気分は下剋上 肖像写真

こうやまみか

50

 他の誰でもない祐樹が言うのだから、長岡先生も自分のことをそう評価してくれているのだろう。
 また、久米先生のデートとか交際全般について、祐樹はもちろんのこと柏木先生が頭を悩ませていることも良く分かった。
 ただ、自分の場合デートは祐樹が誘ってくれる場所しか行ったことがないので――その場所全てが綺麗だったし、その場所で祐樹と過ごした時間は自分にとっては宝石のように貴重かつ素晴らしい記憶ばかりなのはとても幸せなことなので不平不満などあるわけもないが――久米先生にアドバイス出来ない。まあ、研修医の久米先生と親しく言葉を交わす機会もないが。
 その点、祐樹は研修医時代から自分にずっと関わり続けてくれていた。
 当時は祐樹と深い仲になれたという、帰国する前には予想だにしなかったことで頭がいっぱいになって祐樹の言動に振り回されているだけだったが。今となっては祐樹の行動力とか肝の大きさというか大胆さは嬉しい限りだった。
「まあ、久米先生の件で私が力になれることが有ったら……そんなに無いとは思うが……。
 その時は遠慮なく言ってくれ。
 今日の『直訴状』のように大袈裟なモノは要らないので……」
 あの時は何が起こったのかと半ば呆然としてしまった。まあ、医局に居る皆の顔が笑いをこらえている感じだったので、お遊び半分だということが分かって、心の余裕めいたものが生まれていたのも事実だったが。
「そうします。ご両親にもお付き合いのことは相談したいとか言っていますので――私などは……まあ、物理的に紹介が不可能だったということもありますが。ただ、貴方だけは絶対に会せないとならないなとは思っていましたけれど、それは会わせるのに値する価値が充分以上にありましたので――ひと悶着は有ると思います。そういう事態になったらお願いするかも知れません。
 ところで、写真の撮影なのですが、やはりスーツ姿の方が映えますよね。
 予約した日には何を着ましょうか?」
 祐樹の唇に暖かい笑みが浮かんでいる。皮肉な感じに口角を上げる――と言っても自分には決して向けられなかったが――表情も物凄く好きで、いつも惚れ惚れと眺めてしまっているが、暖炉の暖かさに似た笑みも大好きだった。
「サービスショットも有るのだろう?柏木看護師の友達などを対象とした?」
 自分達の何がそこまで多数の女性を喜ばせるのかは分からないものの、そういう彼女たちの需要を満たす方が収益も高いらしい。
 だとすると。

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品