SUPEL_night

ルゲ野。

第五話


「_____________ぇ」
恐怖。ただただ恐怖を感じた。この状況だと普通は叫ぶんだろうけど、私には惚けた声を出すので精一杯。その謎の手がお巡りさんの制服に包まれていたら良かった。けどその腕はただただ黒かった。そして何より、血生臭かった。
「は………?」
何者かに捕まった。その事を再認識して、無意識に顔があるであろうを見た。そこにはちゃんと顔があった。

人間の頭を真っ二つに割り、目玉が垂れ、脳があっただろう場所から蝶の触角のような物が生えている真っ黒な顔が。

「__うわっ!!」
突然目の前の化け物が掴んでいた腕を思いきり振り、私を壁に叩きつけた。一瞬天地がひっくり返ったのかと思った。そして徐々に視界が暗くなる。でも化け物はそれを許さなかった。
私の首を、真っ黒な手で閉めてきた。立ったままの状態で、壁に押し付けるようにして。
「(···これ、壁ドンなのかな···人生初···)」
何故この状況でもおちゃらけれるのか、自分でもわからない。涙が出てきた。苦しくてなのか、それとも死ぬのが怖くてなのか。さっきから心臓の音がうるさい。心は何故かこんなに落ち着いているのに、体が「まだ死にたくない」と焦っているようだった。···当たり前じゃん。まだ死にたくない。こっちに引っ越してきて、まだ何にも出来てない。不良にガン飛ばされて、友達にちょっとからかわれて···まだ嫌な事しか思い出がない。あっ、そうだ。クラスの子と勉強の教え合いっこする約束もまだだ。とにかくまだ死ねない。死ねない。
「死にっ··たく···ないっ!!!」
思いっきり叫びながら全力で化け物に頭突きをした。見事クリーンヒット。化け物がよろけて力が弱まったうちに息を整えながら走り出す。化け物はまだ体制を立て直せていない。
「(おえ"っ!何あの馬鹿力!!死ぬわっ!)」
頭の中で愚痴りながら必死に足を動かした。逃げるために____
__何処へ?
家は絶対に駄目。お父さんとお母さんがいる。警察とか消防···?場所が分からない。なら携帯で···持ってない。
「………逃げれなくね…?」
だんだん走る速度が落ちて、止まった。逃げ場は何処にもない。あんな化け物を殺せるわけないし、何処か家に助けを求めても、その家の住民を道連れにしてしまう。警察や消防に助けを求めても、ホラ話だと思われて信じてくれないだろう。
「……詰んだわ……コレ…」
···なんで外に出ちゃったのかな、私。後ろを振り向けば化け物がこちらに走って来ている。そのまま体を化け物の方に向ける。いっそ殺せ、と言うように。つまり、諦めたってこと。
化け物はブラブラ腕を振りながら、こちらに走ってきてた。全身、どこもかしこも真っ黒だった。
「(うわ···あいつ腕キモッ···噛みつかなくて良かったー···)」
またおちゃらける。そんな場面でもないのに。
化け物がどんどん近づいてくる。あと大体……15m…?なんか腕をこっちに伸ばしてきた。あと少しで顔に当たる。
「(うぇ……痛そ…)」
薄目で見て、化け物が私の顔を押し潰そうとしているのがわかった。…せめて痛くないようにしてほしかった。
「(もう無理っ………!)」
化け物が間近まで迫ってきて、ギュッと目を瞑る。そのまま衝撃に備えた。

何かが割れる音が響いた。

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