世界を始める戦争か、もしくは最後の聖戦か〜敵国同士の剣姫と暗殺騎士
暗殺者は残念キャラを拾う
遂に今日、騎士選考大会の予選が始まる。
参加者数は216名。4つのブロックに分けられ、形式はバトルロワイヤル。
各ブロック通過者1名のみが本戦に進む。
つまり各ブロック54名のバトルロワイヤルで争われ、その激戦を制したたった1名の猛者が本戦に進むことができる、という事だ。
俺は昨日の受付でBブロックだという事が分かったが、正直他の出場する戦士達の事を…俺は何も知らない。
昨日俺にしょうもない理由で絡んできたあいつが、この街の冒険者ランクAだとか言っていた。
あれがAランクなら、恐らく問題ないだろう。
俺は早朝6時に起きて早めの朝食を摂った。
もし遅れでもしたらもう不安で不安で…という事ではなく、単に暇だったからである。
俺は良くも悪くも、そういう緊張や不安といった普通の人間なら持っているだろう感性が欠如している。
故に暗殺者としてここまで大成したのだろうが…。
この宿の娘に「なんで今日はこんな朝早いのさ?」
と聞かれ、騎士選考大会に出場すると答えたらてんわあんやの大騒ぎになった。
同じ宿に泊まっていた者達も数人起き始めて、何故か俺を騎士選考大会に出させまいと説得し始めたのだ。
面識のない者から少し言葉を交わした者や多少世話になった人が周りに群がって収拾がつかなくなり心底面倒だったので俺は勢いで宿を飛び出した。
どうやら俺はあの宿の連中にはもやし認定されていたらしい。
失礼な連中だった。
そして現在。まだ大会には早いこの時間、行く当てもなく街を徘徊している状況な訳である。
早朝だというのに人通りは少なくない。
露店の準備をする者、道路設備の最終チェックをする者、ただ意味なく徘徊する者(俺)。
それぞれ仕事も違えば目的も違う。
一致するのは、騎士選考大会を楽しむという事。
騎士選考大会は貴族や王族だけの特別な儀…という訳ではなく、寧ろ祭りのようなもので、王族も貴族も平民達が楽しむ事を容認している。
本来は交える事のない人達の中に、妙な一体感があった。
大通りをひたすら歩き会場の下見でもしようかと思い始めた時、周りをキョロキョロと挙動不審な人物が目に入った。
フードを被って顔を隠している。
そうしないとならない事情があるのか?
俺は暗殺者。ただ命令に忠実に従う慈悲なき暗殺者…ではなく彷徨する一般人として話しかけた。
「どうかしたのか?迷子か?」
「まっ迷子なんかではない!」
その声でこの人が女だという事が分かった。
女にしては身長は高く、体もがっしりしているように思える。
「はぁ〜。正直に言え、迷子なんだろ?」
大体このシチュエーションの結果は相場で決まっている。
俺は結構そういったお約束を盲信するタイプなのだ。
だって面白そうだし。
「うっ…」
その女の子?女性?まぁ取り敢えずその子は口ごもって俯いたまま動かなくなってしまった。
どうやら図星のようだ。
「何処か行きたい所でもあるのか?なんなら案内してやろうか?」
「えっ?」
その子はそう言うと俺を怪しむ目で見てきた。
俺の服装は、軽く武装している状態だ。
全身黒づくしで腰には剣を携えている。
恐らくは俺がこの街の人ではない事を悟ったようだ。
「あなたは他所の者だろう?そんな輩に教えてもらう事など何もない」
ぷんと頬を膨らませて顔を晒した。
何処となく上から目線のその態度に俺は思わず顔を引攣らせて言う。
「確かに俺は他所の者だが、この街に着いてから一通りガイドを読み漁ったから、この街に土地勘がある。そこは信用してもらって構わない」
「本当か?」
用心深い奴だなぁ〜。
少しは人を信用しろよ!
まぁ俺が言えた口じゃないけど。
「とにかく、お前は何処に行きたいんだ?俺がお前を今から案内して、虚言じゃないって事を証明してやるよ」
「目的地は…ない」
「はぁ?」
よく聞き取れなかった。
「すまん。もう一回言ってくれ」
「だから、目的地などないと言っている!少しばかり街を見にきただけだ。何か面白い事はないかな〜と」
どうやらこの子も俺と同じ徘徊者らしい。
「そうか。俺もだ。どうだ?良ければ一緒に街を見て回ってやるよ」
「何?」
「だってお前は迷子なんだろ?街を見て回りたくて迷子になったら意味ないし」
その子は俺の提案に押し黙る。
プライド高そうだもんな。
だが、即座に反論しないって事は自分の今の状態を理解しているからなんだろう。
正論だから反論できない。よくある事だ。
「分かった。仕方ないから貴様の同行を許可してやる。光栄に思え!」
ふっ。年齢15歳くらいの成人にも関わらず迷子になってるお子様に、光栄に思えとか不可能!
「おい貴様!今失礼な事考えたろ?」
「いえ全然」
「嘘つけ」
こうして、騎士選考大会の開始時間より早く宿を出た、アウストレア最強・・暗殺者は、道中で街を徘徊する不審者を拾いました。
参加者数は216名。4つのブロックに分けられ、形式はバトルロワイヤル。
各ブロック通過者1名のみが本戦に進む。
つまり各ブロック54名のバトルロワイヤルで争われ、その激戦を制したたった1名の猛者が本戦に進むことができる、という事だ。
俺は昨日の受付でBブロックだという事が分かったが、正直他の出場する戦士達の事を…俺は何も知らない。
昨日俺にしょうもない理由で絡んできたあいつが、この街の冒険者ランクAだとか言っていた。
あれがAランクなら、恐らく問題ないだろう。
俺は早朝6時に起きて早めの朝食を摂った。
もし遅れでもしたらもう不安で不安で…という事ではなく、単に暇だったからである。
俺は良くも悪くも、そういう緊張や不安といった普通の人間なら持っているだろう感性が欠如している。
故に暗殺者としてここまで大成したのだろうが…。
この宿の娘に「なんで今日はこんな朝早いのさ?」
と聞かれ、騎士選考大会に出場すると答えたらてんわあんやの大騒ぎになった。
同じ宿に泊まっていた者達も数人起き始めて、何故か俺を騎士選考大会に出させまいと説得し始めたのだ。
面識のない者から少し言葉を交わした者や多少世話になった人が周りに群がって収拾がつかなくなり心底面倒だったので俺は勢いで宿を飛び出した。
どうやら俺はあの宿の連中にはもやし認定されていたらしい。
失礼な連中だった。
そして現在。まだ大会には早いこの時間、行く当てもなく街を徘徊している状況な訳である。
早朝だというのに人通りは少なくない。
露店の準備をする者、道路設備の最終チェックをする者、ただ意味なく徘徊する者(俺)。
それぞれ仕事も違えば目的も違う。
一致するのは、騎士選考大会を楽しむという事。
騎士選考大会は貴族や王族だけの特別な儀…という訳ではなく、寧ろ祭りのようなもので、王族も貴族も平民達が楽しむ事を容認している。
本来は交える事のない人達の中に、妙な一体感があった。
大通りをひたすら歩き会場の下見でもしようかと思い始めた時、周りをキョロキョロと挙動不審な人物が目に入った。
フードを被って顔を隠している。
そうしないとならない事情があるのか?
俺は暗殺者。ただ命令に忠実に従う慈悲なき暗殺者…ではなく彷徨する一般人として話しかけた。
「どうかしたのか?迷子か?」
「まっ迷子なんかではない!」
その声でこの人が女だという事が分かった。
女にしては身長は高く、体もがっしりしているように思える。
「はぁ〜。正直に言え、迷子なんだろ?」
大体このシチュエーションの結果は相場で決まっている。
俺は結構そういったお約束を盲信するタイプなのだ。
だって面白そうだし。
「うっ…」
その女の子?女性?まぁ取り敢えずその子は口ごもって俯いたまま動かなくなってしまった。
どうやら図星のようだ。
「何処か行きたい所でもあるのか?なんなら案内してやろうか?」
「えっ?」
その子はそう言うと俺を怪しむ目で見てきた。
俺の服装は、軽く武装している状態だ。
全身黒づくしで腰には剣を携えている。
恐らくは俺がこの街の人ではない事を悟ったようだ。
「あなたは他所の者だろう?そんな輩に教えてもらう事など何もない」
ぷんと頬を膨らませて顔を晒した。
何処となく上から目線のその態度に俺は思わず顔を引攣らせて言う。
「確かに俺は他所の者だが、この街に着いてから一通りガイドを読み漁ったから、この街に土地勘がある。そこは信用してもらって構わない」
「本当か?」
用心深い奴だなぁ〜。
少しは人を信用しろよ!
まぁ俺が言えた口じゃないけど。
「とにかく、お前は何処に行きたいんだ?俺がお前を今から案内して、虚言じゃないって事を証明してやるよ」
「目的地は…ない」
「はぁ?」
よく聞き取れなかった。
「すまん。もう一回言ってくれ」
「だから、目的地などないと言っている!少しばかり街を見にきただけだ。何か面白い事はないかな〜と」
どうやらこの子も俺と同じ徘徊者らしい。
「そうか。俺もだ。どうだ?良ければ一緒に街を見て回ってやるよ」
「何?」
「だってお前は迷子なんだろ?街を見て回りたくて迷子になったら意味ないし」
その子は俺の提案に押し黙る。
プライド高そうだもんな。
だが、即座に反論しないって事は自分の今の状態を理解しているからなんだろう。
正論だから反論できない。よくある事だ。
「分かった。仕方ないから貴様の同行を許可してやる。光栄に思え!」
ふっ。年齢15歳くらいの成人にも関わらず迷子になってるお子様に、光栄に思えとか不可能!
「おい貴様!今失礼な事考えたろ?」
「いえ全然」
「嘘つけ」
こうして、騎士選考大会の開始時間より早く宿を出た、アウストレア最強・・暗殺者は、道中で街を徘徊する不審者を拾いました。
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