悪役令嬢は婚約破棄されて覚醒する

ブラックベリィ

061★パーティー会場にて・そして新たなる断罪が始まる4



 その叫びと共に、お花畑の馬鹿は魔法を行使しようとしたようだが………。
 何も発動しなかった。
 そう、小さな火の玉程度も、その手の平から出ることは無かった。

 「馬鹿なっ…なんで、魔法が発動しない………
  えっ…魔力が……えっ? ええっ?

  感じないっ…俺の魔力っ………
  どうしてっ? …なんでっ? ………」

 そこに至って、初めてお花畑の馬鹿は、自分が魔法を使えないという事実に気付いたようだ。
 だが、それも同然のことだろう。

 シルビアーナから吸い上げていた、膨大で強大な魔力は、もはや途絶えているのだから………。
 そう、自らの手で、その根源を開放したのだから………。

 「お前が今まで使っていた魔法は

  私の愛しいルビアシルビアーナの魔力を使って
  行使していたモノだ

  お前が湯水のごとく魔力を無造作に使うたびに
  彼女が衰弱し倒れていたのを、私は知っている」

 「馬鹿を言うな

  あの血筋だけのクズのブサイクには
  魔力量なんてほとんど無かった

  俺の魔力は、俺の魔力だ
  あんなデブスなんか関係ないっ」

 叫ぶ馬鹿の言葉に、私はビキッとするが、それ以上に、幼少期からシルビアーナを婚約者として、愛しい相手として見ていたアルディーンが、苦しみに耐えるように言い放つ。

ルビアシルビアーナは、お前の代わりに
 ほとんど隔離されるようにして

 皇太子妃どころか、時期皇帝が習う
 帝王学までを勉強させられたんだぞ

 能無しのお前の魔力の底上げの為に………

 常におぞましい呪具で
 お前に魔力を奪われ続ける中

 常時、魔力枯渇状態のまま
 魔法の勉強をさせられ

 感情制御されてなお
 哀しみと苦しみの中で喘いでいた

 そのルビアシルビアーナをいたわるどころか
 見下しイジメていたお前を
 易く死なせてなどやらない。まずは………」

 ふむ、流石、我が親友の息子・アルディーンは出来が良い。
 本当に、良い少年に育ったモノだ。
 中身も外見も………ちょっと文句のつけようのないのが少し………。

 私の前で、アルディーンが剣を抜き、馬鹿を翻弄する。
 ろくに訓練も鍛錬もしてい無い馬鹿は、自分の魔力量と思い込んでいた、私のシルビアーナの魔力量に頼り身体強化ばかり行使していた。

 それゆえに、自らを鍛えるということをカケラもしていなかったようだ。
 そんな馬鹿が、麗しの剣鬼と謳われたアルディーンにかなうはずが無い。
 猫が、ネズミをいたぶるように、アルディーンは馬鹿の血を………小さな、だが、痛みを伴う傷で出血させている。

 痛みと出血とこんなはずじゃないという心の痛みで、どんどん顔色を悪くしている馬鹿と………。
 やっていることは非道だが、それは楽しそうにわらっているアルディーンの能力格差は、誰の目にも見えてきた。

 それに伴い、シルビアーナの魔力を呪具で奪い馬鹿が使っていたコトは事実として、見ている者達に認識され始めている。
 馬鹿が、何も行動しなければ、疑心暗鬼ですんだものを………。

 もっとも、それを狙ってやったか? 
 アルディーン、流石は、私がシルビアーナの婿と選んだ男だ。
 そのぐらいの胆力が無ければ、複数の王家の血を引くシルビアーナを守れないからな。

 勿論、廃嫡したとはいえ、それまで我が娘を生贄として魔力を奪ってまで皇太子としていたお花畑の馬鹿が可愛いのか、ブランデルは力づくで止めようとするが………。
 当然、私は邪魔をしてやる。

 勿論、救いの手が届かず、歯噛みするように………。
 邪魔をする為に、視線をアストリス殿に向ける。
 すると、彼は、普段の温和な表情を邪悪に変え嘲笑あざわらう。

 「彼の皇帝の言葉を奪います

  さすれば、臣下に命令できず
  また、馬鹿を癒す魔法も使えません

  己の力を使えぬ苦しみを
  シルビアーナ姫の万分の一でも
  味わうように………

  いかがですか? レギオン殿」

 「くっくく、やれ

  我が娘シルビアーナと妻ディアーナの苦しみを
  わずかなりとも返してやれ

  苦しめブランデル」

 「レギオン殿
  皇后や側室達の声も奪いましょう

  代わりに命令できぬように
  なんでしたら………

  宰相や近衛将軍達の声も奪いましょうか?」

 「ああそうだな、頼む」

 「お任せあれ、レギオン殿」

 私達の会話を聞いていたのは、我が親友ともルドレイツ侯爵アーダベルトと護衛に付いていた部下達だけだった。

 シルビアーナに付いていた従者が、ヨロヨロと立ち上がり私達の元へと歩いて来た。

 はて? 何用だろうか? 伯母上の魔法により、シルビアーナに忠実なる者だったのは確かだが………。
 おしむらくは、脆弱な力しか持っていないコトだ。

 などと思っていたら、従者は、胸元に手をいれ何かを取り出した。
 いったい何をするのか?と観察していると、唐突に喋り始める。

 「カイドール侯爵様
  皇太后様よりのお手紙にございます」

 そう言うと従者は、私の前に跪き手を差し出した。
 それを、アーダベルトが横合いから手紙を取り上げて確認する。

 「確かに、皇太后陛下の手紙だぞ。レギオン」







コメント

  • ノベルバユーザー307657

    親父さん苦労したんやな…
    愛する娘をほぼ監禁(軟禁)?状態にされて、呪具を嵌められて、
    シルビアーナの本当の婚約者さんも、バカス王子のせいで好きな人が辛いめにあうのを、見せられて…
    報われて?よかった

    0
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