オタクとヤクザが恋したら…

かのちゃん

51 再会

私と宮島さんは、遼ちゃんが収監されている、都内の留置所に行って、面会室でパイプ椅子に座って、遼ちゃんを待っていた。
一週間ぶりに、遼ちゃんに会えるとなると……緊張するな。
もうすぐ、お父さんに会えるよ。赤ちゃん。
私は、自分のお腹を優しく触った。
その時。被疑者側のドアが開いて、私達は、すっと立ち上がった。
警察官の後に続いて、出てきたのは……。

「遼ちゃん!」

「由香!」

私達は、ガラス越しに手を当てた。
服装が、白いスーツからグレーのスウェットに変わってて、顎に少し髭が生えてる……。

「会いたかった……遼ちゃん。」

「……。」

「とりあえず、座ってください。」

遼ちゃんは、無言で座った。

「……誰だ?」

「遼ちゃんを弁護する、宮島武尊さん。」

「どうも。」

宮島さんは、遼ちゃん向かって、頭を下げた。
遼ちゃん、なんか機嫌悪そう……。

「……なんで知った。」

ニュースで観たの……。

「……ちっ。」

遼ちゃん。ご飯はちゃんと食べてる?

「……白飯に漬物に味噌汁だけの生活を、毎日送ってる。3年ぶりだぜ。」

そう……。

「あのね、遼ちゃん……。」

私は、テルくん達が出雲組と抗争して負けたことを、遼ちゃんに伝えた。

「……馬鹿達がそんなことを……。」

うん。みんな、遼ちゃんのためにあんなことをしたんだよ。

「そうか……。」

私、会社辞めさせられちゃって……それで、弁護士をずっと、鈴木くんが探してくれたの。知ってるでしょ?遼ちゃんと仲がよかったみたいだし。

「……。」

「早速ですが……裁判の……。」

「いや、いい。」

……!?

「なんで!?このままじゃ遼ちゃん、二度と私にもお腹の子にも会えないよ!?」

「……裁判はやりたくねえ。ずっと、留置所暮しで充分だ。」

遼ちゃん帰りたくないの!?私のところに戻りたくないの!?ねえ!

「うっせえー!」

遼ちゃんの怒鳴り声が、面会室をこだました。

「さっさと帰れ!!弁護士なんか雇うな!!」

……。
じゃあ、先生。行きましょうか。

「……。」

「……遼ちゃん。このノート、付けとって。」

私は、ピンクのノートを置いて、泣きながら面会室を後にした。






由香……由香だけには、俺のことを知らせたくなかった。
大切な人を巻き込んじまって……それに、イライラを当ててしまった。
由香が置いてたノート……暇だから、日記付けとくか。
ボールペンを右手にして、ノートを開いて、俺は日記を書き始めた。
書いてるたび、由香との思い出が頭の中から蘇る。
そして、涙が文字を滲んだ……。
ごめんな……ごめんな、由香……。
お前に辛い思いをさせて……。

〈12月21日 久しぶりに由香に会えた。弁護士を連れてきた。俺は由香にひどいことを言ってしまった。本当は、会えて嬉しいのに……。ごめんな。〉






翌日。
俺は、あの弁護士と面会していた。

「えっ!?じゃあ、裁判してもいいんですね!?」

ああ。

「弁護、お願いします。」

俺は弁護士に向かって、頭を下げた。

「こちらこそ。よろしくお願いします。」

弁護士も俺に向かって、頭を下げた。


続く!

「オタクとヤクザが恋したら…」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く