九尾の妖狐は学生と洋食が好き

ルルザムート

第2話 ハイジャック part1

2012年 9月21日 12時00分
(日本時刻 9月22日 1時00分)
アメリカ領海内上空 旅客機『398便』内


神奈「むむむ…」
アメリカへ向かう飛行機の中で『世界の珍味』という本を読みながら唸る

神奈「のう神楽、この本に載っておる『キャビア』というのは本当に世界三大珍味なのか?」
神楽「え?はい、キャビアはフォアグラ、トリュフと合わせて世界三大珍味と呼ばれています。食べたいんですか?」
神奈「いや、そういう訳ではないんじゃが…」

本に載っているキャビアの写真を神楽に見せる
神奈「この黒い豆のようなものが本当に珍味なのか?」
神楽「私も食べたことは無いので珍味なのかは分かりませんが…」
…それもそうじゃな

少女「へっくしゅ!」
神楽「っ!!??」ビクッ!
神楽が1つ後ろの席にいる子供のくしゃみに驚き、変化へんげが解けそうになる
神奈「落ち着け、子供のくしゃみじゃ」
神楽「は、はい…」

例の気配の所為じゃろう、神楽が落ち着きを無くしてきておる。まあ儂自身も落ち着いているといえば虚言になるが…

神奈「…」
意識を集中し、『先程まで感じていた』気配を探る
…やはり何も感じられん、一体何故…?

最初に気配を感じてから1時間程でその気配がぱったりと消えてしまった、まるで霧のように、もし死んだとすれば残留する気配でわかる筈…ということは気配の主は死んでいない

神奈「くぅ…」
『おぞましい何か』が息を潜めて今から向かう場所の何処かにいる。もちろん放ってはおけないがその事を意識するだけで…

神奈「気がおかしくなりそうじゃ…」
儂がこんなことでは神楽はーーー
神楽「ご主人」

心配そうな顔をして儂の左手を両手で包み込む神楽
神楽「大丈夫です、ご主人は私がお守りいたしますから…」
神楽…

そう言ってくれた神楽の手は震えていた。神楽自身が怯えていることがはっきりと分かるほどに

神奈「…ありがとう」
どうやら神楽は儂が思っている以上に勇敢なようじゃな、全く自分が情けないわい
神楽「いえ、式として当然のことですよ、ご主じーーー」

少女「ねえ!」
神奈&神楽「うひゃあっ!?」ガバッ
突然の背後からの声に儂は神楽に、神楽は儂に抱きつく形になってしまった、声も上げてしまったので周囲の乗客の視線が一瞬こちらへ向く

少女「大丈夫?大きいお姉ちゃんも小さいお姉ちゃんも…2人ともすっごく顔色悪いよ?」
ああ…少女の声に震え上がってしまうとは…
気持ちが落ち着き、儂らは離れた

神楽「あ、うん大丈夫だよ、ありがとう。あと僕は男の子だよ」
今はこの少女と会話でもして気を紛らわせるとするか…

少女「えー!ほんとに?かわいいからお姉ちゃんかと思ったよ?あ、私ラフリア!お兄ちゃんは?」
神楽「僕は神楽、こちらが神奈様だよ、それにしてもお姉ちゃんって…酷いなぁ」
神奈「ふむ…」

そういえば神楽はよく女子おなごに間違われる事が多い…しかし儂には何故神楽がそう見えるのか全く理解出来ん(幼いように見えるのは確かじゃが…)

ラフリア「神楽くん、神奈ちゃん、よろしくね!」
神楽「うん、よろしく」
神奈「よ、よろしく…?」
神奈ちゃん…?なんだか変な感じじゃーーー
その時だった

乗客A「キャー!!」
女性の悲鳴とパーンという乾いた音がほぼ同時に後ろの方から響いてきた
ラフリア&神楽「!?」
神奈「なんじゃ!?」

音のした方を見ようと座席から少し身を乗り出した瞬間
男「動くな」
目付きの悪い男に拳銃を突きつけられた
んな…!?
男「黙って座っていろ」

こやつ、ハイジャックという奴か?だとしたら刺激するのはまずい
神奈「…」
儂は男の言うとおりに体を戻して座席に座り直す
男「それでいい、大人しくしてくれればこちらも危害は加えない…おい、やるぞ」


男がそう言うと1人の女と2人の男が付近の座席から立ち、男の方へと集まる
いい加減そうな男「ホントにやんのかよ、ルドルフ」
真面目そうな男「今更やめるとは思えないけど…」
大人しそうな女「…」

どうやらこいつらは男…ルドルフの仲間らしい
神奈「…」
こやつら僅かじゃが死臭が…この飛行機内ではないが人を殺しておるな…

ルドルフ「さっき送ったメールの通りだ、ここは任せるぞ、ヘンリー、リーラ」
ヘンリー「へーい」
リーラ「…了解」

ルドルフは2人の仲間を残し、もう1人の仲間の女を連れて機内の前の方へと消えていった

ヘンリー「さて、そういう訳だから少しの間仲良くしようじゃないか、もし仲良くできない奴がいたら…」
ヘンリーはニヤリと笑って拳銃を出しーーー
カチャッ

なんと近くの乗客を撃ち始めた!
乗客A「ぎゃっ!」
ヘンリー「こんな風にぃ!」
乗客B「うわぁ!」
ヘンリー「こんな風にぃ!」
乗客C「ひぃぃ!!」
ヘンリー「こんな風にぃ、死んでもらうからそのつもりで頼むぜー!」

バタバタ死んでゆく乗客を目にしながら握りしめた拳には血が出ていたがそんなことが気にならない程の怒りが湧いてきていた
神奈「ぐっ!あやつめ…!」

殴り飛ばしてやろうと立ち上がろうとするが神楽に腕を掴まれ、止められる
神奈「…!?何をする神楽!離せ!」
神楽「落ち着いてください、危険です!」
神奈「拳銃がどうした!儂が成敗してくれるわ!」

神楽の制止を振りほどき、席を立ってヘンリーに近づく
神楽「危険なのはご主人じゃなくて乗客ーーー」

あと数歩というところでヘンリーとリーラがほぼ同時にこちらに気付いた
ヘンリー「おっと、コイツはまあ…」
リーラ「あー、1人はいるんだよねこういう人…正義の味方気取りのバカか、恐怖のあまりおかしくなったバカか…」
ラフリア「神奈ちゃん!?」

右手に妖気を溜め、握りしめる
神奈「貴様っ!」
ヘンリー「なんだよ?日本人w」

ケラケラと笑いながら儂に向けて引き金を引くヘンリー
神奈「ふんっ!」
ヘンリー&リーラ「!!??」

左手で飛んできた銃弾を弾き飛ばし、術の用意ができた右手でヘンリーの腹部に掌底を打ち込む
神奈「『魂昏こんこん』!」
ヘンリー「っのが…!ってめぇ、やりやがっ…」グラッ

ヘンリーが言葉を言い切る前に右手を引き、『奪ったもの』を『変換』する
神奈「ふん!」
パキンと音を立て、奪ったものーーー精神力が秘薬…『薬狐丸やっこがん』へと右手の中で形になる

ヘンリー「…」ドサッ
リーラ「ちょ、ちょっとヘンリー…!?みゃ、脈が!?…よくもーーー」
神奈「やかましい!」

間髪いれず魂昏2発目をリーラの腹部に打ち込む
リーラ「ぐ…」グラッ…ドサッ

右手の中の2つめの薬狐丸を1つめのと合わせて持っていた小瓶にしまい、ルドルフ達の後を追う
ラフリア「え…なに?」
ラフリアの母親「何を…したの?気絶するような突きには見えなかったけど…」
神楽「えっとそれはーーーああっ、ご主人!私も行きます!」

早足で追いついて来た神楽を連れて機内を歩く、そしてーーー

神奈「どこにもおらん…やはり1番前のここ、操縦室か…」
立入禁止と書かれた操縦室への扉は半開きで、ついさっき誰かが出入りのどちらかをしたのは明白だった
間違いなくこの先じゃな…

神奈「ゆくぞ神楽…」
神楽「………はい…」


第2話 part2へ続く



↓プロフィール

風車   鈴
性別 女
年齢 ?(見た目は20前半?)
身長 155㎝
体重 44㎏
血液型 B
髪の色 黒
目の色 赤
胸 B
武器 ?
好きなもの ?
嫌いなもの ?

蓮と呼ばれた青年と一緒に羽田空港内にいた女性
今のところ種族、目的等、不明な点が多い
神奈達と同じく、アメリカの『気配』について調べようとしていた
だが何故か神楽に飛行機のチケットを譲り、蓮を連れて羽田空港から去っていった
どうやら神奈の父親と面識があるようだが…


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