オタクとヤクザが恋したら…

かのちゃん

25 めいちゃん

8月11日。
由香は高校の同級生と遊びに行って、
お義父さんはゴルフに行って、お義母さんは友達とランチに行って、家にいるのは俺一人だ。
静かだな。ほんとに田舎だ。
こうやってゆっくり新聞を読むのもいいな。
ピンポーン。
……誰だ?
ピンポーン。
しつこいな〜。
はっ!まさか!月宮蓮が出雲組の子分に俺がここにいることを教えて、殺そうとしてるんじゃ……!
俺は、懐に手を入れ、忍び足で玄関に近づいた。
黒い影……1人か。
靴を履いて、ドアを開けた。

「てめえら!俺を殺そうなんざ、100年早いんだよ!!」

「ひぃぃぃぃぃ!」

ん?女か?
黒髪のショートで、スーツを着ている……
しかも黒髪のロングの女の子を抱いてる。

「わ、悪ぃ!」

「あなた、誰ね!!?」

お、俺は……そのぉ……。

「てか、あんたこそ誰なんだ?由香の知り合いか?」

「そうよ!由香のいとこの濱松麦!隣に住んどる。」

あ……あの緑色の屋根の家か。

「俺は皇牙遼太郎。由香の彼氏だ。」

「ええっ!?あの、遼太郎さん!?」

知ってんのか?

「あたり前よ〜。由香がよーLINEでいいよるもん!かっこよかね〜♡」

あ、ありがと……。

「ところで、由香とおばさん達は?」

3人とも、出掛けて行ったよ。

「嘘!どうしよう……。」

なんか困ってるみてえだけど。

「仕事が急に入ったから、おばさん達に子供の面倒を見てもらおうと思って、ここに来たとに……。」

な、なんだ?俺の顔を見て。

「遼太郎さん!めいの面倒ば見てくれん!?」

はあ!?

「それならよかかも!めいばよろしく!」

麦は娘を俺に渡して、さっと走って行った。
勝手なことを……。






家でゆっくり休むつもりが……ガキの面倒を見るハメになっちまった……。
なんで俺が、ガキの面倒を……。
ガキなんて苦手だ。
ん?新聞から桃太郎の絵本が。
ガキが新聞から顔を出してる。

「これ、よんで!」

……仕方ない。読んでやるか。

「おひざにすわらせて!」

めんどくせーな。
俺はガキをお膝の上に乗せて、絵本を開いた。

「むかーし、むかし。あるところにおじいさんとおばあさんがいました……。」

「桃太郎達は鬼と戦い始めました。「鬼野郎、とっととケジメを付けてやんぞ!」「ドンパチでやろーぜ!」」

「……うわーーーーん!!」

わ!ガキが泣き出した!

「ももたろうこわいよぉ〜!!」

わ、悪ぃ!





「ねえおじしゃん!」

ん?

「パンダかいて!」

絵を描けってか?

「うん!」

……いいだろう。
えっと……こうでいいのか?

「できた!」

「えっ!?」

これで合ってるだろ?

「こわか。」

怖いだと?

「たぬきさんかいて!」

えっとぉ……これでいいか?

「ひぃ!」

怖がってるな、また。

「うさぎさんかいて!」

簡単だな……よし、できた!

「……。」

どうした?何も言わないのか?

「……うわーーーーーん!!おじしゃんのえ、こわいよ〜!!」

まあた泣きやがってぇ!






ふう……泣いて疲れたのか、すっげえ寝てるぜ。
ソファーでタオルケットをかけて寝てやがる……。
ふっ。子供の寝顔は意外とかわいいな。
俺もいつか、由香との子供を……なんて、まだ早い事だ。






「ありがとね〜。遼太郎さん!めいば見てもらって!」

「フー。どういたしまして。」

「ゆかちゃん、えやっぱりうまかね!」

ありがと、めいちゃん。

「あのおじしゃんにも、かいてもらったとよ!」

「遼太郎さんも、絵を描いたとですか?」

「見たかですね〜!」

「……あんまり見ないでくださいっ!」

遼ちゃんが、顔を赤くして、後ろを振り向いてる……。

「え〜?」

「そんな恥ずかしがらんでも。」

「絶対嫌ですっ!」

恥ずかしがる遼ちゃん、かわいいな。






……で、問題の絵は……。
えっ!?なにこれ!
怖い……まるで、地獄絵図のような……。
遼ちゃん、絵心ないんだね。

続く!




コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品