花に願いを
第46話
「え、でもでも戦争は休戦していたんでしょ?」
話を一度止めた月宵に、軽猫は首を捻って問いかける。その疑問は竜太郎やコロノも思っていたのか、すぐに返答をしない月宵の顔を見上げた。
「……まぁ、そうじゃな。正確には、陽族の者達が国境に現れなくなった為にこちらとしても何もできなかったのじゃ」
「なんだそりゃ、それじゃあお前達が拉致された意味無いじゃんよ」
「いや、多分リーダーはその状況を利用するつもりだったんだ。確かに何を企んでいるか分からない分攻めにくいけれど、そのリーダーには勝てると言い切れる自信があったんだ」
「流石はコロノじゃ。そう、当時影族のリーダーだった男は勝てる自信があったのじゃ。当時の影族は、自分達が攻められない事をいい事に陽族の捕虜を使って実験していたのじゃ。その実験内容は影族の国にのみ存在する動植物で陽族がアレルギー反応を起こすか物があるのか調べる物じゃ。そして一つ、猛烈なアレルギー反応を見せる物があった。それが修羅丸」
「修羅丸……!」
他二人は首を捻る事しか出来ないが、コロノだけはその名前に鋭く反応した。瞳は大きく見開かれ、驚きを露わにした表情。周りは確実にコロノがその存在について知っているのだと理解した。
「修羅丸とは、妾達影族の国に生えていた植物、狂猛草という植物をすりつぶしてご飯に混ぜただけのシンプルな食べ物じゃ。しかしこの狂猛草はどういう訳か、影族の身体能力を高める力を持っていてな、妾も戦地に立たされた時に渡されたわ。しかし、これを食べた陽族は枯れた植物の様に全身から水分を失って絶命した」
「それは……勿論俺や猫女が食べても同じ反応になるって事だよな?」
「いや知らぬ。まず他の星から連れてきた者を兵隊にしようという考えなど無かったからな。リーダーは、狂猛草をあぶって発生する煙が陽族達にそういう反応を起こさせるのだと発見し、狂猛草をあぶって完成させた煙玉を作り上げた。それが奴の自信の正体。秘策だったのじゃ」
「そ、それで影族が勝っちゃったのね」
「こらこらお嬢、結論を急ぐでない。言っておろう、陽族側も攻めてこなかったと。こちらが悠長に爆弾を作り上げている間もずっと奴等は攻めてこなかったのじゃぞ? 何も無くそれで終わる訳が無かろうよ」
重い話がようやく終わるのだと胸を撫でおろす軽猫を容赦なく月宵は否定する。
「陽族も同じく用意していたのじゃ。ただしこっちと同じ様な命を奪う爆弾ではない。陽族は陽族らしく、医療に特化したものを作り上げた。それが超医学薬。中身はよく分からぬ大砲の玉と同じ大きさをした何かじゃ。その薬を大砲に詰めて飛ばすと、弾は初めこそ勢いよく飛び出すが、やがて失速し空中で浮遊する。その玉に小石でも拳銃の弾でも良い。何かを当てるのじゃ」
「空中で浮遊? なんだそりゃ、中に水素でも入っているってか?」
「違う。中に入っているのは多量の粉だった。影族ではそれをゾンビ玉と呼んだ。効力は名前の通りゾンビを作り出す爆弾じゃ。弾に入った粉を浴びると、例え半身を失っていても、頭だけの存在になっていたとしても蘇る。今思い出しただけでも胸糞悪いわ」
「お、おぇ……」
「猫女、きついなら話を聞かないで良いんだぞ?」
明らかに顔を真っ青にして口を押さえる軽猫に竜太郎が問いかけるが、軽猫は首を横へと振ってそれを否定する。今にも吐き出しそうになりながら自分の胸を叩いてその場に座りなおした軽猫は真っ直ぐ月宵の顔を見る。
「ひ、陽朝ちゃん達の事だもん。ちゃんと聞きたい」
「と、とは言ってもよ……」
「竜太郎。本人がこう言っているんだからこのまま話を聞こう。限界だと思ったら彼女を向こうの木陰に休ませる」
「……無理はするなよ」
「うむ、話はまとまった様じゃな。安心するといいお嬢。もう少しで話は終わる」
話を一度止めた月宵に、軽猫は首を捻って問いかける。その疑問は竜太郎やコロノも思っていたのか、すぐに返答をしない月宵の顔を見上げた。
「……まぁ、そうじゃな。正確には、陽族の者達が国境に現れなくなった為にこちらとしても何もできなかったのじゃ」
「なんだそりゃ、それじゃあお前達が拉致された意味無いじゃんよ」
「いや、多分リーダーはその状況を利用するつもりだったんだ。確かに何を企んでいるか分からない分攻めにくいけれど、そのリーダーには勝てると言い切れる自信があったんだ」
「流石はコロノじゃ。そう、当時影族のリーダーだった男は勝てる自信があったのじゃ。当時の影族は、自分達が攻められない事をいい事に陽族の捕虜を使って実験していたのじゃ。その実験内容は影族の国にのみ存在する動植物で陽族がアレルギー反応を起こすか物があるのか調べる物じゃ。そして一つ、猛烈なアレルギー反応を見せる物があった。それが修羅丸」
「修羅丸……!」
他二人は首を捻る事しか出来ないが、コロノだけはその名前に鋭く反応した。瞳は大きく見開かれ、驚きを露わにした表情。周りは確実にコロノがその存在について知っているのだと理解した。
「修羅丸とは、妾達影族の国に生えていた植物、狂猛草という植物をすりつぶしてご飯に混ぜただけのシンプルな食べ物じゃ。しかしこの狂猛草はどういう訳か、影族の身体能力を高める力を持っていてな、妾も戦地に立たされた時に渡されたわ。しかし、これを食べた陽族は枯れた植物の様に全身から水分を失って絶命した」
「それは……勿論俺や猫女が食べても同じ反応になるって事だよな?」
「いや知らぬ。まず他の星から連れてきた者を兵隊にしようという考えなど無かったからな。リーダーは、狂猛草をあぶって発生する煙が陽族達にそういう反応を起こさせるのだと発見し、狂猛草をあぶって完成させた煙玉を作り上げた。それが奴の自信の正体。秘策だったのじゃ」
「そ、それで影族が勝っちゃったのね」
「こらこらお嬢、結論を急ぐでない。言っておろう、陽族側も攻めてこなかったと。こちらが悠長に爆弾を作り上げている間もずっと奴等は攻めてこなかったのじゃぞ? 何も無くそれで終わる訳が無かろうよ」
重い話がようやく終わるのだと胸を撫でおろす軽猫を容赦なく月宵は否定する。
「陽族も同じく用意していたのじゃ。ただしこっちと同じ様な命を奪う爆弾ではない。陽族は陽族らしく、医療に特化したものを作り上げた。それが超医学薬。中身はよく分からぬ大砲の玉と同じ大きさをした何かじゃ。その薬を大砲に詰めて飛ばすと、弾は初めこそ勢いよく飛び出すが、やがて失速し空中で浮遊する。その玉に小石でも拳銃の弾でも良い。何かを当てるのじゃ」
「空中で浮遊? なんだそりゃ、中に水素でも入っているってか?」
「違う。中に入っているのは多量の粉だった。影族ではそれをゾンビ玉と呼んだ。効力は名前の通りゾンビを作り出す爆弾じゃ。弾に入った粉を浴びると、例え半身を失っていても、頭だけの存在になっていたとしても蘇る。今思い出しただけでも胸糞悪いわ」
「お、おぇ……」
「猫女、きついなら話を聞かないで良いんだぞ?」
明らかに顔を真っ青にして口を押さえる軽猫に竜太郎が問いかけるが、軽猫は首を横へと振ってそれを否定する。今にも吐き出しそうになりながら自分の胸を叩いてその場に座りなおした軽猫は真っ直ぐ月宵の顔を見る。
「ひ、陽朝ちゃん達の事だもん。ちゃんと聞きたい」
「と、とは言ってもよ……」
「竜太郎。本人がこう言っているんだからこのまま話を聞こう。限界だと思ったら彼女を向こうの木陰に休ませる」
「……無理はするなよ」
「うむ、話はまとまった様じゃな。安心するといいお嬢。もう少しで話は終わる」
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