悪役令嬢は婚約破棄されて覚醒する

ブラックベリィ

023★攻略方法が斬新です

 感慨深かんがいぶかげに歩く私は、まだ、その時自分の容姿がかなり変わったことに気付いていなかった。
 そう、水晶壁に映る部屋の内装と、別の場所へと移動できるという扉しか見ていなかった。
 そんな中、コウちゃんがすまなそうに言う。

 『あっ…ますたぁー…
  早くね……コウちゃん

  久しぶりの……
  魔力行使だから……

  あまり上手く魔力を
  込められなかったからぁ……

  消える前に扉を開いて
  移動しないと

  もう一回最初から
  やり直しなのぉ~………』

 そのコウちゃんの発言に、私は慌てて水晶壁に移る扉へと急いだ。

 そうよ、こういう時って、そういうパターンが多いのよ。
 忘れていた訳じゃないけど、3回分の前世で攻略できなかった、難攻不落の深淵の絶望ダンジョンの《狂いし神子の討伐》の攻略の取っ掛かりだもの………。

 本当の正式な進め方を知って、感動と感慨で思考が少し鈍っていたのよねぇ………。
 うわぁぁ~ん…間に合ってってぇぇぇ~………。

 もつれそうになる足で必死に歩き、水晶壁に映る扉へと手を掛ける。
 と、あっさりと扉は開く。
 どうやら、なんとか間に合ったらしい。

 私は、コウちゃんを腕に扉を潜った。
 そして、様子を確認しようと振り返ると、そこにはただの壁しか存在しなかった。

 残念、どういう風に変化するか見れなかったわ。
 じゃなくて、とりあえず一歩前に進んだのよね。
 真正面の精緻せいちな大門が、正規ルートじゃないなんて、誰も思いつかないわよ。

 あんだけ何度も、正面の精緻せいちな大扉から入って、数え切れないぐらい全滅しただけに、正規ルートを知って私は何とも言えない気分になる。
 ただ、悔しいと…パーティー組んだ仲間達に、こんなルートがあることを教えたいと、心の底から思ったのは確かな事実だった。

 私は複雑な内心のまま、室内を確認する。
 そこは水晶壁に映ったままの部屋だった。

 そう、もし仮に、試しにと魔力を壁に流しても、そこにある扉が別室への本物の扉であると理解していなければ、攻略できない仕組みなのだ。
 コウちゃんが扉が別室への扉だと教えてくれなければ、きっと通過できなかっただろう。

 『マスター……あそこの
  扉に行って………』

 そういうコウちゃんが指し示す先には、確かに扉があった。

 私は言われるまま、コウちゃんを腕にその扉へと向かう。
 そんな中で、一応聞いてみる。

 「ねぇーコウちゃん
  ここには魔物とか
  出現しないの?」

 コウちゃんは、小首を愛らしく傾げてから言う。

 『俺が知っている
  状態では無かったよ………

  ここのシステムが
  変化しているとは
  思えないし………

  たぶん、この先も
  居ないよ』

 そう言う間に扉に辿り着き、難なく扉を開いて部屋を出る。
 と、そこは回廊の作りだった。

 「えぇ~とぉ…
  別の廊下ってこと?」

 私の呟きに、コウちゃんはコクンッと頷く。

 『うん、そう……でね
  こっちに出ると
  扉は消えちゃうんだ………』

 言われて振り返れば、背中は何処から見ても、何の変哲も無い廊下の壁だった。

 「えぇーとぉ……
  どっちに行けば
  良いの?」

 『実は、どっちでも
  良いんだよぉ……』

 その言葉にビックリする。

 「えっ?」

 驚く私に、コウちゃんがあっさりと答える。

 『あのね…この廊下は
  グルッと繋がっていてね

  廊下に出現する扉の中の
  お宝を全部回収しないと

  最後部屋への扉って
  開かないんだ』

 それってぇ………普通は逆でしょ、ひとつでも盗ったら出られない………じゃないの?
 普通のドラ○エ見たいに、ひとつ残らず回収なの?
 それも、ぜぇぇぇ~んぶ回収しないとダメなんて………。
 あっ…このアイテム、たっぷり有るから回収はいいやは無しなのね。

 本当に、色々と作りや攻略方法が違うのねぇ………。
 じゃ、コウちゃん助言通り、全部の扉を開いて部屋の中にあるお宝を回収しますか………。

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