ディフェレアル(仮)

結愛銘友

始動前《ローディング》-07

  飛行装置ーー《スマロート》に不備はなかったらしく、ウィンドウを閉じてフェザルに向き直る。


「終わりました。特に問題ありません。」
「ありがとう。助かるよ。」


 そう言って部屋を出て行く。俺も続いて部屋を出ると、先程のガラス張りの部屋に窓から外を眺める人がいた。年齢は30代か。背の高い女性で、ワインレッドの髪を長く伸ばしている。黒いワンピースに白のネックレス、赤いハイヒール。随分と派手な装いだ。
 俺に気づくと、話しかけてきた。


「……。君、誰?」
「ああ、えっと……リドウィンにここまで連れてきてもらったんですけど……」
「リドウィン……ああ、彼女か。お疲れ様。疲れたでしょ」
「いえ、そうでもないですよ。」


 親切そうな人で安心した。


「見た感じ、人類妖精合同総合拠点初めてだね。なんか質問あったら言ってね。答えられるものは答えるよ。答えられないものは・・・・・・嘘でもつくかな。」


 というのでお言葉に甘えて質問する。
「あなたも・・・・・・戦ってるんですか?」
「ああ、そうだよ。普段はそんなに闘わないけど、たまに前線に出るんだよ。」
「そうなんですか・・・・・・ちなみに、どんな戦い方をするんですか?私は・・・・・・そうだな、君に分かるようにいうと魔法戦士マジックナイトと言ったところかな。」


 おお。魔法戦士マジックナイトなんて俺がゲームでよく使う職業ジョブじゃないか。


「あっはは、そうか、強いもんな。」


 やっぱりみんな戦ってるんだな・・・・・・。俺もこの世界で生きていくには戦った方が良いのか・・・・・・?


『キミをこの世界に誘うため。』
『・・・・・・今、この世界では戦争が起こっている。』


 訂正しよう。
 “戦った方が良い”ではなく、“戦わなければならない”のだ。俺はホールに点々と置いてある柔らかい椅子の一つに腰かけ、リドウィンからもらっていた紅い表紙の分厚い本のページをめくる。目次だけで7ページほどある。目次を読み飛ばし、一番最初の、恐らく魔法の超基本的なことが載っているであろうページを開く。


『この世界における魔法というのは、体内で魔力を加工し、それを体外に形を変えて放出する、というのが簡単な理論だ。強力な上級魔法などになると複雑になるが、それはここでは省略する。魔力の加工と放出の例を挙げると、《ファイア・ランス》が分かりやすい例の一つであるだろう。《ファイア・ランス》は、体の中で魔力を炎属性に加工し、それを体外へ槍の形として放出する。それで《ファイア・ランス》の発動となる。』


 なんだか特訓が必要そうな内容だ。確かに俺は《ファイア・ランス》と言われれば想像が可能だ。燃えさかる炎の槍。イメージがとっても湧く。俺も魔法使えるんじゃね、と思ってきたとき、リドウィンがこちらに来た。フェザルも一緒だ。


「あ、その本読んでくれてるんだ。」
「ああ、ちょっと勉強しとこうと思ってな・・・・・・なんか《ファイア・ランス》って言われてイメージがすごい湧くんだけどこれ俺も魔法使えんじゃね?」
「今は無理だねー」
「(   ´・ω・`)」


 思わずしょぼん化してしまった(精神的に)。顔にもすごい出てたと思う。たぶん。


「えーっとね、キミも思ってると思うんだけど、特訓が必要なんだよ。」
「ですよねー・・・・・・」
「まぁ、誰も急に使える人なんて居ないからね、ゆっくりやればいいよ」


 リドウィン優しいなぁ。


 ところで気になったんだけどこの世界に職業ってあるの?


「この世界にはーー」
 フェザルが話す。


「【職業】と【クラススキル】があり、それとこれとでは違う。君が想像している【職業】とこの世界の【職業】とは違うと思う。ーー説明が必要かい?」
「あ、ああ、お願いします。」
「分かった。ーーこの世界に置ける【職業】は、普通に地球の職業の制度と同じだ。君たちが訪れた役場の受付のお姉さんも、駅員も、清掃員も、それらは【職業】だ。次に【クラススキル】だが、【クラススキル】は君が想像しているファンタジー世界の【職業】で間違いないだろう。《騎士ナイト》や《魔道士キャスター》、《僧侶プリースト》、《魔法戦士マジックナイト》などと言ったところだ。彼等のような【クラススキル】の保持者は、そのクラスの固有スキルを使用することができる。【クラススキル】は天性の才能などではなく、ちゃんと努力すれば誰でも取得できるものだ。もっとも、適正値があるので取得のしやすさは別だが。」
「ありがとうございます、丁寧に」
「いや、なんてことない」


 そうか、【職業】は普通に【職業】なんだな。【クラススキル】はーー


「だがな・・・・・・」
「?」


 フェザルが続ける。
「【職業】と【クラススキル】は完全に無関係というわけでもないんだよ」


 なに・・・・・・?


「特定の【職業】についていることによって取得できる【クラススキル】もあるからな・・・・・・」
「例えば・・・・・・?」
「例えば《鍛冶》とかかな。鍛冶屋を営んでいないと取得できないんだ。だから・・・・・・《騎士》などの戦闘職が生産系スキルを取得するのは困難を極める。まぁ、《鍛冶》なら鍛冶屋を以前営んでいた、というなら自分で武器の生産は可能だ。」


 そうなのか。ここは地球のはずなのになんか【クラススキル】とかがあるんだな。違和感極まりないが、もうこれは異世界げんじつで確定だろう。




 さて、俺は考えたら行動するタイプの人間だ。異世界げんじつに来た以上、そして戦争が行われている以上、俺は「戦う」という「目標」ーーもとい「義務」を果たす。なんもしてないと暇だしな。




 まずは魔法の特訓でもしてみるか。

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