進め!非常識ガールズ!

ルルザムート

第2話 part4 不思議なトンネル

鋳物工場 エントランス


遥「〜くうう…」
頭がメッチャ痛い…どっかにぶつけたかも…
頭を抑えながらゆっくり立ち上がり、横に倒れている桜ちゃんを見る

うん、目立ったケガは無いね
遥「桜ちゃん大丈夫?」
桜「大丈夫…ハルちゃんありがとう」
遥「よし!…あ」

付近を見回して真っ先に瓦礫で塞がった工場の入口が目に入る
遥「参ったなぁ、他に出られそうなところは…窓があるにはあるけど…」
どの窓も2階…いや3階の高さに相当する位置にある、流石に踏み台も無しにあんな高さまでは届かない

遥「…」
もちろんこんな廃工場にせっかく入ったのだから探検したい気持ちはある、けど1時まであんまり時間がないし…そして何よりもーーー
桜「…」
なんだか桜ちゃんの様子がおかしい、顔色が真っ青だし…たいして暑くもないのに汗ビッショリだし…

遥「…休める場所を探そうか」ヒョイ
桜「へ?わっ!」
桜ちゃんを抱っこして、休めそうな場所を探して歩く
んーと…

桜「はっ、遥さん!?」
遥「ん?」
見ると顔色が真っ青だった桜ちゃんがいつのまにか真っ赤になっている
本当に体調が悪そうだ…早く探そう

桜「これは!その!なんというか…!いや、何をしてるの!?」
遥「え?お姫様抱っこ」
人によって違うと思うけどあたしはこれが1番抱えやすいと思ってる

桜「いや、だからーーー」
遥「おんぶの方がよかった?」
桜「!!??」
モー、変な桜ちゃん…やっぱり体調が悪いんだ

遥「桜ちゃん、気づいてないのかもしれないけど顔色ホントに悪いよ?遠慮しないで抱っこされてて、ね?」
桜「…………うん」
よし、んじゃ探そう

再び歩き始め、休めそうなところを探すその途中で『休憩室』と書かれた部屋を見つけたけど…
遥「うーん…」
休憩室って書かれてる割にイスとテーブルしか無いじゃん…

長椅子の1つでもあればそれを使ったのだが…その部屋に桜ちゃんを寝かせられそうなスペースは無かった
他のとこ行こう

結局1階で休めそうな場所は無く、2階に上がってやっと見つけることが出来た
遥「お、ここ良さそう!」
『所長室』と書かれた部屋に入り、壁際に置かれたソファに桜ちゃんを寝かせる

遥「それじゃ桜ちゃんはここで休んでて!」
桜「うん…本当は…ずっと眠かった…の…」
さてと、あたしは出口を探しにーーー
桜「…」すぅ…すぅ…


遥「…」
…桜ちゃんが元気になるまでここに居よう
遥「…」なでなで
桜「んー…」

さて!あたしは桜ちゃんがいつ起きてもいいようにずっと起きてなきゃね!
桜ちゃんの頭を撫でながらあたしはそう決めた


2012年 9月21日 13時30分
鋳物工場内 所長室
(日本時刻 9月22日 2時30分)


桜「…ん」
なんだか眩しい…
目を閉じていても分かるほどの強い光に照らされ目が覚める

桜「んー…ん!?うわっ」ごすっ、ピッ
体を起こし激しく光る『それ』を見る
は、ハルちゃんが!いや、ハルちゃんの髪留めが青く光ってる!

桜「ハルちゃん、起きて!髪留めが!」ユサユサ
眩しくならないよう髪留めを手で抑えながら床で寝ているハルちゃんを揺すり起こす
遥「んぁ…桜ちゃん?おはよー…?」ぽやぁ…

目を擦りながら起ききってない顔で私を見るハルちゃん
っ!かわいい…!じゃなくて!
桜「髪留め見て!」ヒョイ
抑えていた手でそのまま髪留めを取り、ハルちゃんに見せる

遥「うわ!凄いっ!」キラキラ
髪留めに負けないくらい目を輝かせるハルちゃん
桜「もう!マイペースだなぁ…ん?」

つきかけたため息は視界の端に映ったモニターのとある映像で止まった
桜「…?」
私が起きた時にどこかぶつけた気がしたけど…それで電源が入ったの…?何処かの通路の監視映像みたいだけど…あ、誰か映ってる

黒髪の青年「〜〜〜」
…!この人は確か…ジェルフって言うーーー
眼帯銀髪の青年「〜〜〜」
っ!!??

桜「…」
…まずい
遥「桜ちゃん、もう大丈夫なんだよね?じゃあ探検行こうよ!」

桜「…ごめん、今はそれどころじゃないの!急いでここから出ないといけない!」
私は髪留めを握りしめ入ってきた出入口へと走る
壊滅したんじゃ無かったの!?

遥「わー!桜待って!髪留め返して!」
後ろからハルちゃんが追いかけてきている音がする
ごめんハルちゃん…でも手を繋ぐとハルちゃんの行きたい方に行っちゃうから…

ハルちゃんが付いてきてるのを確認しつつ出入口に着いた、だがーーー
桜「…!?」
ど、どういう事…?
私は瓦礫をどかして急いで外に出るつもりでここに来たのに…

桜「なんで瓦礫が全部なくなっているの!?」
異常な点はそれだけじゃない、瓦礫で埋もれていた入口付近の壁が瓦礫ごとドーム状に綺麗に抉られて無くなっていた…いや『消し飛んでいた』という表現が近いかもしれない

どうしよう…ここから出るべきなの?でも通っても大丈夫なのか…
遥「ねー、髪留め返してよ〜」
???「…」
っ!

それを聞くと同時に後ろから来ていたハルちゃんの腕を掴んでエントランス受付カウンターの裏に隠れる
今話し声が…誰かいる…!

桜「…仕方ない」
他の出口を探すしかない!
ハルちゃんの手を引いて工場の奥へと走…ろうとしたところでハルちゃんに止められた

遥「待ってってば!」
桜「ハルちゃん静かに!」
もしこっちの存在が気付かれれば一貫の終わりだ、私もハルちゃんも殺される…!

遥「上見てよ!」
桜「上…?」チラッ
上を見るが高い天井に電気のついていない小さな電球がいくつか設置されてるぐらいで変なところは無い

桜「今は悪ふざけしてる場合じゃないの!早くーーー」
遥「違うってば!あれ多分赤外線センサーだよ!」
桜「センサー?」
再び天井を見てみるがやはり電球があるだけでおかしなところは何もーーー

遥「これ使ってアレ見て!」スッ
そう言ってハルちゃんはカメラを起動した状態のガラケーをこちらに手渡した
一体なんの…えっ!?

ガラケーのカメラを通して天井を見ると天井の電球…いや電球に偽装したものから床へ赤いレーザーのような線が無数に伸びているのが見て取れた
な、なにこれ!本数が多すぎてもはや壁みたいじゃない!というかガラケーのカメラって赤外線見えるんだ…

遥「ね?危ないからこっちから行こう」
桜「あ、ありがとう…でもそっちは壁しかないよ」
ハルちゃんが指差す方向にはどう見ても壁しかないけど…
遥「大丈夫大丈夫…よっと!」ポカっ

そう言って得意顔のハルちゃんが目の前の壁を叩くと…
桜「えっ!」
壁だと思っていた場所が電車のドアのように開き、小部屋が現れた

遥「よしっ、乗って!」
私が返事をするより早く私の手を引いて小部屋に入るハルちゃん
桜「こんなところに隠れても…!え?乗ってって今言ったの?」
遥「そうだよ!地下2階!」
機械音声「かしこまりました、したへまいります…」

どうやら小部屋だと思っていたのは大きな貨物エレベーターだったらしく、エレベーターはハルちゃんの言った通りに下へ降りていく
桜「おかげで助かったけど…」
ここに来てハルちゃんの1ヶ月前の記憶が戻り始めてる…じゃなきゃこんなところのエレベーターに気付くはずがーーーまさか!

当たって欲しくない想像が頭をよぎる
桜「もし…」
既に全部思い出してるとしたら…?
そう考えた瞬間、私はすぐ横にいるハルちゃんの顔が見れなくなってしまった、今顔を合わせたら…私の心の奥の奥まで見透かされてしまうような気がしたから

機械音声「」
遥「着いたよ!行こう!」ダッ
桜「…うん」タッ
いつの間にか発光しなくなっていた髪留めを握りしめ、エレベーターを降りて地下壕のような通路に出る
…今は脱出することを考えよう

桜「…?」スンスン
気のせい…?
何処からか腐敗臭がするようなーーー

遥「ん!待って!」バッ
桜「う、うん」
腕で私を制止するハルちゃん、すぐに私にもその意味が分かった
コツコツコツ…
足音…!

すぐ奥の曲がり角の先から足音とーーー
???「…」
???「…」
話し声、それもこちらに近づいてくる
ど、どうしよう

遥「…!桜ちゃんあそこ!」
ハルちゃんが指を指したの天井のダクト…通気口だった
え、ここ!?高すぎて梯子でも無いとーーー

遥「よっ、えい!」ガッ、ぴょん
だが私の一般常識など御構い無しにハルちゃんはスーパーマリモブラザーズのようにジャンプして壁を蹴り、床から3mは高い場所にあるダクトをこじ開け、中へ入っていった

桜「う、嘘でしょ…」
私も運動神経は悪いほうじゃない、だけど流石にこれは…

桜「っ…うわっ」ガッ、どてっ
見様見真似でやってみるがとても出来そうにない
コツコツコツ…
っ!!もうすぐそこまで…!

もうだめだ、そう思った瞬間ーーー
ガチャ、がしっ
え?
近くの部屋の扉が開き、中にいた何者かに部屋へ引きずり込まれた!

桜「キャアッ!?は、離してっ!」ジタバタ
遥「桜ちゃん、あたしだよ!静かに!」
桜「え?ハルちゃん?」
そこでようやく私は背後の人物がハルちゃんであることに気が付いた

部屋の天井のダクトが開いてる…
どうやらハルちゃんが中から鍵を開けてくれたらしい
桜「助かっーーー」
男の声「今声が…」

っ!!
絶体絶命…今の状況を表すのにこれよりふさわしい言葉はないだろう

…キラキラ
遥&桜「!」
さらに追い討ちをかけるように髪留めが再び光り始めた!
コツコツコツ…

ああ…やっぱりアメリカなんて来るべきじゃ無かった…
遥「…!桜ちゃん」
どうせ最後なら…告白、しようかな
男の声「扉の下から…なんの光だ?」コツコツ

遥「桜ちゃんってば!」ユサユサ
桜「えっ!?なに!?」
体を揺すられ我に帰る
…もしかしてハルちゃんの方から告白ーーー

遥「これ…」
ハルちゃんが指し示す方を見ると…
桜「!?」
え、これは…

アニメや漫画でしか見たことのない、青い光のようなもので形成されたトンネルがあった
いつの間にか髪留めの光が消えてる…まさかこの髪留めのせいーーー

そう思ったがそう悠長に考えている余裕はなさそうだった
遥「行こう!」ガシッ
背後からドアノブを回す音が聞こえると同時にハルちゃんに手を引かれ、私達は青く輝くトンネルの中へと入り、走った

…結果として、私はこのトンネルに入ったことをアメリカに来たことなんて問題にならないほど後悔することになる


第3話 part1へ続く



↓用語紹介

ギャラクシー・ウルフルズ
アメリカ東部の鋳物工場をアジト本拠地とする現在最も世界から注目されている大規模なギャング組織
銃器密造、密売や現金輸送車襲撃、また違法薬物を海外に流しているとの噂もあるが防衛時を除き、絶対に殺しをしないギャング集団としても知られている(これも注目を集める理由の1つだろう)
当然アメリカ政府は警察や軍を動かし、対処にあたるもことごとく返り討ちに遭っており、それもあって軍力の低い国の一部は犯罪集団であるにもかかわらずウルフルズのスカウトに躍起になっている所もあるほどだそうだ
また、ウルフルズリーダーの正体は『ガルシア・クラウン』という名前を除いて素性や目的は一切知られていない…


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