いつか君と青空の下で

ノベルバユーザー311087

第8話

「なんでそんな事言うんですか〜」
僕にに否定された千香さんが泣き声でうつむいていた僕の顔を覗いてくる。
ちょちょ、近いって!
僕はとっさに頭を振り上げて視線をずらす。
何でって普通長い話は嫌だし、短くて端折られ
「まあ何と言えど話は始めますけどね。」
「いや、いま俺の脳内音声タイムだから!てか人の話聞けや!」
千香さんが僕の脳内音声タイムをぶっちぎって話し始めようとする。
それに僕はうっかり思いっきりつっこんでしまった。
てかもう敬語面倒だしいっか。
敬語なしで行こう、ついでに僕はそんなことを思った。
「で?長くなるなら早めによろしく。」
僕は急かすような口調で言う。
「おっ、いいですねタメ口。 なんか吹っ切れました?」
千香がふふふんっと楽しげに言う。
「いや長いならはよして欲しいんやけど…。」
僕は言った。
しかし途中で千香がこちらと視線を合わせたことで声はフェードアウトしていった。
僕はもう学校の事など頭になかった。
いや、諦めていたというほうが正しいかもしれない。
暗闇に来た時点て手荷物が何もない時点で察していたが恐らくここはラノベで言う死んだあと行くあのあれだろう。
あれだよあれ、なんか駄女神とかと出会うところ。
ええとあのーあれ、やべ認知症みた…
「仕方ないですね。なるはやで説明してあげましょう。」
「ねぇだから脳内音声タイムだから! 邪魔せんでっていいよろうが!」
またもや邪魔をされて思わず博多弁になる。
僕の住んでいる地域は博多弁の本場からは離れているもののそこそこ博多弁の混じるような干渉地帯にある。
なので気をつけていないと博多弁になる。
博多弁はタメ口になってしまうのであまり好き好んではつかわまいと思ってはいるのだが…。
「まあまあ、そんなにおこらないでくださいよー。」
千香が苦笑いでこちらの顔を覗くように屈んで言う。
おっといけないまたした方向を見ていたようだ。
小さい時から人見知りで初対面だとなんか下を向きたがる癖がある。
僕は背筋を伸ばして千香の顔を見る。
「…」
「…」
「…」
「…」
「いやーそんなにジロジロ見られたら恥ずかしいですよー。
えっ?もしかしてなんかついてます?ねえ?ちょっとぉ。」
長い静寂を切り割いて千香がいう。
しかし僕はそれに対して何も答えず千香の口元をみていた。
まあ急にかおをジロジロ見られたら誰でも恥ずかしいだろう。
しかし先ほどから顔を覗いてくるのは千香の方なのだ。
よってただやり返しているだけなのである。
決して頬にご飯粒が付いていたから凝視したとかそういう事ではないのである。
そう決してそういう事ではない。
「いやなんでもない。あまり長くしないのなら説明してくれ。」
8時20分ーー。
僕は腕時計を見た。
薄々気づいていたがもう逃げたところで学校に遅刻するのは確定だろう。
諦めは大事だ。ゲーム漬けしたりして学んだ。
どんなにやり込んでも才能には勝てない時だってある。
特にゲームだと本当痛いほど痛感した。
よって諦めた。
たぶんこの娘は説明とやらが終わるまでは解放して…
「じゃあ説明しますねー。」
「てめぇだから脳内音声タイムに突っ込んでくんなや」
また邪魔された。
一体いつになったら学ぶのだろう。
そう思うとため息が漏れそうだった。「ええと、まず今の優さんの状態を話しますね。」
千香の説明とやらがはじまった。
「簡単に言うと ここは死後の世界だと思ってください。」
「ふぇ?ほえ?」
突然の爆弾だった。
驚きと戸惑いで変な言葉が漏れる。
まあ突然死後の世界だと思ってください。とか言われたら誰でもこのぐらい驚くとは思う。
しかしあまりに千香の顔が真顔なので吹き出しそうだったのは秘密だ。
ちゃんと聞いてください!とか言われそうだしな。
しかしおかしい話だ。
足元をみるとちゃんと足はあるし、手横に伸ばしてにぎにぎしても違和感は無い。
もっと言うとちゃんと感覚もある。
こんな風に柔らかい感触だって…。
「え?柔らかい?」
本能的な疑問を口に出してもう一度手をにぎにぎしてみる。
柔らかい…これってもしかして
「きゃゃゃぁぁぁぁぁぁあ!」
千香の叫び声が響く。
も、もしかして!
千香の…!
そう思い、期待と共に手を伸ばした先をみる。
ムニュン!
そんな効果音が聞こえた気がした。
おお これがうわさの…
僕の腕は確かにつかんでいた。


青色のスライムを。


「まったく、優さんは変態さんですね。一体何を期待してるんですか。」
千香は嘲笑しながら言う。
確かに変態については否定はしない。
手を横に伸ばしたのも下心が無かったかと言われると、胸を張って無かったという事はできない。
いや、むしろあった。
ろくに17年間も童貞貫いてねえからな。
誰でもあの柔らかい感触があれば期待の一つや二つはするだろう。
むしろしないのは失礼だろ!
自分に突っ込んで見たが勿論返答は無い。
しかし今のは不思議だった。
まず僕が手を伸ばした方向には千香がいたはずだ。
そもそもこの空間には僕と千香しかいなかったはずだ。
二つ目はスライムが胸の高さまで飛んでいる事だ。
スライムがどんな体質なのかは知らないが、あまりにも跳躍力が高すぎる。
そして、三つめは、


そもそも生命活動をしてるスライムとかいたっけ?


少なくとも僕は生命活動しているスライムなんてアニメの中でしか見た事が無い。
それも異世界物でしか見た事は無い。
ビチッ!
強く握りしめたせいかスライムが少し爆ぜるように一部が飛び散る。
「うえっ気持ち悪。」
服についたスライムの欠片を払いながら言う。
今もう一つ気づいた事がある。
大体の異世界物ではスライムは服を溶かす性質があるはずなのだが、このスライムは服などは溶かさないようだ。
もしくは、男には反応がないかのどちらかだろう。
少なくとも生命活動しているスライムなんてこの世界にいた事が驚きだ。
「まあ、今回は言及しないであげますよ。次やったら貴方の体に赤い液体は流れてないでしょうからね。大胆な行動は基本謹んでくださいね。」
千香が八重歯を光らせて舌で妖麗な唇を一周り舐める。
ひょぇぇぇえ!
この人怒らせたらやばい人だよ絶対。
マジ威圧感半端ないって。
「じゃあ、本題に戻りますか。」
千香はまた笑顔に戻って言う。
こいつの顔には仮面が付いてるんだろうか?
そう感じるような素早い切り替えだった。

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