気分は下剋上 肖像写真
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見慣れている光景なのにーーそして彼女も仕事中とはいえ、道具出しの職務は当然ながら手技が終了すればその時点で気を抜く、まあ自分は経験はないものの手術中にアラームが鳴り響いたとかだと手術室全体が騒然となるのは当たり前だーー気を抜いたというか「一仕事終えた安堵感」で手術室の中のことは余裕を持って見渡せるので、祐樹と自分のアイコンタクトなど見慣れ切った光景のハズだが。
ああ、手術室の無機質かつ余計なものは置いていないという空間とこの見事な骨董品の椅子、しかも白い薔薇の花で飾られたという点が女性の心にも響くのかも知れない。祐樹はよく久米先生のことを「女心が全く分かっていない」とか言っているが、自分だってそんな同類なのは知っている。ただ、祐樹の場合「貴方はそんなもの分からなくても良いのです。私に任せてください。その方が私も頼られている気がして大満足ですから」と言ってくれている。仕事面ではともかくプライベートでは保護者めいた気持ちまで含めて愛してくれているのを感じる。
それは椅子に飾られた白薔薇よりもピンクの薔薇のような色に心を染めてくれてとても嬉しかったが。
「あんなポーズで良いのですか?だったら、視線を合わせてついでに左手は肩から下に置いて、右手は教授の顎に手をかけて上を向かせるというアングルで大丈夫ですか?」
祐樹も幾分面白がっている感じの口調だった。どうせこの肖像写真は競り落とした人が門外不出にするモノだから間違っても病院上層部には漏洩しないという確信があるからだろう。
「ス・テ・キ!!田中先生、是非その線でお願いします」
柏木看護師の声が1オクターブ、いやもっとかも……上がっている。
プライベートではーーと言っても先日のサイン会だけしか知らないがーーこんな女性とは知らなかった。
手術室ナースの場合は冷静沈着に執刀医のペースに合わせてーーこれが意外と難しいーー指示される前に必要な道具を判断して燕のような感じで出すのが仕事だ。
だから、運動神経も優れていないといけないし、咄嗟の判断力も必要だった。
そういう冷静さと、そして執刀医の縁の下の力持ちというか「手術室での内助の功」的なポジションにずっと居てくれたので、こういう女女した面が有ったとは意外だった。
まあ、
ああ、手術室の無機質かつ余計なものは置いていないという空間とこの見事な骨董品の椅子、しかも白い薔薇の花で飾られたという点が女性の心にも響くのかも知れない。祐樹はよく久米先生のことを「女心が全く分かっていない」とか言っているが、自分だってそんな同類なのは知っている。ただ、祐樹の場合「貴方はそんなもの分からなくても良いのです。私に任せてください。その方が私も頼られている気がして大満足ですから」と言ってくれている。仕事面ではともかくプライベートでは保護者めいた気持ちまで含めて愛してくれているのを感じる。
それは椅子に飾られた白薔薇よりもピンクの薔薇のような色に心を染めてくれてとても嬉しかったが。
「あんなポーズで良いのですか?だったら、視線を合わせてついでに左手は肩から下に置いて、右手は教授の顎に手をかけて上を向かせるというアングルで大丈夫ですか?」
祐樹も幾分面白がっている感じの口調だった。どうせこの肖像写真は競り落とした人が門外不出にするモノだから間違っても病院上層部には漏洩しないという確信があるからだろう。
「ス・テ・キ!!田中先生、是非その線でお願いします」
柏木看護師の声が1オクターブ、いやもっとかも……上がっている。
プライベートではーーと言っても先日のサイン会だけしか知らないがーーこんな女性とは知らなかった。
手術室ナースの場合は冷静沈着に執刀医のペースに合わせてーーこれが意外と難しいーー指示される前に必要な道具を判断して燕のような感じで出すのが仕事だ。
だから、運動神経も優れていないといけないし、咄嗟の判断力も必要だった。
そういう冷静さと、そして執刀医の縁の下の力持ちというか「手術室での内助の功」的なポジションにずっと居てくれたので、こういう女女した面が有ったとは意外だった。
まあ、
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