劣戦火に寄るエルケレス

蓬莱の人

第六話『目的地』

 店に足を踏み入れる。パイの香りが店の中に漂よっていた、木造の古めかしいその店には五つの丸机の周囲には6つの木製の椅子が並べられていた、他の椅子と比べると大きさと形がほんの数ミリではあったが、僅かに違う手作り感漂うその椅子には数人の人が腰かけていた。


 「ご注文はお決まりでしょうか」


 椅子に腰かけメニューを眺めていると店の人が来た。アップルパイを1つ、キリカは既に決まっていた様で、真っ先に答える。パイは1つ頼んで分けるのでシエルダは珈琲を注文した。

 店の人がメモを取り終えるとカウンターへと行き、幾つも重なり束になっていたメモをカウンターに置いているのが見えた。


 「シエルダさんはこう言う所に来るのは初めてですか?」


 「俺のいた村にはこんな店は1つも無かったからな、見る機会も無かったよ」


 「村から出たことは無いんですか?」


 「人の足で外に出るには他の村はあまりにも遠いからね」


 ははは、と苦笑いしながら話を進める。


 「それに他の村から何かを運ぶこともとても少なかったからね」


 「確かにあの村は、地図にも載っていませんでしたから」


 「地図に載ってない?」


 お待たせいたしました。コトリと音をたてて机に置かれる、珈琲の入った白いカップ。黒い水面が揺れて波紋を描くえがくカップの取っ手を手に取り一口珈琲を流し込むと机の上に再び置く。

確かに外から来る人は少なかった。だが、まさか地図に載っていないなんて事があるのか?だが、地図に載っていないのなら、人が来ないのは納得だ。


 「まぁ、外から来た人との交流なんて少なかったからな」


 切り分けられたパイが6つ、円形にならんで運ばれてきた、白い皿二枚と円形に並べられたアップルパイが置かれる。


 「どうぞ」


 アップルパイをひときれ、白い皿に盛り付けられ目の前に出される。フォークを手に取り食べやすい大きさに切り分けた。


 「そうだ、俺は村の外はよくは知らないんだ、大きな国でモンスターについての情報が欲しいんだが、何か知ってるか?」


 「大きな国ですか、一応はありますが...ここ数年の間で近くの国はとても仲が悪くなり、戦争を繰返し行っている所もあるのですが......」


 「なんで戦争が?」


 「私も詳しくは知らないんですが、土地の奪い合い...だそうです」


 そんなものだろうな、とシエルダは自分の中で納得して再びキリカに、国に近い安全な村や他の国は無いのかと聞く。


 「それならゴニ国が南西にありますよ、此処から少し先に道中にヒゴと言う村もあります、そこでも情報が得られるかもしれませんね」


 「初めの目的地はヒゴだな」

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