花に願いを

水乃谷 アゲハ

第6話

レイコ洞窟。今回コロノ達が行く洞窟の名前だった。この洞窟には少し変わった話がある。




「幽霊?」




洞窟に向かいながら、コロノは軽猫に聞いた。そう、レイコ洞窟には幽霊がいるといわれているのだ。




「うん。レイコ洞窟には良いお宝があるって仲間で話したことがあるから絶対あってる。あそこにはジュエル洞窟にいたやつみたいなモンスターはいないんだけど、幽霊がいるんだって。だから誰もお宝にたどり着けないんだってよ?」




「へぇ……」




コロノはあまり興味なさそうな顔をして話を聞いていた。その様子を見て、軽猫は話題を変える。




「そ、そうなの? こ、コロノ……。うん、コロノはさ、素手で戦ってたけど、武器とかないの?」




コロノという呼び方に一瞬詰まったものの、軽猫はそう聞いた。コロノも別に気にする様子はなく、普通に返事をする。




「うん」




「そうなんだ……」




そう言って、軽猫は腰につけている脇差を取り出した。




「あたしはこれ持ってるけど、戦闘経験とか無いから使えないんだよね。あたしは速さにだけ自信あるから逃げてばっかりだったし。だから、レイコ洞窟行っても足引っ張るかも……」




「大丈夫。離れないでくれれば助ける」




その一言に軽猫は思わず顔を赤くして立ち止まる。コロノは足を止めず、どんどん先に進んで行く。




「わ、わかった! ならそれ以外のあたしに出来ることはするよ!」




軽猫はそういってまるで猫のようにコロノの後ろをついて行った。








「こ、ここ……だよね? ど、洞窟?」




ようやく二人がレイコ洞窟にたどり着いて、軽猫が言った一言はそれだった。


それもそのはずで、見るとそこにあるのは古ぼけた家が建っていたのだ。どう見ても洞窟という見た目ではない。




「あたしが見た写真だと、ちゃんとした洞窟だったんだけどな……?」




「幻覚でもない」




「あ、あの……」




二人が目の前の建物を見ていると、後ろから声を掛けられる。




「はい?」




後ろを振り返ると、フィオーレが見せた写真の女の子がそこにはいた。




「あ、あの、陽朝です……。洞窟は、こ、この建物の地下にあるそうです」




オドオドした様子で陽朝は説明した。軽猫とコロノは顔を見合わせて、もう一度陽朝を見る。




「あなたが陽朝ちゃん? あたしは軽猫! こっちがコロノだよ」




「ギルドの名前はテクスタ。コロノ=マクフェイル。よろしく」




「あ、よろしくお願いします……。あ、あと一応今はギルド名ヨナヨナの陽朝です……」




よく分からないことを言うと、陽朝は二人の横に立つ。




「い、行きますか?」




「や、やだなぁ……」




軽猫はそうつぶやいて、先ほど言われたフィオーレのお願いをちゃんと断ればよかったと思いつつため息をつく。








時は少し戻って軽猫が泣き止み、フィオーレとコロノ、軽猫が改めて今回の冒険について話し合うところになる。




「今回、二人がやるんはレイコ洞窟の盗賊退治や」




軽猫が戻ってきてからフィオーレは詳しい説明を二人に始めた。




「盗賊退治?」




「うん、だけどこれがただの盗賊じゃないんよ。抜け者っていう、ギルドから無許可で抜けた者たちでな? ちょっとばかりモンスターより強いもんやから、腕が立つ人にお願いしようとしたんよ」




「そそ、それなら他の人でもいいんじゃないですか?」




フィオーレの言葉に、軽猫が顔の前で手を振り拒否的な反応する。




「なんや? もしかして軽猫さんは戦闘苦手なん? 大丈夫よ。コロノ君は強いから」




「え、えぇ……」




「拒否も異論もなし! 今回は他に頼む人もいないんや。頼むわ」




と、半ば強引に今回の目的は決められ、今に至る。








「た、確かにこれは洞窟だね……」




建物の中に入ると、目の前に大きな穴が開いていて、奥に続いていた。一応ジュエル洞窟にあった石と同じようなものが壁のあちこちにあり、暗くは無い。




「そ、そうですね……」




既に少し進んだ陽朝と軽猫はコロノの後ろについていきながら呟いている。




「ここ、コロノは怖くないの? 盗賊も幽霊も」




「大丈夫」




「す、すごいですね……」




何も無い通路を静かに進んでいると、突然コロノが足を止める。




「どうしたの?」


「ど、どう、しました?」




二人がコロノの横から顔を覗かせると、そこにはポツンと置かれた骨があった。どう見ても人間ではない。




「ほ、骨!?」




思わず軽猫は大きな声を出す。コロノは地面にひざをついて、その骨を触る。すると、後ろで見ていた陽朝が小さく、




「犬の骨?」




と、一目見て言った。




「え、陽朝ちゃん分かるの?」




「あ、あの、はい。見たことがあります……」




サラリとすごいことを陽朝は言った。そしてコロノの持つ犬の骨に近づくと、少し触る。すると、




「クワレタ……トウゾクニツカマッタ」




なんと犬の骨が喋りだしたのだ。




「ひぃぃ!?」




軽猫は思わず飛び退く。コロノは骨を持ったまま陽朝を見る。




「盗賊さんは何人いたんですか?」




陽朝は喋った犬の骨になお話しかける。全く怖がっていない。




「ヨニン、ダ」




犬の骨は、コロノに持たれたままなお喋る。




「フタリオンナ、ヒトリオトコダ」




「分かりました。仇は私たちが取ります。ゆっくり眠ってください」




その一言が合図だったように、骨は一瞬にして粉となり、コロノの手の隙間から地面に落ちた。




「ひひひ、陽朝ちゃん? あ、あなたは一体?」




その答えを言ったのは、陽朝ではなくコロノだった。




「……口寄せ……」




「え?」




「あの、はい。口寄せというものです。私は死んだものの声を聞けるんです……」




それを聞いて軽猫はびっくりしたように陽朝を見る。




「す、すごいね……」




コロノは手の粉を、一箇所に固めると手を合わせた。


陽朝や軽猫は驚いた顔をしてそれを見ていたが、続いて手を合わせる。




「……行こう」




少し強い言い方でコロノはまた歩き出した。そして軽猫はその後についていきながら首を傾げる。




「男一人に女二人? 四人なのに?」

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