ディフェレアル(仮)

結愛銘友

始動《キャラメイク》-04

「さて、それじゃあ外に出ようか。」


 リドウィンがいきなり爆弾発言をしてきた。外ってことだから当然モンスターとかがいるわけだろ、と俺は言う。
 するとリドウィンが不思議な顔をして言ってきた。


「え?さっき《ウィンド・バレット》発動の前に言ったじゃん、それで結局得意属性見つけようって私が言って」


 そうだった。すっかり忘れていた。
 リドウィンが続ける。


「なんでか知らないけどキミ、素直に受け取ってなんの疑念も無く《ウィンド・バレット》を発動しようとしたんだよね」


 ——そういえば確かにそうだったな。色々記憶がおかしくなっている。正確な判断が出来なくなっているのもおかしいな・・・・・・


「まあ、この世界——キミから言うと異世界げんじつか——に来て間もないんだし、順応するまでこういうこともあるよ。さ、それじゃあ行こうか。」


 確かにこの異世界げんじつに来て間もない。リドウィンの言う通りこういうこともあるだろう。




 それはそれとしてやっぱり行くのか。






 拠点中央の王宮から、拠点に入ってきた——灯火ともしび碧場へきじょうと言うらしいーー広場近くの駅へ移動する。因みに移動費は再びリドウィンに出してもらった。
 なんだか知らないけどジト目で見られた。なにも悪いことはしてないはずなのに謎だ。心当たりもない。断じてない。


 そこからまた灯火の碧場まで移動する。灯火の碧場は相変わらず緑の芝で覆われている。しかし、先ほど見たときとはなにか違和感がある。なにかが違う。
 その場で立ち止まってその碧に染まった広場を見つめる。何だ。何が違うんだ?——なにかこれはとても大切な違和感のような予感がする。あくまで予感の段階だが・・・・・・いまここで見過ごすと後で後悔するような——


「どうしたの?」


 俺が止まってしまったのに気づかずに先に行ったリドウィンが俺に声を掛けてきた。


「いや、なんでもない。」


 違和感の存在を探しながら俺はリドウィンに返事をし、碧色の広場を後にした。




 石壁の外に出るといきなり草原が広がっているわけではない。さすがにそんなファンタジーではない。外で戦っている人はいるんだから、ちゃんとテントだったり売店だったりと多少の設備は整っている。もちろん外に離れれば離れるほどそういう設備もまばらになってくるが。


 そして俺達が来たのはそこからちょっと西——灯火の碧場を南、王宮を中央として見て西側——にある小さい森。


「リドウィンさん、ここで戦闘エンカウントするんですか?」
「はい、そうです。というか、エンカウントというよりは私が呼び寄せるような感じなのでどっちかというとトレインですかね。」


 マナー違反だと思います。


「い、いや・・・・・・トレインっていってもそんなに呼び寄せないし・・・・・・MPKするつもりないから・・・・・・」
「あ、うん、ネタです」
「あ、ごめんなさい」


 なんなんだこのたどたどしい会話は。コミュ障かよ俺ら。


「そ、それはそうと」


 リドウィンが言う。


「もう呼び寄せていいかな?」
「ああ、いいよ」
 と俺が答える。


 するとリドウィンはなにかをポケットから出して天高く掲げた。そして、


「神聖なる煙よ!我らに天恵の加護を与え、我の思いの通りに——《怪呼かいこ》」


 といい、その持っていたもの——黄土色の筒のように見えた——を、森に放り投げた。




 すると、なにか白く、少し横に長めな楕円形のモンスターが出てきた。手は付いているが足はついておらず、移動もちょっとずつしかできないようだ。よく見ると頭(?)の右上になにか人のようなものが座っている。茶髪で目から光が消えていてなんともいえないような顔をしている。


「・・・・・・なにこのモンスター。」


 思わず俺はリドウィンに質問してしまった。


「いやまぁ、変なやつだけど・・・・・・名前は《ペペィト》って言うんだよねー」
「へ、へぇ、そうなのか・・・・・・」


 なんか見てるとかわいいなこいつ。座ってる人もなんかじわじわくる。


「さて、《ファイア・ランス》だけど、大丈夫かな?」


 リドウィンが聞いてきた。そういえば《ファイア・ランス》発動で来てたんだ。
 俺は答える。
「大丈夫、準備OKだ。」


「では・・・・・・」


 リドウィンが口を開く。
 俺は目を閉じてイメージする。


「炎。燃えさかる炎をイメージして。その業火は勢いを増しながら槍の形になっていく・・・・・・」


「——【発動】」


 ピュウン!


 聞いたことのある音がした。


「あー、駄目か・・・・・・」


 リドウィンが落ち込んだ声で言う。ペペィトは元気だ(と思う)。


「しょうがない、中級魔法は無理っぽいね・・・・・・」


 そう言いながらリドウィンは火球を手から出して慈悲の欠片もなくペペィトを屠った。




 燃えていくとき、ペペィトが悲しい目でこっちを見つめてたのは気のせいだろうか。

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く