九尾の妖狐は学生と洋食が好き

ルルザムート

第2話 ハイジャック part3

アメリカ領海内上空 旅客機『398便』内 操縦室内


神楽「はい…はい…はい!上段から4番目のスイッチを…はい!下げました!」
通信機に向かって話しながら操縦席で奮闘する神楽

神奈「神楽…儂に何か出来ることはーーー」
神楽「お気持ちは有り難いですが1つもございません!無礼を承知で申し上げますが集中するので話しかけないで下さい!」
神奈「わ、分かった…」

神楽のあまりの必死さに思わず面食らってしまった
あのような神楽は初めて見たわい…

神楽「はい、自動操縦を解除…はい!」
通信機の向こう側の言葉に相槌を打ちつつ、先のスイッチに続き何かの機械を操作する神楽、と同時にーーー

神楽「うくっ…」
神奈「のわっ!」
立っていられない程の飛行機が揺れ、儂はしりもちをついてしまう

本当に大丈夫なのか…!?
神楽「上がれ…!上がれ…!」
だが神楽は動揺することなく揺れに耐えながら何かのレバーを引く…すると少しだけ揺れが収まり、なんとか立てるようになった

神楽「次はどうすればいいですか?はい…中央の…スロットルレバーですね」
これなら無事に着陸できるのではないか?そう思っていた、だが次の瞬間ーーー

神楽「うわーっ!?」
何かに驚き、文字通り飛び上がる神楽。頭を天井の機械にぶつけた所為か、余程驚いた所為なのか、人間から妖狐の姿に戻っている

神奈「おい神楽!大丈夫なのか!?」
神楽「い、今…人間が目の前に…空の上なのに人間が2人…」
神奈「人間…?」
緊張のあまり幻覚でも見てしまったのか…だが儂らにそれを考えている余裕は無いことに機械の出す警告音は教えてくれた

神楽「っ!しまった!」
神楽は慌てて操縦席に座り直し、機器を確認する
神楽「設定は…大丈夫、高度も問題なし、燃料もーーー」

その時、後ろからでも分かるほど神楽の動きが一瞬凍りつき、直後ーーー
神楽「…燃料が漏れてる」
神奈「なっ…」
最悪の事実を神楽が呟いた

神奈「神楽っ、何が起こっておるんじゃ!?」
話しかけるなと言われていたがこんな言葉を聞いて話しかけない訳にはいかなかった
神楽「説明している時間はありません!こちら398便!応答をーーー」

落とした通信機を拾い、通信を始める神楽
神楽「上のスイッチを?はい…いえ駄目です!燃料漏れが止まりません!」
機械と格闘する神楽、だが警報音は収まらないどころかますます大きくなっていき、ついには機体が大きく揺れ始めた

神楽「も、もうだめだ…!ご主人、脱出します!来て下さい!」
神楽は頭の通信機を投げ捨て、儂の手を引いて操縦室の外へ走る。すぐにラフリアの元へ戻れたが、そこは既にパニック状態だった
くっ…しかしあれだけ揺れた上に指示を出せる乗務員がいないのでは避けようがない状態か…

ラフリア「あっ!神奈ちゃん!と…神楽くん?その姿は…」
こちらに気付いたラフリアが少しだけ硬直する
神奈「あ」
そういえば神楽、先程妖狐に戻ってしまってからそのままじゃった…

神楽「話している時間はもうありません!ラフリアさん!お母さんの手を握って絶対離さないで下さい!脱出します!」
叫ぶ神楽に危機感を覚えたのか、ラフリアは母親の腕をガッチリ掴み目を瞑っている

神楽「よし…!」
それを確認した神楽が儂とラフリアの腕を掴んで飛行機内前方付近にある出入り口へと移動する

いや待て、確かに儂らは脱出できるが…
神奈「神楽!他の人間は…!」
神楽「無理です!全ては救えません!」

儂が言い切るより早く、きっぱりと厳しい口調で『無理』だと言い切る神楽、だが儂も引く訳には行かなかった…そのまま放っておけば死んでしまう命を、儂は放っておくなど儂の理に反している!
神奈「見殺しなどできるか!何か方法がーーー」

ピンッ
唐突に聴こえるあの嫌な音、さっき操縦室でも聴いたその嫌な音の方に儂と神楽は振り返る、そこには…

ルトル「死ね…化…物…!」
ルドルフと同じ爆弾を持ったルトルが立っていた!
神楽「っ!!!」

直後、神楽が飛行機の扉を殴り壊し、
神楽「飛んでっー!!」
儂の手を引いて機外へと飛び出した!その数秒後、先程まで乗っていた飛行機が背後で大爆発を起こし、儂らは爆風で少しだけ飛ばされる

神奈「ぬおっ…!」
ラフリアの母親「キャーッ!」
ラフリア「お母さん…!」ギュ…

高速で落下していく中、冷静に術を唱える神楽
神楽「『絶空』!」
神楽がそう叫ぶと足元に金色の大きな結界が1枚出現し、儂らの4人の身体を優しく受け止める

神楽「ふぅ、お怪我はありませんかご主人?」
神奈「大丈夫じゃ、よくやったぞ神楽!」
儂は神楽の頭を撫でながら落ちてゆく飛行機を見る

神楽「飛行機は…どうやら海の近くに見えるあのコンテナ置き場に墜落したようですね…」
神奈「…」
もし儂が機内で暴れなければこうはならなかったのではないか?一瞬そんな考えがぎる
あの飛行機に乗っていた人間よ、そして墜落現場にいた人間よ、すまぬ…儂の所為じゃ…

神楽「…ご主人、過ぎたことを悔いても仕方がありません、次を生かしましょう」
神奈「神楽…」
儂の心を見透かしたように慰めてくれる神楽
ああ…神楽は強いのぅ…

神楽「とりあえず地上へ降りましょう、あ!ラフリアさん、あまり身を乗り出すと危ないですよ!」
神奈「ありがとう、神楽」
儂らはゆっくりと地上へと降り、まず始めにラフリア達を彼女らの家に送り届けることにした


飛行機墜落より少し前…
アメリカ東部 ホテル INOUE 8階 801号室


鈴「暇ですねぇ…」
蓮「…」すーすー…
ベッドの上に腰掛け、隣のベッドで眠る蓮さんの寝顔を見ながら呟く
呑気に寝ちゃって…話し相手ぐらいにはなって欲しいものですよ…

別に話し相手がいないというわけではないが…
?「鈴、本当にこの国に神奈が来るのだろうな?」
鈴「ええ、間違いありません、神奈様は必ず来ますよ神域かむい様」
2つ隣のベッドに腰掛ける神域様にそう答える
神域「そうか」

我等妖怪達のカシラ、狐坂   神域 様に暇つぶしで話しかけられるほど私のメンタルは強くない
身長高いのも相まって威圧感が凄いんですよ、威圧感。

鈴「…」チラチラッ
起きてくれないかな、と蓮さんを見るが当然そんなもので起きてくれるハズもなく…
蓮「…」すーすー…
もー、役立たずですねぇ…

誰か神域様とお喋りしてくれないかなー…
そう思った時だった
銀髪少女「あー、あー、」
鈴「うわっ」
神域「!」

突然窓ガラスの前に、いや窓ガラスに映って少女が現れた
うっわ、誰でしょう?見たところ8〜9歳ぐらいですが…妖怪には見えませんね

神域「…」スッ
鈴「…」コクン
神域様が手で下がっていろと私に命令しつつ、ベッドから腰を上げて少女の前に立つ、そして私は頷いてからその通りに下がる…ついでに蓮さんを叩く

蓮「んんっ…」すーすー…
…しかし起きない
もぉ!ホントにねぼすけさんですね!
今度は手加減なしのキッツいのを喰らわせようとしたところで窓ガラスに映った少女が再び喋り出した

銀髪少女「あー、あっ?これ映ってるのか?」
神域「…なんだ貴様」
威圧感マックスで睨みを効かせながら神域様が少女に問いかける
…どう見たって子供なんですからそんな高圧的な態度をとらなくても…

銀髪少女「げっ!」
ほら、泣いちゃ…ってないですね、慌ててるようには見えますけど

神域「何を慌てる?貴様がやったのだろう?」
高圧的な態度を崩さず、質問する神域様
それにしてもこの子一体なんなんでしょうか?人間にも妖怪にも見えないですし…

銀髪少女「ちょっとトラブっただけだ、あんた妖怪だろ?」
いやいや、神域様の金色の目と耳と9本ある尻尾を見たらわかるでしょう
神域「…見たらわかるだろう」
あ、被った

銀髪少女「おたくのトップと話がしたいんだ、近くにいるだろ?代わってくれ」
神域「…私が妖怪の頭目である狐坂   神域だ」
銀髪少女「そうか、あんたか」

うん、後ろから見てるだけでも分かりますね、神域様間違いなくイライラしてますよコレ
神域「私は忙しい、何の用だ」

たいして忙しくないどころか暇だったのにこの対応、やっぱり苛立ってますね…まあ神域様は妖怪以外には基本高圧的ですし…

銀髪少女「んじゃ、要件だけ言うぜ」
窓ガラスに映る少女は突然何もないところから弓を出現させ、それを持ってこう言った
銀髪少女「一緒に人間共ぶっ潰さねぇか?」


第3話 part1に続く



↓プロフィール

狐坂   神域かむい
性別 男
年齢 ?(見た目は30代前半)
身長 189㎝
体重 110㎏(尻尾の重さ含む)
血液型 A
髪の色 金
目の色 金
武器 ?
好きなもの ?
嫌いなもの 人間

娘、神奈を追いかけてアメリカまでやって来た九尾の妖狐
妖怪達をまとめる長として常に妖怪の安全を考えているが威圧感が強すぎて妖怪達からも軽い恐怖の対象になっているようだ
殺せる状況なら特に何もなくても殺すほどの人間嫌い、そのせいでこれまで何度も神奈と衝突した過去があり、いまだ娘との仲は治っていない、周囲の妖怪も神奈と神域の和解を望んでいる者が多いが彼自身『間違っているのは神奈』と決めつけている以上、和解にはまだまだ時間がかかりそうだ

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