プラスチックの兵士
第三話 ナニヤ・ニニ
情報を処理できなくなった私の頭を覚ましてくれたのは、ヒナラキだった。
「クゥーン、クーン」
甘えたような声を出し、私の足にすり寄ってきた。
私の戸惑いを読み取ったのか、はたまたヒナラキ自身が不安を解消させるために行うのかは定かではないが、昔から空気を読み取ってはこの仕草をよくしてきた。
すり寄ってきたヒナラキをしばらく撫でて落ち着きを取り戻すと、エダマメとヒナラキに次の村について説明してやることにした。
「さっきの主人に次の村の情報をもらったんだ。名前は『ナニヤ・ニニ』で、周りを豊かな自然に囲まれていてどうやら立派なお城が建っているらしい。他の村からの往来も多く、賑やかみたいだぞ。距離は今から歩いて行けば、おそらく夕暮れ時には到着できるだろう」
エダマメは奥さんに作ってもらったのであろう花冠のことに気をかけながら、ウンウンと話を聞いていた。
ヒナラキはお座りの状態でこちらを向き、尻尾をブンブンと振っていた。
エダマメが花冠を付けた姿はとても可愛らしかった。普段、被っているフードを外して頭に花冠を乗せているのだ。時折、自分の目線を上げては花の状態を確認したり、外したりしては花の匂いを嗅いでいた。
「その花冠、そんなに気に入ったのか?」
エダマメは自身がそんな行動をしていたのに気付いていなかったのか、頬を赤らめて恥ずかしがった口調で答えてくれた。
「うん、花が白くてとても綺麗。良い香りもするから、好き」
無口なエダマメがここまで感情を表すのは珍しいことだ。
きっと花の色や香り、肌ざわりを五感で感じ取り、花への興味が湧いたのだろう。
このまま会話を終わらしたら何かもったいない気がしたので、このまま花についての話題を続けてみることにした。
「花の種類は…よくわからない。村に着いたら一緒に調べてみるか?」
「そうする」
エダマメも乗り気のようだった。
私達はもらった名刺を懐に入れ、木陰に置いておいた荷物を背負うと再び歩き出した。
日が傾き、夕暮れ時になった頃。
暗がりを三人で歩いていると急に道が土から煉瓦造りに変わり、村まで続く街灯の明かりが見えはじめた。
途中、川を渡るための橋を進んでいると村の象徴である立派な城が見えてきた。
城からはこちらからでも見えるほどの煌びやかな装飾や光を放っており、その豪華さを窺がうことができた。
エダマメは頭を揺らしてうつらうつらと歩いていた。
ここに来るまでに慣れない野宿を繰り返し、荷物を持っては長い道のりを歩かせられたからかだろう。
ヒナラキもその姿をみて心配になったのか、エダマメに寄り添って歩いてあげていた。
さすがに疲れたか、村に入ったらすぐに宿屋を探すとしよう。
あれからエダマメにもう少しで到着するから頑張れと声援を送るも空しく、結局眠ってしまった。
今は荷物をまとめて、前に背負い、すぅすぅと寝息を立てているエダマメをおんぶしながら歩いていた。
煉瓦造りの道を歩いていると、ようやく村の外観が見え始めた。到着する頃には日はすっかりと落ちて、月が昇っていた。
村は周囲を低い丸太の壁で囲んでおり、四方には大きな門が設置されている。
私たちが今から入ろうとしているのは、北門ということになる。
門のそばには立派な鎧を着た衛兵が立っていた。
小さな小屋のような検問所が設置されており、ヒナラキにエダマメを預けると村に入るために衛兵に要件を伝えた。
「こんばんは、遅くにすいませんが入村手続きをお願いします」
兵士は手慣れた感じで答えてきた。
「はいはい、入村ですね。商いでしょうか?それとも観光でしょうか?」
「旅の者なので観光ですかね」
「北門からの観光客は珍しいですね。滞在期間はお決まりですか?」
「詳しくは決まってないですが、多めに見積もって二週間程でお願いします」
「ふふ、大丈夫ですよ。この村は流通の中継地点であり、それに伴って人の大来も多いのです。そんな一、二日のずれなんて誰も咎めませんよ。それに、城から派遣されている衛兵が常に村の警備にあたっていますので、ご心配なく」
「それはありがたいお話しですね」
「はい。では、大人が一名と子供が一名それと犬が一匹の三人での入村でお間違いないでしょうか?」
「はい、お願いします」
「こちらが入村許可証になります。通行料は後払いになりますので、よろしくお願いします」
「宿屋や商会等は村の案内図をご確認ください」
「おーい、旅の三人組が入村だ。通してやってくれー」
検問所の衛兵が合図を送ると門の傍の衛兵も了解の合図を返した。
眠るエダマメをもう一度背負い、門へと向かうと衛兵は優しい表情をして、我々を出迎えてくれた。
「ようこそわが村へ」
門をくぐると、そこには賑わう城下町が広がっていた。
周囲からは美味しそうな料理の香りや楽しげな声、音楽が聞こえてきた。ガス灯の揺らめく明かりが周囲を照らし、幻想的な情景となっていた。
近くの酒場では男達が大きな歓声を上げていた。
どうやら、タンゴ調に弾かれたアコースティックギターの音色にあわせて
赤いドレスを着た美人な踊り子が踊っているのを見て盛り上がっているようだ。
「へぇー、今時こんな村があるんだな」
時代感の違いに感心しながら歩いていると、先ほど衛兵から言われた案内板を見つけることができた。
「今日はもう遅いから買い物や観光は明日にするか」
「うん」
エダマメは初めて見る村に興味津々なのか、目を覚ましキョロキョロしていた。
私は早速、宿屋の場所を確認して向かうことにした。
宿屋に到着して扉を開けると、街並みとは違った最先端の雰囲気が広がっていた。
奥から出てきた割腹のいい女将が私たちを出迎えてくれた。
「いらっしゃい!ここは宿屋だよ。宿泊かい?それとも休憩かい?」
「宿泊で。先に聞いておくが、ペットは一緒でも大丈夫か?」
「ああ、構いはしないよ。よくしつけられていそうだしね」
女将はお座りをしたヒナラキをチラリと見るとにこやかな表情になった。
「そりゃ、どうも。ところで私らは旅人なのだが、ここでの長期の宿泊は可能か?」
「旅人だって!?今時、珍しいねー。生憎だがここにはそんなに長期滞在できるような部屋は無いんだよ、悪いね」
「そうか……」
私はがっかりした表情で後の宿泊について考えていると、不憫に思ったのか女将がある提案を持ち掛けてきた。
「お前さん達でよければこの宿屋のはなれに私が以前に経営していた宿屋の小屋があるよ。おんぼろだし、あまり良い設備は整ってないけどねぇ。そこでよければ貸せるけど、どうする?」
「ああ、そこで構わない。助かるよ」
「二週間ほどの滞在の予定なんだが、料金は幾らぐらいだ?」
「そうさね、二週間ほどの滞在で三食の食事がついて……。ざっと十万ギルといったところだね!先払いで頼むよ」
女将は両手を腰にあて、堂々と言ってきた。私はその値段に納得し支払いをすることにした。
「交渉成立だな」
私は、受付においてある青白く光る端末に手を翳した。
「十万ギル、支払い」
端末に向かって支払いを伝えると、青白の光が緑色の光に変わった。
この端末は都市部で開発された全自動の支払機だ。
手を翳すとそこから対象の情報を読み取り、口座情報等を直接脳内に開示してくれる。
あとは金額のやり取りの手続きを両者の合意のもと行い、コンピュータで電子決済してくれるというシステムだ。
これによりキャッシュレス化が進み、銀行強盗やそういった悪事は今ではほぼ無くなっていた。このシステムは人工島の全域で利用されている。
私は村の雰囲気とは合わないシステムに違和感を覚えていた。
支払いを完了すると、女将は受付を抜けてこちらに鍵を受け渡してきた。
「毎度あり。ほらよ、こいつは小屋のカギだ。最低限の設備は整っているから好きに使いな。今からベットメイキングにアンドロイドをよこすからその間、食堂で夕飯でも食べてな」
「助かる、さっそく使わせてもらうよ」
私たちは荷物を預け、右手の食堂へと向かうことにした。
食堂へ向かうと、人がちらほらといた。奥ではこの宿屋の主人だろうかが料理に腕を振るっていた。
ウェイターの女性型アンドロイドに三人分の注文をすると、席に着いた。
暫くすると、ウェイターが料理を運んできた。
注文したのは一つ目に、この村の名産品である木の実や香草を生地に練り込み、じっくり焼いた良い匂いのするパン。
二つ目は、この豊かな自然で育ったであろう牛の肉に香辛料をたっぷり加え、臭みを消して焼いたステーキ。
三つ目には牛乳を使ったスープ仕立ての魚の煮込みが出てきた。
飲み物に私は葡萄酒、エダマメには葡萄ジュースを頼み、ヒナラキには特別に作ってもらった特製ごはんと綺麗な水をもらった。
「いただきます」
両手を合わせて早速、旨そうな料理を頂くことにした。
久しぶりに食べるしっかりとした飯は、とても美味しかった。料理の随所に使われている香草や香辛料が食欲を次へ、次へとそそり、間に挟む葡萄酒が乾いた喉と身体を潤した。
肉は脂身が少ない分さっぱりと食べられ、スープはまろやかな風味を醸し出していた。
エダマメもこの料理の旨さにまるでエサを大量に見つけたリスのように食物を口に運び、両頬をポコっと膨らませながら食べていた。
ヒナラキも初めはいつもと同じペースでお上品に振る舞って食べていたが旨さに気付いたのだろうか、ガッつくように食べだしていた。
私達は食事を終え、再度両手を合わせて感謝の言葉を述べた。
「ごちそうさまでした」
こんなうまい食事を作ってくれた主人に届くよう大きな声で言った。
「おう!!また来なよ!」
主人に届いたのだろう、手を挙げて答えてくれた。
食堂を後にすると満腹感と酔いからか、強烈な眠気に襲われた。陽気な足取りで小屋に向かうと、メイド服を着用した女性型アンドロイドが出迎えてくれた。
「お疲れ様です、お部屋の準備は整いました。どうぞごゆっくりお寛ぎくださいませ」
「ありがとう」
小屋はそんなに窮屈な感じを与えないワンルームであった。預けた荷物は整頓されて籠にまとめられていた。
別室にはトイレやシャワーが備え付けられており、簡単な料理ならできる炊事場までもあった。
部屋の奥にはベッドは二つあり、白いシーツや布団が整えられていた。
私らは旅の装いを外してすぐにベッドに入り、明かりを消した。
ここ最近はずっと寝袋で野宿づくしだった。今日からは柔らかいベッドと太陽の匂いがする枕で寝られると思うと、嬉しい気持ちになった。
私達は目を瞑ると、物の数秒で眠りに落ちてしまった。
「クゥーン、クーン」
甘えたような声を出し、私の足にすり寄ってきた。
私の戸惑いを読み取ったのか、はたまたヒナラキ自身が不安を解消させるために行うのかは定かではないが、昔から空気を読み取ってはこの仕草をよくしてきた。
すり寄ってきたヒナラキをしばらく撫でて落ち着きを取り戻すと、エダマメとヒナラキに次の村について説明してやることにした。
「さっきの主人に次の村の情報をもらったんだ。名前は『ナニヤ・ニニ』で、周りを豊かな自然に囲まれていてどうやら立派なお城が建っているらしい。他の村からの往来も多く、賑やかみたいだぞ。距離は今から歩いて行けば、おそらく夕暮れ時には到着できるだろう」
エダマメは奥さんに作ってもらったのであろう花冠のことに気をかけながら、ウンウンと話を聞いていた。
ヒナラキはお座りの状態でこちらを向き、尻尾をブンブンと振っていた。
エダマメが花冠を付けた姿はとても可愛らしかった。普段、被っているフードを外して頭に花冠を乗せているのだ。時折、自分の目線を上げては花の状態を確認したり、外したりしては花の匂いを嗅いでいた。
「その花冠、そんなに気に入ったのか?」
エダマメは自身がそんな行動をしていたのに気付いていなかったのか、頬を赤らめて恥ずかしがった口調で答えてくれた。
「うん、花が白くてとても綺麗。良い香りもするから、好き」
無口なエダマメがここまで感情を表すのは珍しいことだ。
きっと花の色や香り、肌ざわりを五感で感じ取り、花への興味が湧いたのだろう。
このまま会話を終わらしたら何かもったいない気がしたので、このまま花についての話題を続けてみることにした。
「花の種類は…よくわからない。村に着いたら一緒に調べてみるか?」
「そうする」
エダマメも乗り気のようだった。
私達はもらった名刺を懐に入れ、木陰に置いておいた荷物を背負うと再び歩き出した。
日が傾き、夕暮れ時になった頃。
暗がりを三人で歩いていると急に道が土から煉瓦造りに変わり、村まで続く街灯の明かりが見えはじめた。
途中、川を渡るための橋を進んでいると村の象徴である立派な城が見えてきた。
城からはこちらからでも見えるほどの煌びやかな装飾や光を放っており、その豪華さを窺がうことができた。
エダマメは頭を揺らしてうつらうつらと歩いていた。
ここに来るまでに慣れない野宿を繰り返し、荷物を持っては長い道のりを歩かせられたからかだろう。
ヒナラキもその姿をみて心配になったのか、エダマメに寄り添って歩いてあげていた。
さすがに疲れたか、村に入ったらすぐに宿屋を探すとしよう。
あれからエダマメにもう少しで到着するから頑張れと声援を送るも空しく、結局眠ってしまった。
今は荷物をまとめて、前に背負い、すぅすぅと寝息を立てているエダマメをおんぶしながら歩いていた。
煉瓦造りの道を歩いていると、ようやく村の外観が見え始めた。到着する頃には日はすっかりと落ちて、月が昇っていた。
村は周囲を低い丸太の壁で囲んでおり、四方には大きな門が設置されている。
私たちが今から入ろうとしているのは、北門ということになる。
門のそばには立派な鎧を着た衛兵が立っていた。
小さな小屋のような検問所が設置されており、ヒナラキにエダマメを預けると村に入るために衛兵に要件を伝えた。
「こんばんは、遅くにすいませんが入村手続きをお願いします」
兵士は手慣れた感じで答えてきた。
「はいはい、入村ですね。商いでしょうか?それとも観光でしょうか?」
「旅の者なので観光ですかね」
「北門からの観光客は珍しいですね。滞在期間はお決まりですか?」
「詳しくは決まってないですが、多めに見積もって二週間程でお願いします」
「ふふ、大丈夫ですよ。この村は流通の中継地点であり、それに伴って人の大来も多いのです。そんな一、二日のずれなんて誰も咎めませんよ。それに、城から派遣されている衛兵が常に村の警備にあたっていますので、ご心配なく」
「それはありがたいお話しですね」
「はい。では、大人が一名と子供が一名それと犬が一匹の三人での入村でお間違いないでしょうか?」
「はい、お願いします」
「こちらが入村許可証になります。通行料は後払いになりますので、よろしくお願いします」
「宿屋や商会等は村の案内図をご確認ください」
「おーい、旅の三人組が入村だ。通してやってくれー」
検問所の衛兵が合図を送ると門の傍の衛兵も了解の合図を返した。
眠るエダマメをもう一度背負い、門へと向かうと衛兵は優しい表情をして、我々を出迎えてくれた。
「ようこそわが村へ」
門をくぐると、そこには賑わう城下町が広がっていた。
周囲からは美味しそうな料理の香りや楽しげな声、音楽が聞こえてきた。ガス灯の揺らめく明かりが周囲を照らし、幻想的な情景となっていた。
近くの酒場では男達が大きな歓声を上げていた。
どうやら、タンゴ調に弾かれたアコースティックギターの音色にあわせて
赤いドレスを着た美人な踊り子が踊っているのを見て盛り上がっているようだ。
「へぇー、今時こんな村があるんだな」
時代感の違いに感心しながら歩いていると、先ほど衛兵から言われた案内板を見つけることができた。
「今日はもう遅いから買い物や観光は明日にするか」
「うん」
エダマメは初めて見る村に興味津々なのか、目を覚ましキョロキョロしていた。
私は早速、宿屋の場所を確認して向かうことにした。
宿屋に到着して扉を開けると、街並みとは違った最先端の雰囲気が広がっていた。
奥から出てきた割腹のいい女将が私たちを出迎えてくれた。
「いらっしゃい!ここは宿屋だよ。宿泊かい?それとも休憩かい?」
「宿泊で。先に聞いておくが、ペットは一緒でも大丈夫か?」
「ああ、構いはしないよ。よくしつけられていそうだしね」
女将はお座りをしたヒナラキをチラリと見るとにこやかな表情になった。
「そりゃ、どうも。ところで私らは旅人なのだが、ここでの長期の宿泊は可能か?」
「旅人だって!?今時、珍しいねー。生憎だがここにはそんなに長期滞在できるような部屋は無いんだよ、悪いね」
「そうか……」
私はがっかりした表情で後の宿泊について考えていると、不憫に思ったのか女将がある提案を持ち掛けてきた。
「お前さん達でよければこの宿屋のはなれに私が以前に経営していた宿屋の小屋があるよ。おんぼろだし、あまり良い設備は整ってないけどねぇ。そこでよければ貸せるけど、どうする?」
「ああ、そこで構わない。助かるよ」
「二週間ほどの滞在の予定なんだが、料金は幾らぐらいだ?」
「そうさね、二週間ほどの滞在で三食の食事がついて……。ざっと十万ギルといったところだね!先払いで頼むよ」
女将は両手を腰にあて、堂々と言ってきた。私はその値段に納得し支払いをすることにした。
「交渉成立だな」
私は、受付においてある青白く光る端末に手を翳した。
「十万ギル、支払い」
端末に向かって支払いを伝えると、青白の光が緑色の光に変わった。
この端末は都市部で開発された全自動の支払機だ。
手を翳すとそこから対象の情報を読み取り、口座情報等を直接脳内に開示してくれる。
あとは金額のやり取りの手続きを両者の合意のもと行い、コンピュータで電子決済してくれるというシステムだ。
これによりキャッシュレス化が進み、銀行強盗やそういった悪事は今ではほぼ無くなっていた。このシステムは人工島の全域で利用されている。
私は村の雰囲気とは合わないシステムに違和感を覚えていた。
支払いを完了すると、女将は受付を抜けてこちらに鍵を受け渡してきた。
「毎度あり。ほらよ、こいつは小屋のカギだ。最低限の設備は整っているから好きに使いな。今からベットメイキングにアンドロイドをよこすからその間、食堂で夕飯でも食べてな」
「助かる、さっそく使わせてもらうよ」
私たちは荷物を預け、右手の食堂へと向かうことにした。
食堂へ向かうと、人がちらほらといた。奥ではこの宿屋の主人だろうかが料理に腕を振るっていた。
ウェイターの女性型アンドロイドに三人分の注文をすると、席に着いた。
暫くすると、ウェイターが料理を運んできた。
注文したのは一つ目に、この村の名産品である木の実や香草を生地に練り込み、じっくり焼いた良い匂いのするパン。
二つ目は、この豊かな自然で育ったであろう牛の肉に香辛料をたっぷり加え、臭みを消して焼いたステーキ。
三つ目には牛乳を使ったスープ仕立ての魚の煮込みが出てきた。
飲み物に私は葡萄酒、エダマメには葡萄ジュースを頼み、ヒナラキには特別に作ってもらった特製ごはんと綺麗な水をもらった。
「いただきます」
両手を合わせて早速、旨そうな料理を頂くことにした。
久しぶりに食べるしっかりとした飯は、とても美味しかった。料理の随所に使われている香草や香辛料が食欲を次へ、次へとそそり、間に挟む葡萄酒が乾いた喉と身体を潤した。
肉は脂身が少ない分さっぱりと食べられ、スープはまろやかな風味を醸し出していた。
エダマメもこの料理の旨さにまるでエサを大量に見つけたリスのように食物を口に運び、両頬をポコっと膨らませながら食べていた。
ヒナラキも初めはいつもと同じペースでお上品に振る舞って食べていたが旨さに気付いたのだろうか、ガッつくように食べだしていた。
私達は食事を終え、再度両手を合わせて感謝の言葉を述べた。
「ごちそうさまでした」
こんなうまい食事を作ってくれた主人に届くよう大きな声で言った。
「おう!!また来なよ!」
主人に届いたのだろう、手を挙げて答えてくれた。
食堂を後にすると満腹感と酔いからか、強烈な眠気に襲われた。陽気な足取りで小屋に向かうと、メイド服を着用した女性型アンドロイドが出迎えてくれた。
「お疲れ様です、お部屋の準備は整いました。どうぞごゆっくりお寛ぎくださいませ」
「ありがとう」
小屋はそんなに窮屈な感じを与えないワンルームであった。預けた荷物は整頓されて籠にまとめられていた。
別室にはトイレやシャワーが備え付けられており、簡単な料理ならできる炊事場までもあった。
部屋の奥にはベッドは二つあり、白いシーツや布団が整えられていた。
私らは旅の装いを外してすぐにベッドに入り、明かりを消した。
ここ最近はずっと寝袋で野宿づくしだった。今日からは柔らかいベッドと太陽の匂いがする枕で寝られると思うと、嬉しい気持ちになった。
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