理想の社会を異世界で!

ノベルバユーザー318599

1話 始まりは唐突に

世の中、騙される方が悪いというのをよく聞くようになった。もちろん騙す方が悪いだろとは思うが、騙したやつを特定することは難しく、警察などは証拠がないと動かない。また騙されたからといって、暴力で解決しようものなら警察に捕まってしまう。これでは騙された側はどうしようもなくなってしまう。しかし、自分には縁のない話だと思って、深く考えたことはなかった。これから先に騙されることがあるとも知らずに...。











「最近詐欺とかのニュース多いよなぁ。」

そう呟くのは同じ会社の同僚の泉啓太だ。彼は人当たりがよく、社内でも信頼の厚い人物で、現在4年目で俺の同期のIT戦士だ。

「全くだ。あんまり自分には関係ないから正直どうでもいいといえばそれまでだが、ひどい世の中になったもんだな。」

こう語るのは、朝川信次、この俺だ。
こんな会話を昼休みにするくらいには世の中ひどくなってるってことだな。

「そんなこと言ってる人が1番危ないんだぞぉ?」

そうやって可愛く話しかけてきたのが、1つ年上の先輩で水無瀬朱里という。そして、俺の彼女だ!
笑顔が多く、いつも明るく優しい。長身長髪のなかなかの美人さんだ。何故そんな美人と付き合えたかって?そりゃもちろん、実力ってやつかな?はっはっは。

「はいはい、気を付けますよ。朱里ちゃん。」
「こらっ、会社じゃ水無瀬先輩でしょ。」


そんなこんなで、休みも終わり仕事に取りかかる。この業界は残業が多く、この日も残業することが確定していた。泉や朱里が帰っていくのを見送り、黙々と作業を進める。
資料作りが終了し、駅に向かう。その途中でいつもは通らない道を、気分のままに選んでみた。本当に何気なく取った行動だった。


いつもと違う帰り道は新鮮で、暗いながらも少しテンションが上がっていた。だが、いつも通らないために、知らなかった。ここがそういうところだとは。そうラブホ街だったのだ。気恥ずかしくなった俺は急いで道を変えようとしたが、遠くのホテルから出てきた2人を見て驚いた。
なんと泉と朱里がホテルから出てきたのだ。もはや何が起こっているのかわからない。冷静さを欠いたまま、走り出した。

「なんで、お前らが一緒に出てくるんだよ!おかしいだろ!ずっと浮気してたってのか!」

「ありゃ、信次か。まぁバレちまったら仕方ねぇ。その通りだ。会社で楽しそうに話してて、笑っちまいそうでずいぶん我慢してたんだぜ?」

「なんで、なんでこんなことを...。」

「あら、だって信次くんが残業ばかりで相手してくれないからじゃない。いつもいつも仕事仕事って、そしたら泉くんが寂しいですよね。って声かけてくれたのよ?まぁでも社内恋愛してて別れたら周りに余計な気を遣わせるじゃない?だから隠してたってこと。だから会社ではいつも通りに過ごしてね。じゃあね。さよなら。」

そう言うととりつく島もなく2人は去っていった。どうしようもない消失感の中帰っていると、信号が赤なのに気づかずに歩き続けていた。クラクションが鳴り響くが、結果は変わらない。この時、1人の人間がこの世を去った。

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