよあのグズ。
主と一緒でホント自分勝手なんだから。
「そのミコトちゃんに頼まれたの、ちょっとの間アーちゃんをよろしくってね」
「どういう意味?」
「ん~ ナ・イ・ショ」
「なによそれ……」
まあいいか。途中で仕事を放棄するような奴じゃないし、その内戻ってくるでしょう。
……それに比べてキャスカったらどこをほっつき歩いてるのかしら。
いつも嫌ってくらい私にベッタリな癖に。
「いやぁ~ アーちゃんのライブはいつ見ても最高だね~」
サクラは私のイライラを察知したのか唐突に話を切り替える。
私は「フンッ 当の然よ」と答えた。
「私も幼馴染として鼻が高いよ~ きっと天国のおじ様とおば様も喜んでるね~」
「……そうだといいけど」
イザヨイ・ヒスイ・サクラノヒメとはもう随分長い付き合いになる。
何気にエリザベートよりも出会うのは早かった。
御三家同士という事もあり幼少期は互いの家をよく行き来して遊んだものだ。
お父様とお母様が事故にあったあの日、もしサクラが遊びに誘ってくれなかったら私はたぶん生きてはいなかっただろう。
そういう意味合いでいえば命の恩人と言えなくもない。
「そういえばツバキはどうしたのよ、一緒じゃないの?」
「あ~ 今はちょっと別行動中~」
「?」
珍しい事もあるものだ、基本的にアレはサクラの傍を離れたりしないのだけど。
相当大事な用事でもあるのかしら。
「そんな事よりもアーちゃん。私は少し、いえ結構怒っています」
「は? なんでよ?」
「結婚の話、どうして私に相談してくれないの!!」
「ああ、その事ね」
誰から聞いたのか知らないが既にサクラも私が今置かれている状況を把握しているようだった。
いや、サクラなら人に聞かずとも眼を使えば大抵の事は分かってしまう。
「だってアンタ同人誌製作で忙しそうだったから」
「なんでそこで引いちゃうのよ!! もっと攻めて攻めて攻めて倒してよ!! アーちゃんは受けだったの!?」
「なんかソレ意味が違ってきてない?」
要はもっと頼って欲しかったらしい。
自分の方がよっぽど秘密主義な癖に随分と勝手な言い分だ。
「私だけじゃないよ、なんでもっと皆を頼らないの? アーちゃんって昔からそういう所あるよね」
「いや、言ったって仕方ないじゃない。相手は王族なんだから」
「王族が何よ! あんな傀儡政権で幅を利かせてる連中なんて怖くないんだから!!」
場所によってはその場で処刑されてもおかしくない事を口走るサクラ。
今日は随分とテンションが高い。
「御三家の当主も世代交代したんだからさ~ いつまでも王族王族って気にしなくてよくない?」
「王族お抱えの預言者がそれを言う?」
「未来予知のお仕事はお金になるから引き受けてるだけだもん。別に忠誠心とかじゃないし」
ハッキリと言い切ったわねこの女。
まあでも昔に比べて王族の内情が腐敗しているのは紛れもない事実ではある。
二代だか三代だか前から良からぬ人身売買に手を出しているとも聞くし、かなり先行きが不安だ。
「もしかしてアンタ、それもありきでエリザベートの計画を支持してたりするわけ?」
「ん? まあ途中からね。上手く立ち回れば皆がハッピーになれそうだし」
「腹黒ね」
「?? 何か言った?」
「別に」
どうやら眼ほど耳はよくないらしい。
「話戻すけど、別にアーちゃんが結婚したからって誰も幸せにならなくない?」
「でも私が折れなきゃ結果として皆が不幸になるじゃない」
王族の意向を無視すれば騎士団の存続も、スタンフィールド家の名誉も失いかねない。
私が結婚する事で、アイドルを辞めることでそれを避けられるのなら……
「アーちゃんさ~」
楽屋の前に到着してドアノブに手をかけたサクラはゆっくりと扉を開けながらこう言った。
「私達舐めすぎ」
「!!?」
楽屋の内部を見た私は自分の目を疑った。
だって――
「王様だーれだ?」
「王様だーれだ?」
「王様だーれだ?」
「王様だーれだ?」
だって楽屋の中にはありとあらゆる拷問器具が並べられ、その中央で楽しそうに王様ゲームをしている知り合い達の姿があったからだ。
顔ぶれはエリザベート、周防ミコト、キャスカ、ツバキの四名。
「うし! 妾じゃ!!じゃあ次は特大ゴムパッチンでいってみよ~」
「ヒィッ!!?」
「ヒィッ!!?」
怯えているのは既に全裸で空中に吊るされている知らない男二人。
どうやら彼等に対する罰を決める王様を選別しているらしい。
「ね? 残念ながら私達、アーちゃんの意見なんか無視で助けちゃうんだから」
サクラはニッコリと笑いながら「私も混ぜて~」と輪の中に入っていった。
私は状況を理解できないまま、ただその場に立ち尽くす。
果たして私のラストライブはどうなってしまうのだろう……
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