劣戦火に寄るエルケレス

蓬莱の人

第二十一話『契約書』①

 ヴァッケン村長の口角が上がる。


 「そうでしたかぁ、それでは『私』が読ませて頂きます」


 半ば強引に契約書を取る。


 「えー、おっほん、この契約書は契約した際にはヒゴ村での永住権を獲得します、獲得した際には食料と金銭を月に1回の補充を必ず守らせて頂きます。此方から寄付させて頂く住宅は後程ご覧になる事ができます...と、この様な内容となっています」


 内容の書かれた紙を裏にし、机に伏せて置いた。


 「良いことばかりだな」


 そう言ったシエルダは、身を乗りだし裏返された紙を表向きにおき直す。


 「暫くこの村にいる、その間に検討しておくよ」


 シエルダが立ちあがるとキリカも立ち上がり、その部屋を後にした。

チッ――。


 「シエルダさん、さっきの村長が提示してきた契約書って...」


 「あぁ、信じてはいないさ、あんな怪しい動きをされたら誰だって契約はしない、あれには読まれたくはない内容が書かれているんだろう」


 「なら、さっきの字が読めないって言うのも...」


 言葉に割り込む様にシエルダが答える。


 「それは本当だ、全く読めない」


 その言葉を聞いたキリカは、本当だったんですね、と言い苦笑いをした。


 「それよりもだ、伏せたのは何の為だと思う?」


 屋敷玄関のノブに手を掛け、シエルダは外へと続く扉を開く。

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