最後の反抗

王都についたが、もちろん門番はいなかった。

現状、王都はどうなっているかというと、王城の周りをモンスターで囲んでいる。

すでに王都の市民は反抗意識を持っておらず、王都にいた兵たちは軒並みモンスターに殺されてしまっている。

王都を救うために、他の町からも冒険者が来ていたようだが、その冒険者たちも下級モンスターを何大家倒しただけで、中級モンスターに殺されてしまった。

その関係で町の隅の方には人間の死体が山積みになっている。

もちろんもったいないので、交渉が終わった後に、持って帰るのだが、モンスターに挑んだ者たちは次々と殺されて、その場所に送られているので、次は自分もそうなってしまうのではないかという恐怖心で、市民たちはできるだけモンスターの前に姿を出さないようにしている。

(滑稽だな。
今まで自分たちが侵略を繰り返して国力を伸ばしてきたというのに、自国が負けてはここまで落ちぶれてしまうものなのか。)

これが、大和魂を持つ日本人だからなのか、もしくはこの世界のゼアークの設定性格と同化し始めてしまっているのかわからないが、最後まで戦って負けたほうがいいと思っている。

(まぁ、それは勝者である俺らには関係のない話か。)

それに、ダンジョンのほかのメンバーに関しては、ダンジョンを第一に考えることを本能の中に組み込んであるので、彼らが恐怖などで、戦わずして逃げかえるということはないだろう。

(そんなことよりも、私は自分の仕事をするか。)

こんなことを考えながら歩いていたら、すでに王城の前までたどり着いてしまった。

「我々は今から王城の中に入るが、王城の中には普通に兵がいる可能性もあるし、王自身が戦える可能性もある。
しかし私は今回は、戦闘を一切行う気がない。
襲い掛かってきたものに関しては、容赦なく倒せ。」

近くにそのような命令を出して、ゼアークは王城の中に入っていった。

「おや？
自分たちが敗北者だということが分かっていないのか？」

王城の中に入ると、案の定兵士が待ち構えていた。

「我々はまだ降伏はしていない。
この城だけは落とさせない。」

確かに待ち構えていた兵たちはほかの兵よりも強そうだ。

しかし、それは人間基準であって、ダンジョンマスターになった今彼らを見ても、まったく強そうには見えない。

「そうか。それで、残っているのは君だけだがどうするんだ？」

そういわれて、話していた男が後ろを見ると、他の仲間はすでに殺されてしまっていた。

「まったく、戦闘中に敵に背中を向けるなんて…」

そして男も、仲間たちの悲惨な姿を見た瞬間に、首を駆られてしまうのだった。