異世界人の主人公巡り ~そんなに世界は素晴らしいかい?~
一四の真弓の消えた世界
四年ぶりに幼なじみの高槻真弓と出会った。
彼女の様子は明らかにおかしかった。
まるで彼女がこの世を去ろうとしているような薄ら寒ささえ感じた。
極限のストレス状態にあると推察される相手にどう接すればいいのか少し頭を悩ませた。彼女と解決法を一緒に考えるために何があったか聞き出せば折れてしまいそうに見えた。
ならば、悪い現実から遠ざけさせよう。
カラオケや漫喫、喫茶店にでも行って……
ああ、真弓ってばテレビとか見させてもらえない厳しい家庭だった。だから、カラオケのレパートリーは期待できないし漫喫でも楽しめなさそうだな。
美味しいものでストレス発散させるには予算が心配だ。
なぜなら現在財布がピンチ。
低予算もしくは0円から楽しめるアミューズメントな施設はないものか?アミューズメントの意味知らないけど。
助けてお巡りさん。
はっ、困ったときの公的施設。
税金等で国や市町村が管理する娯楽施設なら低予算でも楽しめる。
つまり彼女を公園や図書館に誘うべきだ!!
なんて安易な考えでJK二人で閉館まで絵本コーナーで粘った。
少しは力になれたかな?
「恵鯉香ちゃん、さようなら。元気でね」
でも、別れるときの彼女の声は震えていた。鼻声だった。足音は強く短い間隔。
最終局面だよ、これ。
えっと、真弓死ぬの?死ぬ気なの?
最後にいい思い出が出来て満足したの?
もう、この世界に未練はないというの?
止めて良いの?彼女はこれ以上この世界で生きるのは苦痛だから死を選ぼうとしているんでしょ。それを私個人のエゴで止めていいの?
でもだよ、真弓が私の前に姿を現して死ぬのは大迷惑の大涌谷だ。(箱根の谷)
自覚してるにしろしてないにしろ死ぬ前に私の目の前に現れて私に罪悪感を抱かせようって真弓は心のどこかで考えている。
そんな狡い相手の事情を考える意味なんてない。
これは正当な仕返しだから私は悪くない。
なんて一瞬でも考えた自分が憎くてしょうがない。反射的に自分の頬に手が伸びた。
この痛みは怒っていないのに復讐を口実に自分のやったことを正当化しようとした罰だ。
そんな風に正当化するぐらいなら悪党になった方がいくらかはマシというものだ。
だが、義を見て動かざることほど恥ずべき事はない。
悪党として友としてとりあえず真弓を追いかける。私は走った。
そもそもなんで真弓が私に近づいたんだ?
心のどこかで止めて欲しかったからじゃないのか?
真弓の向かう先は彼女自身の家のようだ。
一度だけ真弓がインフルエンザになったのでプリント類を渡しに行ったことがある。そういえば真弓は家に呼んでくれたことはなかったな。
真弓が家に入った。
彼女の「ただいま」はやけに大きくやけにはっきりと聞こえて、まるで彼女がヤケを起こそうとしているような、そんな不安を感じさせた。
ほどなくして大きすぎる泣き声が辺り一帯に響いた。
二人分の泣き声で一つは真弓と思われる若い女の声、もう一つはおっさんみたいな声だった。
真弓の家の前に黒衣の見るからに怪しい不審者が音もなく現れた。
黒衣の不審者は男にも女にも見えた。
光る玉が真弓の家から出てきた。
あの光る球は未確認飛行物体。UFOだ。
「なにあれ」
超状現象を目撃してしまったショックにより放心状態になった。
真弓の声が聞こえた。内容は?
思考をここまで漕ぎ付かせたのは真弓が言い終わってからだった。
「ベツの世界にイドウするモンサ。Ms.高槻。ヒきカエすならイマしかないぞ。Ms.高槻」
UFOに触れた黒衣の不審者の言葉は聞き取れた。どうやら真弓に何かを呼びかけているようだ。
そして黒衣の不審者はUFOに吸い込まれた。
真弓が家から飛び出してジャンプしてUFOに触れた。
「さようなら」
真弓がつぶやいたその言葉はまるで魂の叫びのようだった。
UFOは消えた。
なにが起きたか飲み込むまで少なくない時間がかかった。
彼女は、真弓は、宇宙人にキャトルシュミレーションされた。
あの黒衣の不審者は宇宙人だったに違いない。
とりあえず家に帰ろう。
「ただいま」
放心状態だったので家まではあっという間だった。
今日は両親共飲み会とかで帰ってくるのは早くても十一時以降だ。
「遅かったな。今最高にクレイジーな番組について研究しているんだ」
私の二つ上の兄である朔太郎がなにやら思わせぶりなことを言い出したが、以前似たような引きから『ストレッ○マン』と学校にテロリストが来る妄想の関連性について熱く語りだしたので全く期待しないでおこう。
「朔太郎。風呂に入ってる内に飯用意しといて。ps宇宙人見たって言ったら信じる?」
「拝啓 恵鯉香様。そろそろいい年なんだし準備ぐらい自分でしてもいいんじゃないの?まあするけどさ。敬具。追記 妹の言葉をちゃんと聞かない兄がどこにいますか?ここにいます。ご飯食べている間に半笑いで聞いてあげるから待ってなさい」
というわけでお風呂にダイブだ。
私がお風呂の中で事態を整理していると朔太郎が話しかけてきた。
「ねえ?最高にクレイジーな番組の話していい?するよ」
ため息しか出なかった。
「イスと女の子とサボテンがわちゃわちゃする番組なんだけどな」
中略
「サボテンの花が開くとオカマになってな」
中略
「つまりイスとコタツとバケツと脚立は全然違ってな」
中略
「ピンクのフード付きパジャマの男が浴槽から呼んだ?って出てきてな」
中略
「イスがフラッシュモブのように踊りだしてな」
後略
結論 うるさい。
まあ、話半分に聞いて適当に相槌を打ったんだけど。
「出るからどいて、朔太郎」
そう言って私は風呂から出て着替えた。
夕飯は冷めた状態で食卓に置いてあった。
レンチンすれば言うことなしだが、面倒なので常温で良いかな。
「で、宇宙人って何なんだ? 昔の知り合いと出会ったから遅くなるって連絡は見たが」
朔太郎に図書館から遅くなるって連絡を入れたことだ。
「真弓ちゃん、覚えてる? 高槻真弓」
「ああ、あの昔仲が良かった」
「あの子に出会ったのよ」
「それでそれで」
「会ったときから様子がなにか変だったの」
「具体的には?」
「パーソナルスペースがバグってた」
「具体的には?」
「出会ってすぐハグしてきた」
「パーソナルスペースがバグってるな」
「明らかに様子がおかしいから安価で現実逃避できそうな場所として図書館で時間を潰したんだけど」
「それで」
「まあ、図書館を出たら危ない感じで家の方に走っていったんだけど、嫌な予感がするから着いていったの」
「うん」
「そうしたら真弓の家から二人分の泣き叫ぶ声が聞こえて不審者が家の前に出てきて真弓の家からUFOが」
「ストップ いきなりオカルトが入ってきた」
「で、UFOに宇宙人の不審者と真弓が吸い込まれちゃったの」
「意味が分からないが、意味不明なのが逆に妙なリアリティーがあるな」
「信じるの!?」
「ああ、だが信じたところでなにも出来ない。寝ろ」
なんて朔太郎に言われたのでそのまま床に着いた。
今晩は恐ろしいほど安眠できた。寝てる間に真弓が消えたこと、UFOのこと、全てが夢みたいに思えた。
朝起きたら朔太郎と私の温度差に少し引いた。
今日は土曜日だ。真弓の家に朝一で行こうと言い出す朔太郎に連れられて真弓の家に向かった。
真弓の家には警察が来ていた。
何事かと洗濯物を干していた真弓のお隣さんのおばちゃんに話を聞いてみた。
「なにかあったんですか?」
「なんかね、高槻さんの娘さんが失踪しちゃったらしいのよ。高槻さんはね、会社をクビになって、妻に逃げられ、それでも男手一つで娘さんをしっかり育てたご立派な人なのに災難ね」
「災難ですね」
なんて、おばちゃんに返事をしたが内心それどころではなかった。
真弓が消えた。警察も捜している。胸がゾワッとした。
ただの勘だが真弓の失踪はより大きな事件の前触れにすぎない気がした。
彼女の様子は明らかにおかしかった。
まるで彼女がこの世を去ろうとしているような薄ら寒ささえ感じた。
極限のストレス状態にあると推察される相手にどう接すればいいのか少し頭を悩ませた。彼女と解決法を一緒に考えるために何があったか聞き出せば折れてしまいそうに見えた。
ならば、悪い現実から遠ざけさせよう。
カラオケや漫喫、喫茶店にでも行って……
ああ、真弓ってばテレビとか見させてもらえない厳しい家庭だった。だから、カラオケのレパートリーは期待できないし漫喫でも楽しめなさそうだな。
美味しいものでストレス発散させるには予算が心配だ。
なぜなら現在財布がピンチ。
低予算もしくは0円から楽しめるアミューズメントな施設はないものか?アミューズメントの意味知らないけど。
助けてお巡りさん。
はっ、困ったときの公的施設。
税金等で国や市町村が管理する娯楽施設なら低予算でも楽しめる。
つまり彼女を公園や図書館に誘うべきだ!!
なんて安易な考えでJK二人で閉館まで絵本コーナーで粘った。
少しは力になれたかな?
「恵鯉香ちゃん、さようなら。元気でね」
でも、別れるときの彼女の声は震えていた。鼻声だった。足音は強く短い間隔。
最終局面だよ、これ。
えっと、真弓死ぬの?死ぬ気なの?
最後にいい思い出が出来て満足したの?
もう、この世界に未練はないというの?
止めて良いの?彼女はこれ以上この世界で生きるのは苦痛だから死を選ぼうとしているんでしょ。それを私個人のエゴで止めていいの?
でもだよ、真弓が私の前に姿を現して死ぬのは大迷惑の大涌谷だ。(箱根の谷)
自覚してるにしろしてないにしろ死ぬ前に私の目の前に現れて私に罪悪感を抱かせようって真弓は心のどこかで考えている。
そんな狡い相手の事情を考える意味なんてない。
これは正当な仕返しだから私は悪くない。
なんて一瞬でも考えた自分が憎くてしょうがない。反射的に自分の頬に手が伸びた。
この痛みは怒っていないのに復讐を口実に自分のやったことを正当化しようとした罰だ。
そんな風に正当化するぐらいなら悪党になった方がいくらかはマシというものだ。
だが、義を見て動かざることほど恥ずべき事はない。
悪党として友としてとりあえず真弓を追いかける。私は走った。
そもそもなんで真弓が私に近づいたんだ?
心のどこかで止めて欲しかったからじゃないのか?
真弓の向かう先は彼女自身の家のようだ。
一度だけ真弓がインフルエンザになったのでプリント類を渡しに行ったことがある。そういえば真弓は家に呼んでくれたことはなかったな。
真弓が家に入った。
彼女の「ただいま」はやけに大きくやけにはっきりと聞こえて、まるで彼女がヤケを起こそうとしているような、そんな不安を感じさせた。
ほどなくして大きすぎる泣き声が辺り一帯に響いた。
二人分の泣き声で一つは真弓と思われる若い女の声、もう一つはおっさんみたいな声だった。
真弓の家の前に黒衣の見るからに怪しい不審者が音もなく現れた。
黒衣の不審者は男にも女にも見えた。
光る玉が真弓の家から出てきた。
あの光る球は未確認飛行物体。UFOだ。
「なにあれ」
超状現象を目撃してしまったショックにより放心状態になった。
真弓の声が聞こえた。内容は?
思考をここまで漕ぎ付かせたのは真弓が言い終わってからだった。
「ベツの世界にイドウするモンサ。Ms.高槻。ヒきカエすならイマしかないぞ。Ms.高槻」
UFOに触れた黒衣の不審者の言葉は聞き取れた。どうやら真弓に何かを呼びかけているようだ。
そして黒衣の不審者はUFOに吸い込まれた。
真弓が家から飛び出してジャンプしてUFOに触れた。
「さようなら」
真弓がつぶやいたその言葉はまるで魂の叫びのようだった。
UFOは消えた。
なにが起きたか飲み込むまで少なくない時間がかかった。
彼女は、真弓は、宇宙人にキャトルシュミレーションされた。
あの黒衣の不審者は宇宙人だったに違いない。
とりあえず家に帰ろう。
「ただいま」
放心状態だったので家まではあっという間だった。
今日は両親共飲み会とかで帰ってくるのは早くても十一時以降だ。
「遅かったな。今最高にクレイジーな番組について研究しているんだ」
私の二つ上の兄である朔太郎がなにやら思わせぶりなことを言い出したが、以前似たような引きから『ストレッ○マン』と学校にテロリストが来る妄想の関連性について熱く語りだしたので全く期待しないでおこう。
「朔太郎。風呂に入ってる内に飯用意しといて。ps宇宙人見たって言ったら信じる?」
「拝啓 恵鯉香様。そろそろいい年なんだし準備ぐらい自分でしてもいいんじゃないの?まあするけどさ。敬具。追記 妹の言葉をちゃんと聞かない兄がどこにいますか?ここにいます。ご飯食べている間に半笑いで聞いてあげるから待ってなさい」
というわけでお風呂にダイブだ。
私がお風呂の中で事態を整理していると朔太郎が話しかけてきた。
「ねえ?最高にクレイジーな番組の話していい?するよ」
ため息しか出なかった。
「イスと女の子とサボテンがわちゃわちゃする番組なんだけどな」
中略
「サボテンの花が開くとオカマになってな」
中略
「つまりイスとコタツとバケツと脚立は全然違ってな」
中略
「ピンクのフード付きパジャマの男が浴槽から呼んだ?って出てきてな」
中略
「イスがフラッシュモブのように踊りだしてな」
後略
結論 うるさい。
まあ、話半分に聞いて適当に相槌を打ったんだけど。
「出るからどいて、朔太郎」
そう言って私は風呂から出て着替えた。
夕飯は冷めた状態で食卓に置いてあった。
レンチンすれば言うことなしだが、面倒なので常温で良いかな。
「で、宇宙人って何なんだ? 昔の知り合いと出会ったから遅くなるって連絡は見たが」
朔太郎に図書館から遅くなるって連絡を入れたことだ。
「真弓ちゃん、覚えてる? 高槻真弓」
「ああ、あの昔仲が良かった」
「あの子に出会ったのよ」
「それでそれで」
「会ったときから様子がなにか変だったの」
「具体的には?」
「パーソナルスペースがバグってた」
「具体的には?」
「出会ってすぐハグしてきた」
「パーソナルスペースがバグってるな」
「明らかに様子がおかしいから安価で現実逃避できそうな場所として図書館で時間を潰したんだけど」
「それで」
「まあ、図書館を出たら危ない感じで家の方に走っていったんだけど、嫌な予感がするから着いていったの」
「うん」
「そうしたら真弓の家から二人分の泣き叫ぶ声が聞こえて不審者が家の前に出てきて真弓の家からUFOが」
「ストップ いきなりオカルトが入ってきた」
「で、UFOに宇宙人の不審者と真弓が吸い込まれちゃったの」
「意味が分からないが、意味不明なのが逆に妙なリアリティーがあるな」
「信じるの!?」
「ああ、だが信じたところでなにも出来ない。寝ろ」
なんて朔太郎に言われたのでそのまま床に着いた。
今晩は恐ろしいほど安眠できた。寝てる間に真弓が消えたこと、UFOのこと、全てが夢みたいに思えた。
朝起きたら朔太郎と私の温度差に少し引いた。
今日は土曜日だ。真弓の家に朝一で行こうと言い出す朔太郎に連れられて真弓の家に向かった。
真弓の家には警察が来ていた。
何事かと洗濯物を干していた真弓のお隣さんのおばちゃんに話を聞いてみた。
「なにかあったんですか?」
「なんかね、高槻さんの娘さんが失踪しちゃったらしいのよ。高槻さんはね、会社をクビになって、妻に逃げられ、それでも男手一つで娘さんをしっかり育てたご立派な人なのに災難ね」
「災難ですね」
なんて、おばちゃんに返事をしたが内心それどころではなかった。
真弓が消えた。警察も捜している。胸がゾワッとした。
ただの勘だが真弓の失踪はより大きな事件の前触れにすぎない気がした。
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