オタクとヤクザが恋したら…

かのちゃん

38 男として

妊娠が発覚した後、遼ちゃんとはあんまり喋らなくなって、次の日。会社に妊娠報告へ。
課長と社長は、目を大きく見開いて驚いてたよ。

「結婚の次は妊娠だね。」

「びっくりしたよぉ。」

「つわりでお仕事をお休みするかも知れませんが、よろしくお願いします。お腹が大きくなったら、しばらく産休取ります。」

「うん!」

「元気な赤ちゃん、産んでこい!」

えへへへへ。
私は今、モヤモヤしてます。





「えっ!?おめでとうも言わなかった!?」

うん。ずっと目を点にして黙ったまんま。

「それって、子供は欲しくなかったってこと?」

「男として責任取んないなら、私がしめてやる!!」

美咲〜。そんなに怒んないでよぉ。
遼ちゃん、きっと言葉が出なくて驚いたかもしれないし……子供が欲しくないってひとつも思ってないだろうしぃ。

「そうだね。」

今日、また話すよ。






「なあ。最近の遼太郎さん、なんか大人しくねえか?」

「まるで魂が抜けたように固まって。」

「あんまり喋らないし。」

「何かあったのかな?」

「由香ちゃんと?」

「おーい。何してんだ?」

「テル!聞いてくれ!」

「ん?」

「遼太郎さんに何があったか聞いてくれ!俺達、心配なんだよぉ。このまま、遼太郎さんがあんなだったら、皇牙組は終わりだ!」

「……わかったよ。話してやるよ。」





「遼太郎さん……。」

「……。」

「最近、どーしたんっすか。子分らが心配してますよ。」

「なあ、テル。」

「ん?」

「……もし、子供ができたら、どーする?」

「えっ……そりゃあ、相手におめでとうって祝いますよ。」

だろーな。

「……それが、どーしたんっすか?」

「実は……由香との間に、ガキができたんだ。」

「えっ!?」

テルは口を抑えて、周りをキョロキョロ見渡して、俺にまた目線を直した。

「……マジっすか。」

マジっすよ。

「避妊、しなかったんですか?」

避妊はしたが……失敗した。

(あの150人の女を抱いた遼太郎さんが、失敗するなんて……!)

「そうなんっすね。で、なんて言ったんですか?」

驚きすぎてなんも言ってねえ。

「おめでとうも!?」

ああ。

「遼太郎さん……!」

テルは俺の机をバンとたたいた。

「真っ先に祝ってあげないなんて、男として恥ずかしいですよ!!妊娠したってことは、男にとって大きな責任!!おめでとうも言わなかったら、由香ちゃんは悲しみますよ!!妻の妊娠が発覚したら、おめでとうと言うのが、旦那のやるべきことじゃないっすか!?」

「テル……。」

俺は、立ち上がった。

「ありがとう。さすが、俺の相棒だぜ。」

「何かあったら、俺に話してください。」

ああ。

「……。」






遼ちゃん、落ち着いて聞いて。
もう一度言い直すけど……私のお腹の中に、遼ちゃんとの子供がいるの。
遼ちゃん、お父さんになるんだよ……よし!練習終了!
いつの間に部屋の前に来ちゃった。
ガチャ……。

「ただいまあ。」

「おう……。」

リビングから、遼ちゃんの声が……!
靴を脱いで、リビングに行くと……。
ソファーで新聞を読んでる、いつもの遼ちゃんの姿が。
ん?この紙袋、なんだろ?
遼ちゃん。開けていい?

「おう。」

紙袋をビリビリ破くと……えっ?
ブルーの赤ちゃん服と、よだれかけと、哺乳瓶……。
これ、買ったの?
遼ちゃんは新聞をたたみ、スっと立ち上がり、私の方へ向かって歩くと、私をぎゅと抱きしめた。

「ごめんな。祝ってあげることできなくて。驚きすぎて、何も言えなかったんだ。改めて言う。おめでとう、由香。」

遼ちゃん……あ。

「どうした?」

今、動いた!

「ほんとか!?」

うん!

「触ってもいいか?」

もちろん!
遼ちゃんは、しゃがんで、私のお腹に耳を当て、触り始めた。

「……ほんとだ……元気だなあ。」

お父さんに触ってもらって、嬉しいんだよ。

「……由香。」

ん?
遼ちゃんは、立ち上がり、私の両手をぎゅっと握った。

「お腹の子も、由香もちゃんと幸せにしてやる。3人で仲良く暮らそうな。」

うん……。
ピンポーン。

「由香〜。来たよ〜。」

ん!?その声は……お父さん!?
カレンダーを見ると……あっ!
そうだった!今日、うちの両親が遊びに来るんだった!

「それじゃあ、謝罪しないとな。」

謝罪?

「お前を妊娠させたことさ。」

いいよぉ。そのくらい!うちの両親、喜ぶと思うよ!

「いーや。男として、責任取らないといけねえからな。」






「ほんっっっっっとうに、申し訳ございませんでしたぁぁぁぁぁ!」

結果。両親に深々と土下座して謝りました。

「責任は俺が取りますので、どうか許してください……。」

「遼太郎さん、よかよ〜。そんなことせんちゃ〜。」

「孫ができただけで、怒る人なんてどこにおっとね〜。」

ほら。喜んでるから、いいじゃない。

「……そうだな。」

「遼太郎さん。どうか娘を幸せにしてくださいね。」

「お正月、福岡で待っとるけん。」  

「……はいっ!」

その後、遼ちゃんはお母さんにも妊娠報告をした。

「『そう……。おめでとう。出産は由香さんの地元でやるんでしょ?産まれたらすぐ連絡して!駆けつけてやるから!』」

「そこまでやらんでいい。」

「『冷たいなあ。遼太郎が赤ちゃんの頃、1度しか抱っこしてないから……。孫が産まれたら、抱っこいっぱいできるし、由香さんの手伝いもしたいわ。』」

「……好きにしろ。」

「『うふふふふ。』」

親子、仲良く電話で話してるなあ。
赤ちゃーん。お母さんとお父さん、あなたが生まれてくるのを、待ってるからねえ。

続く!

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