いつか夢見た夢の跡

佐々木篠

第四話 Not warry,don't cry

【神社境内、茶の間・朝食】

「んで、どういうこと?玲華」
 鰤の船造りに箸を伸ばしながら俺は向かいに座っている玲華に問いかける
「その事はさっきも言ったでしょ、私と茉莉愛やその他幻想世界に住んでいる人たちは皆、"死なない"のよ」
「まぁまぁ詳しくは後で、な?」
 と、場を宥めたのは茉莉愛。
 この神社の奥の森の中で雑貨店の店主を営んでる魔法使い。
「俺には、そう言われても違和感があるのだが」
 人はどんな理由であれ死ぬ時は死ぬ。この世界ではそんな常識は通用しないらしい。
「まぁ、分かったよ。んで、次の質問」
「ふむん?」
 円卓を囲んで右に居る銀髪の幼女に目を向けながら玲華に問いかける。
 幼女はご飯と船造りを突っついてこちらの質問には興味なさげだ
「この娘・・・誰?」
食事を進めながら問いかける
「あぁ、前話した紫苑の妹よ」
「モグモグ・・・モグモグ・・・。」
 紫苑妹は、黙々と朝食を食べ進めている。
 人形みたいなくすんだ様に輝く蒼玉が茉莉愛の方を向いて黙々と食べている。
 突如。
「あらぁ、妹が迷惑かけたかしら?」
「誰がよ、アンタよりよっぽど世話の掛からないいい子よ」
「あらまぁ、ご挨拶ね」
「!?」
 いきなりぬっと音もなく現れたのは銀髪蒼眼のお姉さん。
 見事なまでのボンッキュッボンだぁ
「あら?この子ね?向こうから来たのは」
「・・・え、えとあんたが心凪 紫苑しんなぎ しおんだよな?」
「えぇ、割とフレンドリーなのね。まぁそちらの方がやりやすいのだけれど」
 クスクスと笑いながら喋るいかにも儚げな少女。
「そういえばアンタ、何しに来たのよ」
 恨めしげに、玲華は紫苑に問いかける。
「あら、いいじゃないの別に・・・私はただ可愛い可愛い妹が悪い事してないか気になっただけよ」
 心外だとでも言いたいのかオーバーリアクションを取りながら言い訳する。
「アンタが来るときは大体何かあった時じゃ無いの!
面倒事は押し付けないでよ」
「あらぁ、昨晩そこの男の子と一緒に厄介事とご対面したじゃない」
「なっ!?」「ふぇ!?」
 茉莉愛と紫苑妹が驚く。
 紫苑妹のリアクションが意外に可愛かった。眼福眼福ぅ!
「もう掴んでたのか・・・情報が早いこと早いこと」
 玲華も無言で首肯する。
 いつの間にか円卓には食事が粗方片付け終わってた。代わりにお茶や蜜柑が置いてあった。
「やっぱり、アンタよりよっぽど良い娘ねぇ紫芳しおりは」
「しおりって言うと・・・」
「そ、私の妹よぉ。可愛いけど少ぉし気が強いの。でも、気を悪くしないでね?神裂 社クン?」
「・・・何もかもお見通しって訳ですか」
「えぇ、貴方が今知りたい事を全部知ってるし、教えてあげる。でも、取り敢えず・・・」
 玲華を見つめる紫苑。
 その目には先までの抜けたような雰囲気が微塵もなく真剣な面立ちで・・・
「な、何よ」
 あまりの真剣さに、玲華がたじろぐ。
「玲華、貴女無茶したわね?」
「・・・」
「どうなの?」
 親が子供を叱責するようなそんな感じの雰囲気が広がった。
「・・・えぇしたわ、仕方ないじゃ無い!あの状況で!どうしろってのよ!?」
 少しの腹立たしさと悲痛な声。それが、部屋に響き渡る
 その急な大声で紫芳の体が震える
「急に影見たいな黒い奴が現れて!死んで戻ったら!
紅華館が崩壊寸前だったのよ!」
 茉莉愛が何事か思い当たったらしい
「昨日の轟音・・・まさかッ!」
「えぇその通りよ、社も気づいたかもしれないけど昨晩紅華館が崩壊寸前だったのよ。ある化物によってね」
「・・・あいつらの仲間か?」
 轟音については心当たりがないがここは勘だ。
「正解よぉ、昨日貴女達が出会ったの全部仲間同士ね・・・しかも厄介なのは"全部が幻想世界の住人と同等の能力と力を有している"わ、でもだからと言って弱点も一緒とは限らない」
「鏡写し見たいな事か・・・?」
「えぇ近いわね、流石茉莉ちゃん。勘が鋭いのね」
「まぁな・・・でも近いだけで正解では無いんだろ?」
「えぇ、近いだけで・・・ね――――」
「・・・"ペルソナ"」
 紫芳が神妙な出で立ちで蜜柑を頬張りながらポツリと呟いた。
「ぺるそな?ぺるそなってなんだぜ?」
「さぁ?分からないわ」
 姉である紫苑やその他二人とも分からないようだ
 まず、ペルソナなんて難しい言葉知っている紫芳がすごいと感じる、見た目不相応な知識量に開いた口が塞がらない気分だ。
「よく知ってるな。そんな難しい言葉。凄いなおい」
 と、素直に褒めてみると
「・・・べ、別にってか子供扱いしないでよ。今日会ったばかりなのに、馴れ馴れしいのよ」
 どんな暴言でも赤く染まった頬では大した切れ味も無いってよく分かんだね!!
「ねぇ、社。そのぺるそなって何なの?」
「ペルソナってのは、心理学的な意味合いでその人の表面状の人格の事。別の意味だと"別人格""架空の存在"って意味もある・・・な・・・」
 待てよ?
 架空の人間の姿形を真似るとしたらあの紙片の影の化物は、俺を真似ている筈。
 俺は、元は架空では無く現存する世界から来たイレギュラーで、架空の人間としての意味合いは果たされない。
 ならば別人格か?確かにどこか似てたが
「・・・しろ」
 いや、そもそもの話。
「・・・や・・・ろ」
 まず何で、俺等は
「・・・ざき・・・ろ」
 "あの化物を自らの影と仮定したのか"
 外の俺を呼びかける声に答えたい裏腹に僅かに眠る疑心が俺の意識を暖かく手放した。

【神社、境内・社の意識が飛ぶ頃】

「社!!!!!」
「社!!!!!あんたどうしたのよ!!!???」
「神裂・・・社・・・!!!」
 私、茉莉愛、紫芳の3人で必死になって呼びかける。
 社の目はとうに虚ろで、紫苑には医者を呼んで貰った。もう直来る事だろう。
 話を聞いていたら急にぶっ倒れたものだから、場を和ませる漫才かと思ったが・・・・・・・・・そんなのは頭がお花畑の奴が考えるような事だ。
 勿論それは私の事で今になって目の前で、死人が出ると言う事がどういう事か。
 昨晩の、化物にやられて涙を流した社の気持ちが、なんとなく分かった。
「帰って・・・来なさいよ・・・バカッ!!!!」
 いつの間にか、畳には自分の涙が滲んでいた。
 多分、私達は生き返ってもこいつみたいな境遇の人間はやられたら終わり。それが今では無いと言う希望・・・いや、願望を抱いて心肺蘇生するしか、する事が出来なかった。

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