悪役令嬢は婚約破棄されて覚醒する

ブラックベリィ

075★庶民だと思っておりましたが、所詮はお姫様でした


 『ママァ…やったよ、角ウサギだよ
  あの角は、ユニコーンよりは落ちるけど
  色々な効力あるから、高く売れるよぉ………

  よく、資金が足りない時に、一生懸命絞めたよねぇ
  身体強化を使って、無傷で捕獲してさぁ………

  毛皮もお肉も高く売れたよね
  魔石は回復魔法を付与して、高く売ったねぇ~………』

 嬉々としてそう言うコウちゃんに、私はちょっと言葉を詰まらせる。

 コウちゃん、私に、あの愛らしい角ウサギを絞め殺せと言うの?
 ここに居るのは、この世界で生まれたひ弱なシルビアーナなのよ。
 皇族や王族の血を引く、高貴なお姫様なのよ。

 前世の市職員で自衛隊予備役に入っていた男性の時の私だって、せいぜいが鶏さん絞めたことがある程度なのよぉぉぉ~………。
 アラフィフだって、お祖母ちゃんが絞めているのを見て覚えた程度なのよ。
 そりゃ~……女暗殺者の時は………。

 でもでも、ここでは……お金って何、それって食べれるの?
 って感じに育っているのよ、この私は………。
 買い物すらしたことの無い、温室育ちを超える。
 王室育ちの………何度も言わせて、お姫様なのよぉぉぉぉ~………。

 無理、絶対に無理よぉぉ~………。
 なんで、ここって倒すのに無理な魔物しかいないのよぉ………。
 心が折れちゃいそうよぉぉぉ~………。

 なんて苦悩している間に、何もい無い空間が広がっていた。
 そうガッちゃんのお食事タイムは、既に終わっていました。
 そして、ガッちゃんが、人の悪い? 笑顔で言う。

 『主さま、腕輪の中に、なんでも一撃で絞め殺せる
  死薔薇の鞭が入っている

  直接、戦いたくなかったら、それを使うと良いよ
  それと、角ウサギの角と毛皮と魔石だよ

  はい、主さま、コウとしゃべっていたから
  ちゃぁ~んと取っておいたよ』

 言外に、えらいでしょ?と、胸を張るガッちゃんが可愛かった。

 うぅぅ…ありがとう、ガッちゃん…本当に、気遣いの出来る子ね。
 不甲斐無い飼い主でゴメンね、ガッちゃん。
 ありがたく、角と毛皮と魔石をいただくわ。
 ふふふふふ………もう、無理なモノは全部ガッちゃんに任せちゃおう。

 そう思いながら、私はガッちゃんにお礼を言う。

 「ありがとう、ガッちゃん
  とても助かるわぁ~………

  後で、コレをギルドに行って、換金したら
  美味しそうな獲物がいる情報をもらうわね
  何か食べたい魔物とかいる?」

 私のセリフに、ガッちゃんは小首を愛らしく傾げ、考え込むように長い耳の艶やかな毛を両手で梳く。

 いやぁぁぁ~ん…ロップイヤーみたいで可愛いわぁぁ~………。
 ああ、もふもふしたい…ガッちゃんを思いっきり抱き締めて………。

 と、思った時には、自重を忘れた私はガッちゃんを抱き上げ、無意識にもふもふしてました。

 あぁ~癒されるわぁぁ~…この感触…コウちゃんと違う…滑らかな毛触り…たまりません。
 ふくよかなモコモコ感も最高ぉ~……って、もしかして、こんな風にあのヤンデレ達に見られていたのか、私は?

 そこでハッとした私は、そっとガッちゃんを床に降ろす。
 と、うっとりしていたガッちゃんも正気に戻り、慌てて乱れた毛を身繕いし始める。

 『ママ、ガッちゃん、ママの魔力酔いしてたよ
  あんまり、こういう場所ダンジョン等
  不用意に抱っこしてモフモフするのは
  控えた方が良いよ。危険だから………』

 ちょっとヤキモチの入っているらしいコウちゃんの忠告に、私は素直に頷く。

 「そ…そうね…気を付けるわ………
  ってことで、ゴメンね、ガッちゃん」

 私の言葉に、ハッとしたガッちゃんはちょっと胸張りして答える。

 『はい、大丈夫です、主さま………
  あっ…それで食べたい魔物ですけど……
  ドラゴン系が食べたいです

  ドラゴン系は、エネルギーが多くて美味しいんです
  あっ…魔石はペッて出しますし、角や爪も残します

  勿論、ウロコ付きの皮も残しますね
  確か、高く売れるモノだと聞いたことがありますので………』

 うん、お気遣いありがとう……本当に、良い子だわぁ~………。
 さっさと、このダンジョンを出て、ガッちゃんが美味しく食べられる魔物狩りに行きましょう。
 まずは、コウちゃんとガッちゃんを万全にして、そしたら腕輪の中の子達を順番に起こしてあげなきゃ………。

 「うん、ありがとう
  それじゃ、私のレベルの底上げの為にも
  武器を取り出さないとね

  検索、死薔薇の鞭……っと、これね」

 そう言って、私は左の腕輪の中から、死薔薇の鞭を取り出して、装備するのだった。

 「それじゃ、さくさくと先に進みましょうか?
  出口まで………」

 そうして、私はガッちゃんに先導され、ダンジョンの出口に向かって歩き出した。



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