気分は下剋上 肖像写真

こうやまみか

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「大丈夫です。画像加工アプリも入れて有りますので、肝心な目とかお顔の半分はハートで隠します。
 何ならウサギさんの耳とかも付けましょうか」
 柏木看護師はまんざら冗談というわけではなさそうな感じで言っている。
「いや、流石にそういうコスプレは止めて下さい。いい歳をして恥ずかしいので。
 ああいうのは女子高生がノリでするから可愛いのであって、男性二人がスーツ姿でしても全然愛らしくもなんともないです。
 そういえば、名誉棄損がどうとかおっしゃっていましたよね?それはどういう研修でしょうか?」
 ウサギさんの耳……そういうのが流行っていることすら知らなかったので実感は乏しかったが祐樹の慌て具合からすると相当恥ずかしいモノのようだ。
 そして、グループラインに目などの肝心なパーツを隠して投稿するとチラ見効果というかどうしても完全なモノが見たくなるという人間の心理を突いた良い作戦ではないかと思ってしまう。
 インターネットのニュース記事でもヘッドラインに惹かれて入って読んでいると「この先は有料記事で」という表示がされてつい買ってしまうのと同じ効果をもたらすような気がする。
「ああ、最近は有名どころではグルなびとか有りますよね。ご存知ですか?」
 そういうサイトに頼ったことはなかったが存在は知っていた。
 祐樹もウサギさんだかの話題から逸れたのを安心した感じが頭上から漂って来る。
「はい。そのサイトを使って予約したり、口コミのレビュー記事をお店選びの参考にしたりするらしいですね」
 スマホのように手軽に写真が撮れるわけではないらしく、フィルム(?)などを入れ替えたり照明の角度を調節したりしている写真館の店主兼カメラマンを眺めながらお喋りをしていた。柏木看護師は自分に「そこはかとない好意」を抱いてくれているのは何となく察していたので、祐樹に任せずに積極的に話そうと思った。彼女も貴重な時間を割いて来てくれた上に薔薇の花まで用意してくれたのだから。
「そういう口コミサイトがたくさん有って、病院のも有るのです。ただ、一部の患者さんて病気のせいかも知れませんが病院に対して理不尽な怒りを抱く人が一定数いらっしゃるのです。
 ウチのような大きな病院はそういうサイトに載っていませんが、街のクリニックならほぼ全て掲載されています。そこの口コミに『あそこの師長、点滴を失敗ばっかりしている。本当にナースなのか?」みたいな書き込みをされることも有って……」
 それは……

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