劣戦火に寄るエルケレス
第八話『刻印』
馬が緑色の草が僅かに茂る大地を駆ける。タカタカと蹄の音が鳴り響く。道中、森の側を通ることとなるのだが、何てことない、ただの森だ。何か起きるなどと想定できる訳もなく...それは突然起きた。
バスッ
馬が悲鳴を上げ、足から崩れ落ちる。
ガシャンッ
シエルダとキリカが馬の背から投げ出され、地面に叩きつけられる。すぐに足を引摺りキリカは真っ先に倒れた馬に駆け寄り、倒れた原因となる矢を見つめた。深々と馬の右前足に矢が刺さり、出血している、キリカだってかなり強く打ち付けられた筈だと言うのに馬の心配をするのか。
焦るキリカを見ていると居ても立ってもいられなくなり、立ち上りその矢が飛んできた森の方へ向く。
さっきの矢を放つ音はむこう側からか。
「キリカ、此処で待ってるんだ」
「何処に行くんですか、一人でなんて無茶ですよ!これは、きっと盗賊の手口です」
「その足じゃどのみち、逃げるのは無理だろう」
キリカの足を見る。青く腫れ上がり、それは強く打ち付けられた証拠だとわかる程に。シエルダの剣を包む柑橘類の香りがする袋はシエルダ自身の手により地面に落とされ、血に染まった剣の刃が露となった。
「すぐに戻ってくる」
森の方向を睨みながら、臆することなく足を進めて行く。キリカは森に消えてくその姿を、見ていることしかできなかった。
木々の隙間を歩きながら、道なき道を行く、まだ見えぬ敵を睨みながら。足元の土は僅かに乾き小石かと思うようなものが、靴底で簡単に割れる。
「そこで止まりな」
野太い男の声がした、しかし実際に目の前に出てきたのは、緑色の肌を持つ同じ身長ほどのゴブリンだった。
右手には弓を持っているところから、こいつが矢を撃ったことに間違いは無いだろうと確信する。
「お前だな、矢を撃ったのは」
「そうだ、狙いは正確だっただろう?」
ケタケタと嗤う姿にシエルダの目付きは更に鋭くなり、歯を僅かに食い縛る。
「おとなしく、身ぐるみ全部差し出した方がいいぜ」
背後から少し低いくらいの、三匹のゴブリンが現れ、前方の弓を持つゴブリンの背後からもう二匹の同じ位のゴブリンが現れた。それぞれは、こん棒を片手に持っており、この囲まれた状況では負けてしまうだろう。
しかし、シエルダはその考えよりも、ゴブリンの顔を見た時から『こいつは殺さなければならない』と言う考えが頭を過っていた。
「お前達、此処でいつも狙っているのか」
「楽しいぜ、ここを通り過ぎようとする人間の物は全部俺たちの物だ、お前ら見たいな都合の良い奴等が通るのを待ってたんだ」
「そうか、なら残念だったな、俺から渡せるのは1つだけだよ」
足は再び走り出す、それも弓を持つゴブリン目掛けて一目散に。肉の断ち切れる音と共にゴブリンの断末魔が聞こえた。
「なっ?!クソがっ!」
同時にゴブリンはこん棒を横から振り回す。倒れたゴブリンの胸ぐらを左手で掴み、体を翻しながら持ち上げると棍棒は倒れたゴブリンの顔面に直撃した。
「うぶぇぐっ」
棍棒を振りかざした一匹のゴブリンを見るなり、胴体を真横に斬る――
「熱っ!?」
僅かな瞬間であった。肉が断ち切れた瞬間、手の平がまるで焼けるように熱くなるのを感じて、手の平を見るとそこには見た事もない『刻印』が刻まれ赤く煮えたぎっていた。
バスッ
馬が悲鳴を上げ、足から崩れ落ちる。
ガシャンッ
シエルダとキリカが馬の背から投げ出され、地面に叩きつけられる。すぐに足を引摺りキリカは真っ先に倒れた馬に駆け寄り、倒れた原因となる矢を見つめた。深々と馬の右前足に矢が刺さり、出血している、キリカだってかなり強く打ち付けられた筈だと言うのに馬の心配をするのか。
焦るキリカを見ていると居ても立ってもいられなくなり、立ち上りその矢が飛んできた森の方へ向く。
さっきの矢を放つ音はむこう側からか。
「キリカ、此処で待ってるんだ」
「何処に行くんですか、一人でなんて無茶ですよ!これは、きっと盗賊の手口です」
「その足じゃどのみち、逃げるのは無理だろう」
キリカの足を見る。青く腫れ上がり、それは強く打ち付けられた証拠だとわかる程に。シエルダの剣を包む柑橘類の香りがする袋はシエルダ自身の手により地面に落とされ、血に染まった剣の刃が露となった。
「すぐに戻ってくる」
森の方向を睨みながら、臆することなく足を進めて行く。キリカは森に消えてくその姿を、見ていることしかできなかった。
木々の隙間を歩きながら、道なき道を行く、まだ見えぬ敵を睨みながら。足元の土は僅かに乾き小石かと思うようなものが、靴底で簡単に割れる。
「そこで止まりな」
野太い男の声がした、しかし実際に目の前に出てきたのは、緑色の肌を持つ同じ身長ほどのゴブリンだった。
右手には弓を持っているところから、こいつが矢を撃ったことに間違いは無いだろうと確信する。
「お前だな、矢を撃ったのは」
「そうだ、狙いは正確だっただろう?」
ケタケタと嗤う姿にシエルダの目付きは更に鋭くなり、歯を僅かに食い縛る。
「おとなしく、身ぐるみ全部差し出した方がいいぜ」
背後から少し低いくらいの、三匹のゴブリンが現れ、前方の弓を持つゴブリンの背後からもう二匹の同じ位のゴブリンが現れた。それぞれは、こん棒を片手に持っており、この囲まれた状況では負けてしまうだろう。
しかし、シエルダはその考えよりも、ゴブリンの顔を見た時から『こいつは殺さなければならない』と言う考えが頭を過っていた。
「お前達、此処でいつも狙っているのか」
「楽しいぜ、ここを通り過ぎようとする人間の物は全部俺たちの物だ、お前ら見たいな都合の良い奴等が通るのを待ってたんだ」
「そうか、なら残念だったな、俺から渡せるのは1つだけだよ」
足は再び走り出す、それも弓を持つゴブリン目掛けて一目散に。肉の断ち切れる音と共にゴブリンの断末魔が聞こえた。
「なっ?!クソがっ!」
同時にゴブリンはこん棒を横から振り回す。倒れたゴブリンの胸ぐらを左手で掴み、体を翻しながら持ち上げると棍棒は倒れたゴブリンの顔面に直撃した。
「うぶぇぐっ」
棍棒を振りかざした一匹のゴブリンを見るなり、胴体を真横に斬る――
「熱っ!?」
僅かな瞬間であった。肉が断ち切れた瞬間、手の平がまるで焼けるように熱くなるのを感じて、手の平を見るとそこには見た事もない『刻印』が刻まれ赤く煮えたぎっていた。
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