悪役令嬢は婚約破棄されて覚醒する
030★最初のお部屋は想像していたモノとは全然違いました
お水が喉を通り、胃の腑へと滑り落ちた瞬間、私の中で何かが混ざり合い、暖かく大きな力へと変化したことに気付いた。
コレって……もしかして、飲んだお水のセイ?
だから、コウちゃんは飲んだ方が良いって言ったのかな?
きっとこの不思議な現象には、深い意味があると思うし………。
ちょっとびっくりした私は、その暖かく大きな力がゆっくりと私の中で収まって行くのをただ黙って待っていた。
当然、コウちゃんも何も言わずにいた。
程なく力が穏やかに収まった頃に、私はコウちゃんに言う。
「とりあえず
このお水が入った
壷も収納して
反対側の部屋に
行こうか?」
『うん、ここで
必要なモノって
ソレ(水入り壷)だけ
だから………』
それを聞いて、私はコウちゃんに頷き、その部屋にある姿見みの大鏡の前に立ち、鏡面に両手を当てて魔力を流す。
流石に、こう何回もやると慣れて来るものね。
そう言えば、魔力を行使するのは慣れと想像力が重要だって言ってたわねぇ………。
そんな埒も無いことを考えつつ大鏡を超えると、反対側の回廊へと出で居た。
「あれ? 右側の休憩室?
を越えて、回廊の方に
出たのかしら?」
私の呟きに、肩のコウちゃんが嬉しそうに言う。
『正解だよぉ~……
あの両方の部屋で
両方の壷のお水を
飲んだから
直接回廊に
出れたんだよぉ~………』
そのセリフを聞いて、本当にコウちゃんが居てくれて良かったなぁ~と思う私であった。
とりあえず、反対側の回廊に出たんだから………。
あっちの時同様に、全部屋の中のモノを回収すれば良いってことよね………たぶん。
「それじゃ
1部屋づつ確認して
行きますか?
コウちゃん
最初に入るべき
お勧めの部屋ってある?」
私の言葉に、コウちゃんは回廊をジィーっと見てから言う。
『ますたぁー…
1番最初に入った方が
良い部屋は
近くに見当たらないから
扉を開けずに、回廊を
とりあえず歩いてぇ~……
見付けたら言うから………』
空間移動の都合上、最初に入った方が良い部屋の側には出られなかったらしい。
ほとんどナビゲーターと化したコウちゃんを肩に、私は回廊の壁を確認するように見ながら、ゆっくりと足を進める。
そして、幾つかの扉を通り過ぎた頃に、コウちゃんが肩から身を乗り出す。
『あぁ~よかったぁ~……
あったよぉ~…ますたぁー………』
「えっ? どれ?
コウちゃん?
どの扉かしら?」
私の質問に、コウちゃんが答えてくれる。
『あの青い扉にぃ
赤い花が描かれた部屋が
最初に入るべき部屋だよぉ~……
でも、中を見ても
驚かないでねぇ~………』
コウちゃんの言葉に、私は?を浮かべつつも頷いて、赤い花の描かれた青い扉に手を掛けて押し開いた。
そうして、扉の中を見るが、ソコには何も無かった。
そう、がらんどうの広い空間だけの部屋でしかなかったことに、私は肩透かしとともに違和感を覚える。
『ますたぁーが感じた
違和感の通りだよぉ~………
中に入って
扉をきちんと閉じないと
本当の部屋の中の様子を
視認できないんだぁ~………』
コウちゃんの説明に、私はクスッと無意識に笑ってしまう。
RPGの隠しアイテムを得る為の定番の設定に、懐かしいゲームの数々の記憶がふわりと脳裏に浮かぶ。
そう言えば、私が楽しんでやっていたゲームってRPGが多かったわよねぇ…育成もそこそこやってたけど………乙女ゲームはあまりやってなかったわねぇ………。
そんなコトを思いながら、扉を振り返ってキッチリと閉めた。
カチンッという音と共に、どこかでブーンと言う音が響いた。
私は、室内がどう変化したかを確認する為に振り返った。
そこは、最初に扉を開けた時に見えた無機質な石壁が綺麗な生きた植物が上下左右ところかまわず覆う部屋だった。
「えっとぉ~……これって………」
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