気分は下剋上 肖像写真

こうやまみか

55

 好きなモノにお金を使う気持ちはよく分かる。
 自分の場合は極論を言えばお金で買えない祐樹しか欲しくないし、一目惚れしてからずっとそうだったし、祐樹が自分と同じ性的嗜好を持っていたことが分かってからはその思いが募っていった。
 ただ、当たり前だが恋愛は「同様の嗜好」だけで成立するとは思っていなかった。圧倒的多数の異性愛者でも恋が成就せずに悲しむ歌などは星の数ほどあることも知っていた。
 もし、神様の悪戯イタズラなどの奇跡が起こって、祐樹の心がお金で買えるとしたら迷わずに全財産を投じるだろうとも思った。アメリカ時代に築いた資産全部と引き換えに祐樹の愛情が手に入るならば。
 それに、チケット代100万円というのは物凄く高すぎるような気がしたが、それは好き好きだと思う。
 長岡先生が大好きなブランド――自分も同じブランドを愛用しているが、店舗を色々回るのが面倒だという理由が大きい。それとそのブランドは大きなロゴマークなどで主張する物が少ない商品展開しているので、見る人が見れば分かるという程度なので知らない人には単なる質の良いスーツやネクタイにしか見えない。
 ただ、長岡先生が――具体的に何個持っているかは知らないが、記憶している限り23個有った――ご愛用のバックはブランド好きの人が見れば直ぐに分かるし、実際ナース達の憧れの的になっていることも漏れ聞こえてきている。そのバック一個が税別で100万円程度なので、それを高いと思って敬遠する人も居れば、何を置いても買いたいと思う人が居ることも知っている。
 だからお気に入りのアイドルのコンサートに100万円を使うのは自由と言えばそうだろう。
「しかし、そういう大金をどうやって作るのだ?皆が皆、長岡先生みたいに実家も、そして婚約者もお金持ちという人は限られてくると思うのだが」
 祐樹が苦々しそうな笑みを浮かべていた。
「ああいうアイドルに熱を上げるのは若い女性が多いですよね。もちろん、実家がお金持ちで、しかもお母様が同じアイドルにハマっているという、ある意味運の良い女性は存在するようですが、そんな人は稀みたいで……水商売とか風俗とかパパ活で荒稼ぎをする人が多いようですね……」
 風俗は大体分かる。具体的にはどんなことをするのか興味もないので詳しくは知らないがお金が儲かる仕事だということは知っていた。
 ただ、性病などのリスクは極めて高い上に、厚労省の試算によると麻薬に手を染めている人のパーセンテージが突出して高かった。覚せい剤を一度摂取してしまうと依存が生まれて知らず知らずのうちに心も身体もボロボロになってしまう。
 そして。
 

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く