悪役令嬢は婚約破棄されて覚醒する
031★この部屋の中から腕輪を探さないとならないようです
何も無い無機質な石壁だった筈の壁や天井は、何処の熱帯ジャングルかと思うほど植物に溢れていた。
それも、見たコトも無いような魔植物や怪植物である。
その中に、スチルだけにしか現われなかった神聖植物が混じっているなんて………。
さっき、コウちゃんが魔素と真素が濃い目っていただけあるわね。
魔素はその名の通り、魔の属性。
真素は、定番の聖の属性。
その両方が濃いってことは、こういうことなのね。
そう言えば、深淵の大樹海には、神属性や聖属性の希少な動植物が存在するって文献に書いてあったわね。
勿論、かの色々とてんこ盛りのRPG【黄昏の解放】の攻略本に書かれていたわね。
何度も読み返して『これって何処にあるのよ』って、何度も叫んだものだわ。
でも、そっかぁー…この《狂いし神子の討伐》を攻略する為の正規ルートを通らないと出現しないモノだったのねぇ………。
このRPG【黄昏の解放】には、色々な動植物が存在していたけど、どのくらいの動植物が、普通に浸透しているのかしら?
魔物の代表で低レベルのモノって言うと、定番のスライムやオークとかよねぇ………。
前世の記憶どころか、シルビアーナとしての意識や思考も、あの3点セットによって、かなり制御されていたセイで、この世界の常識的なことからして知らないのが現実よねぇ………はぁ~………。
『ますたぁ~………』
思考におちいった私に、コウちゃんが心配そうに声を掛けて来る。
その暁色の双眸はその心情を表すように、不安に揺れていた。
考えてみたら、コウちゃんみたいなマスコットキャラなんて居なかったわよねぇ………。
コウちゃんは、隠しキャラだったのかしら?
《狂いし神子の討伐》を攻略しないと出現しないとか………。
じゃなくて、コウちゃん不安がっているわね。
きっと、この部屋を見て引いているって思ったのね………。
こういうのは、視界に入るだけなら全然大丈夫だけど………。
対処方法がわからないわぁ………ここは、コウちゃんにナビしてもらいましょうか?
「ふぅ~……
大丈夫よ、コウちゃん…
ちょっとびっくりした
だけよ
まさか、なぁ~んの
変哲も無い石壁が
植物の蔓で出来た壁に
変化するとは
流石に思わなかったから………」
まじまじと植物壁を見回し、私はコウちゃんを肩から両腕に移して抱き締める。
うぅ~ん…定番のもふもふは癒されますわ。
ふわふわの毛皮から少し出ている3対の翼を撫でてから、私はコウちゃんに聞く。
「こうしていても
何も始まらないわね
とりあえず
私は何をしたら
良いのかしら?」
私の言葉にコウちゃんは、もふもふされたことでうっとりさせていた顔から、ハッとして言う。
『……あっ……うん…
あのねぇ……まず
腕輪を見付けるのぉ~……
この部屋の壁のどこかに
埋まっているはずなんだぁ~……
左の腕輪と対なんだぁ~………』
そう言われ、私は植物壁を改めて見回す。
うねる蔓のところどころに蕾みやら実が実っているのが見える。
ふむ……ということは、あの花の蕾みか、実の中にあるとふんでいいのかしら?
もしくは、華々しく、あるいは凛とした、もしくは静かにたたずむように咲く花の華芯に隠れているのかしら?
「そうなの?
それじゃ、まずは
コウちゃんの言う
その腕輪を
この部屋の中から
探さないといけないのね」
この高性能インベントリ機能付きの腕輪と対ねぇ………。
ということは、何か特別な機能が付属しているってことよね。
それは、是非ゲットしたいわね。
そう言えば、課金をしても、絶対に手に入らないっていう、幻のアイテムが存在してたわねぇ………。
それって、ここやこういうダンジョンの中にあるってことよね。
嗚呼、あの課金しまくってゲットしたアイテムがあったら、色々と簡単に出来たわよねぇ………。
そんなことを考えながら、私は腕の中に抱き込んだコウちゃんを肩へと移動させ、手直の植物壁へと近寄り手を伸ばす。
怖がっていた、このイベントは終わらない。
たとえ、こちらも時間が停止した無間地獄の空間だったとしても………。
左手首に嵌めた腕輪の対を見付けるまで、たぶんこの部屋から出られないだろうしねぇ………。
そのアイテムに興味あるし………とりあえず、探そう。
私が植物壁に手を伸ばすと、植物がサッと避ける。
「へぇ? えっ?
えぇぇぇぇぇ~……
ここの植物って
触ろうとすると
避けるのぉ?」
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