九尾の妖狐は学生と洋食が好き

ルルザムート

第3話 父と娘 part2

ガイモの屋敷 廊下


執事長「あの…」
特に悪いわけでもないのに申し訳なさそうな顔で僕らの顔を見る執事長…そしてそれを無視して口論する僕とご主人

神楽「どうして生徒さんに説明しなかったんですか!」
神奈「戻ってから説明するつもりじゃったんじゃ!先に説明してもし儂らが戻れなかったら悲しませるだけじゃろう!」
執事長「どうか落ち着いてください」

神楽「巻き込まれるよりいいじゃないですか!大体大富豪の娘さんなら追いかけてくる力があるとは考えなかったんですか!?」
神奈「地球を半周してまで追いかけてくるなど誰が予想できるんじゃ!」
神奈&神楽「はぁ…はぁ…」
息が切れ、僕もご主人も一旦口が止まる…そして息をすぐに整え、口論2回目になろうとしたところで執事長が口を挟んだ

執事長「どうか落ち着いてください。無礼を承知で申し上げますがお二人がここで口論しても時間の無駄かと思われます」
神楽「そ、そうですね、すみません…」
執事長の言葉で僕の頭は冷えた、がーーー

神奈「儂のせいで…っ」バッ
神楽「ご主人!?」
ご主人は冷静さを欠いたままだった、僕が止める間も無く窓から屋敷の外へ飛び出して行った
執事長「神奈様!」
…どうしよう


2012年 9月21日 17時00分
市街地
(日本時刻 9月22日 6時00分)


神奈「くっ…」
迂闊じゃった、まさか追いかけてくるとは!あの時はっきり『来るな』と言っておけば…
地図を頼りに空港方面へ走る

神奈「ここまで早く来ているということはおそらく井上の自家用機じゃろうな…」
もしそうなら待機しているであろう飛行機の操縦士に儂の名前を言うのが1番早い、お忍びと言っておったがいくら井上でも誰の協力も得ずに来れるはずが無い…ん!

ある程度走ったところで空港が見え始めたが…
神奈「随分と警察が多い…」
それに加えて大きな機械を肩に乗せた人間やその正面で棒状の…機械?を持って喋っている人間もいる
たしかこのような人間を…取材?というんじゃったか?いや違うような気がーーー

そんなことを考えていた神奈の思考はそこで止まった、何故なら
神奈「…」ピタ
この気配は!?

最初に感じた気配とは微妙に違うがそれによく似た気配を持つ何かが近くにいる!
日本で感じたあの気配に似ているが…そこまで大きなものでは無いな
当然無視できるわけもなく儂は空港に入ろうとしたが…

新米警察官「あっ!そこの方!ここから先は現在立入禁止ですよ!」
入口にいた警察官に止められた
神奈「何故じゃ?何かあったのか?」
ここまで警察官が集まるなんてただ事では無いと思うが…

青年警察官「知らないんですか?2人の男が空港を強襲したんです、飛行機を奪った上に駆けつけた警察官を20人以上殺害して逃亡するという…」
中年警察官「おい!勝手に情報を一般人に流すなと言っておいただろう!」
青年警察官「え?あ!すみません!」
中年警察官「すいませんね、コイツまだ配属されて1週間しか…ん?いない…」
狐「…」トテテテ…
青年警察官「…狐?」

ふー、変化の札が残っていて助かったわい…悪いが通らせてもらうぞ
2人の警察官の足元をすり抜け、空港の奥へと向かう
狐改め神奈「…」トテテテ

む…
奥に行くにつれ、空港内が荒れていることに気がついた
神奈「…」
神奈の最も嫌いな血と硝煙の匂い…戦争の匂いが嗅覚に届く

神奈「…っ」
やはり日本ほど治安が良くない…気配の確認をしたらすぐに井上達を探さねば…む!
トン、と音なく跳躍し、目の前の建物の屋上へ着地する、そして

神奈「見つけたぞ」
気配の元を見つけた
煙草の匂いのする男「…姉ちゃん何者だ?なんで分かった?」
神奈「貴様こそ何者じゃ、その気配に加え、何故この姿の儂を『姉ちゃん』などと呼ぶことができる?」

狐の変化を解き、男と対峙する
男「あークソ、タバコ補充+野次馬になりに来ただけなのに…」

タッ
神奈「っ!」
来る!
男「ツいてねぇなぁ!」

ピッ

何か飛んでくる!?
片手でそれを受け止める…までは良かったがーーー
神奈「…?」
これは煙草?

その受け止めた物に一瞬注意が逸れてしまったのが失態だった
男「んんっ…」
神奈「…っ!」
まずい!
男「っ飛んでけぇ!」
ドグッ

神奈「ぐっ…ううっ!」
回し蹴りをなんとか腕で防御したものの、衝撃を殺し切れずーーー
ーーードサッ
神奈「ぐは!」
青年警察官「うわぁ!」
屋上から一気に地面へと落下してしまう

神奈「く…」
なんと重い蹴り…この男…!
青年警察官「あ、あなた、今どこから…それより大丈夫ですか!?」
男「ほいじゃ、ちゃっちゃと退散しますか」
神奈「ま、待て!」
去ろうとする屋上の男の方へ手を伸ばす

男「…ジェルフといい、あんたといい、流行ってるのか?待つわけねーでしょ、じゃーな」
そうして男は建物の向こうへと消えていった…
神奈「…」
気配が消えた…

神奈「逃げられた…!」
青年警察官「あ、あの…」
心配そうに儂を見る青年警察官
神奈「なんでもないんじゃ…」
青年警察官「…」

埃を軽く払い、心配してくれた青年警察官に一言礼を言ってから儂は空港を出た
警察官がいるということは井上はここにはおらんじゃろう、他の場所をあたろう
もし井上がいれば警察官からガイモ殿の家にでも連絡が行くはずじゃろうしな

ピリリリリ…
丁度地図を開いたところでラフリアから貰った通信機が鳴る
神奈「通信が…神楽?」
少しもたつきながら通信機の接続スイッチを押し、耳に当てる

神奈「神楽か、どうした?」
通信機「ご主人!すぐに戻ってきてください!私1人ではどうにもなりません!」

通信機越しに聞こえる神楽の焦った声、それにーーー
神奈「この音…!」
神楽の声の他に破壊音が聞こえるのは気のせいではない!
神奈「…!何があった!?」
通信機「それがーーー」


神奈「な…」
なんてことじゃ…!
神奈「それはまことか!?…神楽?神楽っ!」
いきなり通信が切れ、何も聞こえなくなる
神奈「くっ!」
よりにもよってこのような時に!

通信機をしまい、ガイモ殿の家へ走る
神奈「何故…何故ですか…!」


第3話 part3へ続く



↓プロフィール

ガイモ・ツネルズ
性別 男
年齢 27歳
身長 169㎝
体重 71㎏
血液型 O型
髪の色 黒
目の色 緑
武器 無し
好きなもの 家族、支えてくれた使用人
嫌いなもの 無し

井上グループの数ある傘下企業の内の1つの上に立つ社長(どのような会社かは割愛)
娘を溺愛しており、妻とも上手くいっている理想の家族
使用人を含め、誰とでも分け隔てなく接する理想の上司だが最近、今にでも娘が親離れしてしまうのではないかと本気でヘコんでいる時があるとかなんとか

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