気分は下剋上 肖像写真
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「教授、田中先生、今日は宜しくお願い致します」
サイン会でも見たがバッチリとメイクをしているので、病院に居る時とは別人のような感じだった。
ここは写真館からほど近い「ハイアット・リージェンシー」の和のテイストに満ちた喫茶室だ。
シャネルのバックなどが好きな柏木看護師なだけに、メインの喫茶室を予約しようとしたら満席だったので仕方がない。
「いえ、こちらこそせっかくのお休みに御足労頂いて有り難うございます」
祐樹からは事前に「ふんだんに笑みを振りまいて下さいね」と言われていたし「貴方が話す方が彼女のテンションも上がると思うので、会話の主導権を握って下さい」とも言われていた。
以前と異なって、祐樹のリクエストの前者の方は大丈夫だろうという自信が有ったが、後者は全く自信はない。
そもそも先頭に立って言葉を発するということには慣れていない。病院では執刀医が手術前カンファレンスとか留意事項を先に伝えるのが病院の慣習なのでそちらは慣れているし、言うことは決まっている。
患者さんそれぞれに留意事項とか注意事項は存在する。その点を資料で配布しても、読み飛ばしたりうっかり忘れるということがないように念のためにもう一度確認するだけなので。
しかし、こういう場合は話題に困ってしまう。「大丈夫ですよ。貴方が話題に困っているとか、そもそも話題がないと眼差しで知らせて貰えば私が上手く話しの接ぎ穂を見つけてフォローしますので」と言われたのでその点は安心しているが。
「いえいえ。その点はご心配なく。それに良人に聞きましたけれど、何でも外科親睦会の会費集めに教授と田中先生のツーショットの写真を撮るとか。
そして、表には出回らないような『親密な』写真を任せて下さって有り難うございます。
腕によりをかけて、私の友達が10枚単位で買うような写真を撮ることが出来るように頑張ります!
それに教授の……いえ、教授と田中先生のお手伝いに呼び出して貰ってとても光栄です。
あ、私は『白玉入りぜんざい』とお抹茶でお願いします」
和服姿のウエイトレスさんが注文を取りに来たのでそう答えていた。
ちなみに自分の前には普通の「ぜんざい」とお抹茶が置いて有る。
祐樹はメニューをちらっと見て後に店員さんを見上げていた。
「この抹茶のかき氷って、スーパーなどで売っているグリーンティの粉末なのですか?それとも本式の抹茶の粉ですか?」
そういう質問はアルバイトらしい年恰好の女性には酷だと思っていたが、案の厨房まで引き返した彼女は小走りに戻ってきた。
「宇治のお抹茶の最高級品です。某茶道の家元も非常にお気に召している逸品で御座います」
鼻の周りにうっすらと汗をかいている女性はそれでも笑顔を絶やさないのはホテルの教育の賜物なのだろう。
すると。
サイン会でも見たがバッチリとメイクをしているので、病院に居る時とは別人のような感じだった。
ここは写真館からほど近い「ハイアット・リージェンシー」の和のテイストに満ちた喫茶室だ。
シャネルのバックなどが好きな柏木看護師なだけに、メインの喫茶室を予約しようとしたら満席だったので仕方がない。
「いえ、こちらこそせっかくのお休みに御足労頂いて有り難うございます」
祐樹からは事前に「ふんだんに笑みを振りまいて下さいね」と言われていたし「貴方が話す方が彼女のテンションも上がると思うので、会話の主導権を握って下さい」とも言われていた。
以前と異なって、祐樹のリクエストの前者の方は大丈夫だろうという自信が有ったが、後者は全く自信はない。
そもそも先頭に立って言葉を発するということには慣れていない。病院では執刀医が手術前カンファレンスとか留意事項を先に伝えるのが病院の慣習なのでそちらは慣れているし、言うことは決まっている。
患者さんそれぞれに留意事項とか注意事項は存在する。その点を資料で配布しても、読み飛ばしたりうっかり忘れるということがないように念のためにもう一度確認するだけなので。
しかし、こういう場合は話題に困ってしまう。「大丈夫ですよ。貴方が話題に困っているとか、そもそも話題がないと眼差しで知らせて貰えば私が上手く話しの接ぎ穂を見つけてフォローしますので」と言われたのでその点は安心しているが。
「いえいえ。その点はご心配なく。それに良人に聞きましたけれど、何でも外科親睦会の会費集めに教授と田中先生のツーショットの写真を撮るとか。
そして、表には出回らないような『親密な』写真を任せて下さって有り難うございます。
腕によりをかけて、私の友達が10枚単位で買うような写真を撮ることが出来るように頑張ります!
それに教授の……いえ、教授と田中先生のお手伝いに呼び出して貰ってとても光栄です。
あ、私は『白玉入りぜんざい』とお抹茶でお願いします」
和服姿のウエイトレスさんが注文を取りに来たのでそう答えていた。
ちなみに自分の前には普通の「ぜんざい」とお抹茶が置いて有る。
祐樹はメニューをちらっと見て後に店員さんを見上げていた。
「この抹茶のかき氷って、スーパーなどで売っているグリーンティの粉末なのですか?それとも本式の抹茶の粉ですか?」
そういう質問はアルバイトらしい年恰好の女性には酷だと思っていたが、案の厨房まで引き返した彼女は小走りに戻ってきた。
「宇治のお抹茶の最高級品です。某茶道の家元も非常にお気に召している逸品で御座います」
鼻の周りにうっすらと汗をかいている女性はそれでも笑顔を絶やさないのはホテルの教育の賜物なのだろう。
すると。
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