異世界人の主人公巡り ~そんなに世界は素晴らしいかい?~
十五の美しき世界
僕が他人と違うことは知ってた。でも、違うのは敏感すぎることだと思った。
目に映った誰かが悲しんでいると悲しくなって、目に映った誰かが喜べば喜んだ。
不思議だった。誰かを不快にして笑っている人がいることが、母の「どうして分かってくれないの?」という言葉そのものが。
ある日僕は気が付いた。僕以外の人間は人の心が分からないらしいことに。
身振りや手振り顔の動きや口調で察した気になっている。
上辺だけ真似れば誰も僕の心を分かった気になった。
それに気が付いたとき世界がどうしようもなく馬鹿らしくなった。
僕に家族と呼べる者は母と飼っている犬だけだった。母が喉に餅を詰まらせて亡くなった日僕は気が付いた。死の間際の感情がとても美しいことに。
ためしに飼っている犬を殺してみた。こいつは僕のことを完全に信頼している。ただし、死ぬまで殺そうとしていることを悟られて嫌な気持ちにさせてはいけない。僕にとって誰かを欺くなんてたやすいこと。
刃物で喉元をバッサリ。犬は安心して死んだ。美しかった。やはり死こそが救いなんだと暖かい血の中で確信した。
この日から僕は世界中の生きとし生ける物全てを苦痛なく殺そうと決意した。
そのためにはガスが一番都合がいい。
僕は顔も見たことがない遠い親戚の人に預けられた。
そいつに母が死んで錯乱して犬を殺してしまった可愛そうな子供と信じ込ませるのは簡単だった。
それから国中に毒ガスを撒くために、苦しまず死ねるガスを作るために必死で勉強した。
困っている人を見て助ける事も多々あった。
僕がそいつにそいつが一番求めている言葉を囁き続ければそいつらは決まって僕の虜になった。
僕の虜になった連中を利用すればガスを国中世界中にばらまくことは容易そうだ。
ただ幸せなまま死ねるガスの開発は難航した。
安価な麻酔ガスの研究と周囲には言ってある。
死ぬまでネズミが一瞬も苦しまず即刻死ねるガスはなかなか生まれない。
アイデアを探しに町をぶらついていたある日、凡夫の死の瞬間の美しさが霞むほどに美しい人に出会った。
その方は虚空より現れた。白い肌と筋肉を惜しむことなく衆目に晒していた。性別は分からないがそんな物些細な問題だ。
その方の隣にいた男が美しくなられた。一瞬遅れて吹き出す赤を見てようやくあの方が首を手刀で突き刺されたのだと理解した。そしてあの方は死神なのだと僕は理解し興奮した。
世界がこれから美しくなる。
どこからか聞こえた嬌声は死神への祝福だろう。
死神は嬌声をあげた方に飛びかかられ首を折られた。
そのまま木材で出来た看板の棒を折られ、折れた先を投げられ心臓に当てられてまた一人殺された。
犬を殺したとき以来の偽りなき笑みがこぼれた。
三人を美しく染めながら死神は走られた。
詳細に描写するならば、飛び膝蹴りを後頭部に当てられて一人目を昏倒させられて一人目の頭を掴まれて後ろに押し倒されながらバク転なされてアイアンクローで二人目の頭を掴まれて石の道に叩きつけられながら着地され二人目を持たれたまま青果店に走り込まれ青果店の店主の頭に二人目の頭を打ちつけられた。
青果店で林檎を齧られる赤く染まられた死神の美しさはなにものにも比べられるはずがなかった。
僕は死神に近づいた。死神は僕の首に右手を突き刺されようとした。
死神に殺してくださるのが嬉しかった。
すると死神は光の球に代わられた。
誰も殺そうとされない光の球にいぶかしみながら触れた。
ああ、これが死か。
死神が眼前におられた。世界は歪み僕と死神のふたりっきりだ。まだ僕の世界は美しく染まっていかった。
「主人公がミちた?主人公はお前か」
死神の赤に染まられた肌から目が離せなかった。
死神は顔色を変えられずに困惑されてていた。
「死神」
僕は死神に呼びかけた。
「オレはバータだ。妙な名でヨぶな」
死神は僕を殺そうとなさりませんでした。
「バータ、僕はジャガです」
「ジャ……ガ……」
死神が僕の名を呼ばれた。僕はそれがたまらなくうれしかった。
世界が正常になった。だが妙だ。地面が鋼でできている。
空は銀が流れていた。銀から人を感じた。
まさか、あの銀の中に人がいる?銀は乗り物?
空気が澱んでいるのは草木がどこにも見えないのと無関係ではないだろう。
バータは浮遊なされた。そして天高く上り銀の中にいる人を美しくなされた。
美しきバータが天高く人を美しく染められているということしか僕には分からなかった。
いくら見ていても飽きるはずがなかった。
銀が炎に包まれて落ちてきた。
しばらくするとバータは降りられた。
「バータ、美しい」
「ジャガ」
バ-タは僕の首を絞められた。
これで僕も美しくなれる。魂の底から嬉しかった。
「なぜ、カナしまない? なぜ、オソれない?」
「なぜ恐れなければならないのですかバータ? 死は祝福で素晴らしいものでしょう」
バータは僕の言葉を聞いて迷いだされた。
腕の力を弱められた。
「ジャガ、オレにどうサれたい?」
「バータ、殺してください」
「俺は死をノゾむものをコロさない」
そうバータは言われました。
それからバータは消えられた。バータがいたところには林檎の芯が落ちていた。
僕は悔しかった、バータが殺してくださらなかったことが。
僕は悔しくて涙が出た。
その涙が林檎の芯に吸い寄せられて紫に輝いた。
紫の芯を握って願った。バータに会わせてくださいって。
そうしたらお会いできた。
「バータ、殺してください」
目に映った誰かが悲しんでいると悲しくなって、目に映った誰かが喜べば喜んだ。
不思議だった。誰かを不快にして笑っている人がいることが、母の「どうして分かってくれないの?」という言葉そのものが。
ある日僕は気が付いた。僕以外の人間は人の心が分からないらしいことに。
身振りや手振り顔の動きや口調で察した気になっている。
上辺だけ真似れば誰も僕の心を分かった気になった。
それに気が付いたとき世界がどうしようもなく馬鹿らしくなった。
僕に家族と呼べる者は母と飼っている犬だけだった。母が喉に餅を詰まらせて亡くなった日僕は気が付いた。死の間際の感情がとても美しいことに。
ためしに飼っている犬を殺してみた。こいつは僕のことを完全に信頼している。ただし、死ぬまで殺そうとしていることを悟られて嫌な気持ちにさせてはいけない。僕にとって誰かを欺くなんてたやすいこと。
刃物で喉元をバッサリ。犬は安心して死んだ。美しかった。やはり死こそが救いなんだと暖かい血の中で確信した。
この日から僕は世界中の生きとし生ける物全てを苦痛なく殺そうと決意した。
そのためにはガスが一番都合がいい。
僕は顔も見たことがない遠い親戚の人に預けられた。
そいつに母が死んで錯乱して犬を殺してしまった可愛そうな子供と信じ込ませるのは簡単だった。
それから国中に毒ガスを撒くために、苦しまず死ねるガスを作るために必死で勉強した。
困っている人を見て助ける事も多々あった。
僕がそいつにそいつが一番求めている言葉を囁き続ければそいつらは決まって僕の虜になった。
僕の虜になった連中を利用すればガスを国中世界中にばらまくことは容易そうだ。
ただ幸せなまま死ねるガスの開発は難航した。
安価な麻酔ガスの研究と周囲には言ってある。
死ぬまでネズミが一瞬も苦しまず即刻死ねるガスはなかなか生まれない。
アイデアを探しに町をぶらついていたある日、凡夫の死の瞬間の美しさが霞むほどに美しい人に出会った。
その方は虚空より現れた。白い肌と筋肉を惜しむことなく衆目に晒していた。性別は分からないがそんな物些細な問題だ。
その方の隣にいた男が美しくなられた。一瞬遅れて吹き出す赤を見てようやくあの方が首を手刀で突き刺されたのだと理解した。そしてあの方は死神なのだと僕は理解し興奮した。
世界がこれから美しくなる。
どこからか聞こえた嬌声は死神への祝福だろう。
死神は嬌声をあげた方に飛びかかられ首を折られた。
そのまま木材で出来た看板の棒を折られ、折れた先を投げられ心臓に当てられてまた一人殺された。
犬を殺したとき以来の偽りなき笑みがこぼれた。
三人を美しく染めながら死神は走られた。
詳細に描写するならば、飛び膝蹴りを後頭部に当てられて一人目を昏倒させられて一人目の頭を掴まれて後ろに押し倒されながらバク転なされてアイアンクローで二人目の頭を掴まれて石の道に叩きつけられながら着地され二人目を持たれたまま青果店に走り込まれ青果店の店主の頭に二人目の頭を打ちつけられた。
青果店で林檎を齧られる赤く染まられた死神の美しさはなにものにも比べられるはずがなかった。
僕は死神に近づいた。死神は僕の首に右手を突き刺されようとした。
死神に殺してくださるのが嬉しかった。
すると死神は光の球に代わられた。
誰も殺そうとされない光の球にいぶかしみながら触れた。
ああ、これが死か。
死神が眼前におられた。世界は歪み僕と死神のふたりっきりだ。まだ僕の世界は美しく染まっていかった。
「主人公がミちた?主人公はお前か」
死神の赤に染まられた肌から目が離せなかった。
死神は顔色を変えられずに困惑されてていた。
「死神」
僕は死神に呼びかけた。
「オレはバータだ。妙な名でヨぶな」
死神は僕を殺そうとなさりませんでした。
「バータ、僕はジャガです」
「ジャ……ガ……」
死神が僕の名を呼ばれた。僕はそれがたまらなくうれしかった。
世界が正常になった。だが妙だ。地面が鋼でできている。
空は銀が流れていた。銀から人を感じた。
まさか、あの銀の中に人がいる?銀は乗り物?
空気が澱んでいるのは草木がどこにも見えないのと無関係ではないだろう。
バータは浮遊なされた。そして天高く上り銀の中にいる人を美しくなされた。
美しきバータが天高く人を美しく染められているということしか僕には分からなかった。
いくら見ていても飽きるはずがなかった。
銀が炎に包まれて落ちてきた。
しばらくするとバータは降りられた。
「バータ、美しい」
「ジャガ」
バ-タは僕の首を絞められた。
これで僕も美しくなれる。魂の底から嬉しかった。
「なぜ、カナしまない? なぜ、オソれない?」
「なぜ恐れなければならないのですかバータ? 死は祝福で素晴らしいものでしょう」
バータは僕の言葉を聞いて迷いだされた。
腕の力を弱められた。
「ジャガ、オレにどうサれたい?」
「バータ、殺してください」
「俺は死をノゾむものをコロさない」
そうバータは言われました。
それからバータは消えられた。バータがいたところには林檎の芯が落ちていた。
僕は悔しかった、バータが殺してくださらなかったことが。
僕は悔しくて涙が出た。
その涙が林檎の芯に吸い寄せられて紫に輝いた。
紫の芯を握って願った。バータに会わせてくださいって。
そうしたらお会いできた。
「バータ、殺してください」
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