悪役令嬢は婚約破棄されて覚醒する
034★菱形の立方体の中には、一角天馬(ユニコーンペガサス)の幼体が居ました
私は、思わず叫んでしまった。
だって、その立体的な菱形の中には、どう見ても一角天馬(ユニコーンペガサス)の幼体が居たのだから………。
その幼体は、目を瞑って半丸まりの状態でいる。
えっとぉ~……この部屋のイベントって、腕輪が出現するモンじゃなかったの?
なんで、生物が出現するの?
じゃなくて、こん中に入った状態で、この子は生きているの?
なんか、コウちゃんと良く似ている…額の角が1つで、背中の翼が3対なんて………。
コウちゃんの兄弟? ………は、姿的に有り得ないかな?
ここって、遺伝子の組み換えとか遺伝子融合とかをしていた実験施設………じゃないっわ。
嗚呼、前世の記憶のセイで………妙な発想が………。
でも、現に、前世の女暗殺者だった私は、そうやって誕生しているし………。
こうして、この世界に転生? して生まれてきている。
そういう知識を持った者が………。
いやいや…ここのダンジョンって、創造主の女神様の初めの狂った神子が封印されている場所よねぇ………。
でも、私自身の前世もタイムパラドックス状態で、同時期に繰り返して生まれているし………。
それを考えると、創造主の女神様が存在した時代に、別の世界からとか別の次元から………なんてことも考えられるのよねぇ………。
公式攻略本には、創世記のことなんて一切書いてなかったけど、裏設定でエグイのがあったのかも………。
例えば、創造主である女神様が、現在は存在していない理由とか………。
えぇぇぇい…止め…止め…そんなこと考えたって意味は無いわ。
私は、今どうすれば良いかを探さないといけないのよ。
そして、コウちゃんと一緒にこの世界を冒険して、美味しいモノをいっぱい食べるんだから………。
とにかく、この左手首に嵌まる腕輪と対の腕輪を見付けて、このダンジョンを抜ける。
それが、最優先よ。
別に攻略しなくたって良いわ。
コウちゃんと無事に脱出できるなら………。
とにかく、対の腕輪を探さないとね。
まったく、いったい何処にあるのかしら?
菱形の立方体の真ん中に浮かぶ一角天馬の幼体が出現したことに困惑する私は、つい腕に抱えているコウちゃんに聞いてしまう。
「ねぇ…コウちゃん
腕輪が出現するんじゃ
なかったの?」
つい、現実逃避ぎみにそう言えば、ちょっと力無い声で前足を軽く上げて言う。
『……腕輪…だよぉ……
ほらぁ…角のところに
ある…でしょぉ~……』
どこか力無い声で、とてもつまらなそうに言うコウちゃんに、私は小首を傾げてしまう。
うん? どうしたのかな? なんか、コウちゃん萎れている?
仲間の姿を見て、嬉しくないのかな?
じゃなくて、角の根元…ねぇ………あっ…確かに………。
いかにも、この右手首の腕輪と対って感じの腕輪がある。
コウちゃんの指摘に…その場所(角の根元)を確認し、私は納得する。
「ああ、確かに……
角の根元にあるわね」
頭の大きさの割りに、かなり太くて短い角の根元に、今、私が嵌めている腕輪とそっくりなモノを視認して頷く。
とりあえずは、対の腕輪の回収よ、シルビアーナ。
そんでもって、もしも生きているなら………どう見ても幼体だしねぇ………。
見捨てて行けないから……連れて行ってあげたいかも………あっ……そっか……。
どこか声に力無く、つまらなそうな声の理由に思い当たり、私はふっと笑ってしまう。
そっかぁ~…なんか見たコトある感じだと思ったら、あの子達の姿に近いんだ。
アラフィフ喪女の私が、前世で飼っていた猫ちゃんや犬達に………。
そこで、やっとあの子達(飼っていた猫や犬)を思い出す私って薄情なのかなぁ………。
じゃなくて、あの子達は誰が引き取ってくれたのかなぁ?
黒歴史のお宝は恥だぁぁぁ~って、自分の前世を思い出してすぐに思い浮かんだけど………。
あの子達の大半って、前のご主人が事故で亡くなって………って………あれ?
何だろう? 今…なんか思い出しかけたような………。
自分の中に思い起こされた記憶に引っかかるモノを感じて、思わず縋るに腕の中のコウちゃんを抱き締める。
私の腕の感触に、どこか安心したらしいコウちゃんは、はふっと溜め息を吐いて言う。
『ますたぁー…
コイツも連れて行くの?』
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