悪役令嬢は婚約破棄されて覚醒する

ブラックベリィ

016★私の魔力量って………

 まじかに現れた水の塊を、思わず私は無言でジーっと見てしまう。

 えっとぉぉ~…コウちゃんてば、こんなコトも出来るの?
 本気ですごいわぁ~…某猫型さんよりも可愛いし、能力も抜群ね。
 じゃなくて、コレって水の魔法なのかしら?
 私の持つ魔力って、一応全属性だけど、本当にちょびっとなのよねぇ………。
 
 などと考えていた私に、コウちゃんが話しかけてくる。

 『俺の作った水じゃ飲めないの?
  でも、ここの水は、ちょっと…いや
  かなり怪しい水が多いから…………』

 コウちゃんのすまなそうな声に、私はハッとする。
 ショボンとうなだれ、その気持ちを表すかのように耳もヘタッと前に倒れている、その途轍もなく保護欲をそそるような姿に、私は慌てて言う。

 「ゴメンね、コウちゃん…

  別にコウちゃんが出してくれた
  お水の塊を疑った訳じゃないのよ

  ただ、私の持つ魔力って
  少ないから………」

 そうよ、あのお花畑の限りなく馬鹿なルドルフ皇太子に、散々血筋だけの………って、コケにされまくっていたから………。
 別に、貴族としての義務だから、婚約者という立場に甘んじていだけで………。

 っていうか、私的には、この婚約って、何時の間に取り交わされていたものだし………。
 はぁ~…だいたい私達の婚約は、皇帝陛下とお父様の間で取り交わされたモノだから、私達の意志なんて、ひとカケラも関係ないし、なぁーんにも反映されないモノなんですよねぇ………。

 あんな容姿だけしか取り柄の無いお花畑なんて、好きじゃないし………いや、むしろ嫌いだし。
 それでも、珍しい光属性を持つボンキュッボンで、たゆんたゆんしたメロンを持つ、ビッチヒロインにまで見下されたのは、流石に悔しかった。

 帝国の剣とまで謳われるカイドール伯爵家の長女が、はっきり言って無能者扱いで………。

 そう思うと、自然と涙が滲む。

 『………ますたぁー……
  何が哀しいの?

  ますたぁーの魔力が少ない?
  魔力が強すぎて、そんなに
  身体から溢れているのに?

  側にいるだけて
  気持ち良い魔力なのに?』

 私は、コウちゃんの言う意味が、その時すぐには理解できなかった。
 だって、ずっと私には全属性だけど、ちょびっとしかない。
 ………そう、生活魔法すらろくに使えない程度しか………。

 そこで、私はコウちゃんの言葉にハッとする。

 って…えっ? 今、コウちゃんてば、私の魔力が強いって………。
 身体から溢れている………気持ち良い?

 「えっと…コウちゃん
  私の魔力って
  身体から溢れているの?」

 思わず確認するように言うと、コウちゃんは不思議そうに愛らしく小首を傾げてから頷く。

 『うん……すっごい綺麗な魔力が
  溢れているよぉ~………

  こういうのって……えっと…
  横溢おういつするって
  言うんだっけ?』

 なにやら、難しい言葉だが、聞き覚えのある言葉に、私は目をぱちくりとさせる。
 なんか、コウちゃんて日本語での語彙が多い気が……いや、気のせいかしら?
 コウちゃんて、私の前世の世界の子じゃなくて、こっちの世界の子よねぇ………。

 じゃなくて、私の魔力って多いの?
 横溢おういつって……確か…いっぱいみなぎること、あふれ流れるほどさかんなこと……だったわよねぇ………。

 「そんなに、溢れるほど?」

 『うんっ…魔力枯渇で
  冬眠どころか………

  クマムシの乾眠状態に
  なっていた俺が

  こうして復活できるほど
  純粋で濃厚な魔力が

  ますたぁーの身体から
  溢れているよ』

 クマムシの乾眠なんて、コウちゃんてば妙な知識もってるわねぇ………じゃなくて。
 幼少期から、魔力の少なさに悩んでいたのに………。
 もしかして、創造主の女神の神子が封印されている、ここに来たから?

 そう思ってから、私は考えたくない思考へと行き着く。


 いや、ちょっとまって………。
 今、恐ろしい可能性に………気が付いちゃったんだけど。
 もしそうなら、容姿が微妙な(本人はそう思っている)私が、あのお花畑の見掛けだけ皇太子の婚約者に私が選ばれた理由が………。

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