天才が異世界で困ってます

夏季

11話 魔物退治へ①

「なんじゃと……?」

その兵士の言葉に会場にいる者達がザワつく。確かここから北の方はあまり魔物が出ないことで有名だ。特に神山の麓なんてほぼ出ない。最初の方に俺たちが行った時も一体も出てこなかったぐらいだ。

「数はどのくらいじゃ」

「100は超えるでしょう。まるでどこからか湧いてくるように出てきます……このままでは我々が全滅してしまいます!どうか、どうか援軍をお願いします……!」

その兵士は顔をぐしゃぐしゃにして泣きながら頭をさげる。兵士のプライドなどもうとっくに捨ててる。仲間が死ぬのがもう耐えられないのだろう。

「それなら僕達が行きましょう」

「そうだな!俺たちが行ったら百人力だぜ!」

そんな時、ハヤトとリキが1歩前に出た。2人ともアピールチャンスだという顔をしているが今はそんなことを気にしている場合ではない。そんな2人につられてケンタとマナミも1歩前へ出る。

「なら、俺達も行くか」

「そうだね、みんなを助けよ!」

そう言うと4人は急いで戦闘の準備をする。

「あ、ありがとうございます!力神様たちがいれば安心です!!」

兵士はまた涙を流しながら何回も頭を下げた。こんな時俺は何も出来ないのが申し訳ない。せめて高級ポーションでも渡そうと思っていたその時。

「博神よ、お主も行け」

驚いた俺は振り返るとまた王がニヤリと笑っていた。

「敵はここらへんでは見たことないものばかりらしいからのう。お主のスキルが役立つのではないか?」

くそっ、バレてたか。

俺は王にスキルなど言ったことがない。やはりさっき使ったスキル【鑑定】がバレていたのであろう。

「待って、ガク君は戦えないよ!」

「そうだ!行ったら死ぬかもしれないんだぞ!」

王の言葉にマナミ達が必死に反対する。だが、この中で一番偉いのは神である俺達ではない。王だ。

「わしが決めたんじゃ。反論は認めんぞ」

「でも……」

「王が決めたんだ。ガク、お前もこいよ」

「1人だけ何もしないなんてことは無いですよね」

さすがにこの状況で行かないのはむりだ。行かなかったら反逆罪で王に処刑されるだろう。

「わかった、行くよ。行かなかったら殺されそうだしね」

俺は王をにらみながら皮肉を言うが、王はただニヤニヤしているだけだ。

この後マナミとケンタが止めようとしてくれたが、リキ達や王により結局俺は一緒に行くことになった。

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