気分は下剋上 肖像写真

こうやまみか

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「何でもそのアイドルグルーブの宿泊階は大体分かるらしいのです。
 ほら、大阪のリッツの場合、クラブフロアはカードキーを差し込まないとエレベーターが停まらないでしょう。ああいう感じになっているのだと思いますが。
 しかし、リッツの場合だってクラブフロアは確か三階分ほど有りましたよね。
 仮に、なのですが、私達がリッツのクラブフロアに予約を入れたとしてもどの階の部屋になるかは私たちも分からないでしょう、実際に行ってみないことには。
 それと同じようなことがアイドルグループにも起こるらしいのです。で、同じホテルというだけでは飽き足らないファンの女性は泊まりそうな全部の階に一部屋づつ予約を入れるのだそうです。
 そして、お気に入りのアイドルが実際に泊まる階の部屋は使って、後はキャンセルするらしいです……」
 信じられない行動とかお金の使い方だが祐樹が言うので本当に存在するのだろう。ファンというのはそこまでするのか……と心の底から驚いてしまった。
「え?しかし、キャンセル料が掛かるだろう?当日キャンセルなのだから確か100%」
 ホテルにしてみれば、その部屋が使われる前提で空けて待っているのだから使われないとーーホテルだって商売だーー損失となるので、キャンセル料を取る。
 ちなみに祐樹とデートで行く大阪のリッツの場合、既に常連客として認識されている上に、チャックインの時間が観光客と異なって夜になることも多い。仕事を終えて行くのだから当然なのだが。
 そういう場合、ホテル側のサービスとして客室のアップグレードがあったりもする。それは部屋を空けておくのが勿体ないので、良く利用するゲストに少しでも快適に過ごしてもらおうという親切心だろうと解釈している。
「キャンセル料も当然払うのだそうです。だから普通の旅行とか、私達のデートみたいに部屋は一室ではないのでその分お金が余分に掛かります」
 そんな人が一定数居ることも驚いたが、ふと疑問が出てきた。
「何階に泊まるかは、予め分からないわけだろう?そのアイドルの人でさえ。だったら、ファンの人はなおさらに知らないのに、どうやって階が分かるのだ?」
 祐樹も呆れたような表情を浮かべて肩を竦めた。
「それが、また物凄いというかすさまじいというか……こうなったらほとんど執念とでも言うしかないですね……。
 コンサート会場の駐車場というのが有るらしいです。関係者のみ使用可とか書いている場所らしいのですが」
 ファンの女性は関係者とは見做されないのでは?と思いつつ祐樹の唇を見詰めた。
 すると。

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