進め!非常識ガールズ!

ルルザムート

第2話 part2 不思議なトンネル

2012年 9月21日 8時00分
井上グループ所有ホテル 8階 801号室
(日本時刻 2012年 9月21日 21時00分)


遥「むむむむむ…」
桜「すーすー…」
眠っている桜ちゃんの横であたしは目力MAXで窓ガラス付近を睨みつける

遥「うー…やっぱりダメか…」
あたしがこんなことをしているのはもちろん理由がある、それはーーー
幽霊が見たいっ!

遥「なんで見えないのかな…」
この部屋に入った直後、ほんの数秒だけだが4人の幽霊をあたしはたしかに見たのだ
えーと、窓ガラスの前あたりに孤坂先生に似た男の人の妖狐がいて、窓ガラスに映った女の子と何かを喋ってたんだよね、それで真ん中のベッドで眠ってる男の人と手前のベッド(今桜ちゃんが寝てるベッドかな)の横に黒髪の女の人が立ってたんだ

遥「あんなにいっぺんに幽霊が見えたのに、なんで今は見えないんだろう…」
まあ、1時まで5時間近くあるしいい暇つぶしになりそうだ
ふっふっふ…幽霊が見えるまであたしは諦めないぞ!


2分後



遥「…飽きた」

そりゃそうだよ!5時間ずっと窓ガラス睨みつける暇つぶしなんてどうかしてるよ!あーもう!
遥「ああ、暇だ…」

ホテルの人によるとあと30分でスイートルーム(+スーパーVIP待遇)の準備が整うらしいがあたしはその30分で暇死にする自信があった
飛行機の中で寝ちゃったから眠ることもできないし…

遥「ああ、このままではあたしは暇すぎて死んでしまう」
おお、神よ!あたしに暇つぶしできそうな何かを与へたまへ!

おふざけ半分で両手を掲げた拍子に右手の甲が思いっきり棚にぶつかり鈍い音と痛みが走った
遥「い…!〜…ったーい…!」
よく足の小指をぶつけて痛がるというやつのせいで目立たないかもしれないがこれも充分痛い…ほら、学校で無意味に回転して黒板に手の甲ぶつけた人とか居ない?

バサッ
遥「お?」
手をぶつけた拍子に棚の1番上の段から何か落ちて来た

雑誌?
とりあえず読んでみる…
遥「ふむふむ」
どうやらこのホテル周辺の観光案内のようだ

遥「そうだ、観光行こう」
あたしは京都に行きそうなノリで雑誌を片手にホテルを飛び出した
さーて、どこに行こう?

遥「お、カフェだ…よし!」
記念すべき最初の場所はカフェに決まった、がしかし
…あ
遥「そういえばお金部屋に置きっ放しだ…」
うーん…

取りに行くのはめんどくさい、しかしカフェには行きたい、そう葛藤するあたしの耳に救いの言葉が舞い込んできた
男の声「誰か挑戦者は居ないのか〜?もし俺をノックアウトできたらここにある1350ドルはてめーのもんだぜ〜?」
遥「!」

急いで声のする方に向かうと沢山のギャラリーと軍人と言っても違和感のないガタイの男の人が騒いでいた。…周囲をよく見るとギャラリーとは別に怪我人が多い、挑んで負けたのだろうか?
背の高い男「よ、よし!俺が相手だ!」
ガタイのいい男「おー、いいね!そいじゃ参加料の50ドルを貰うぜ」

え″!
参加するのにもお金がいるのか…
遥「うーん、勝てる勝てない以前に挑戦できないんじゃなぁ…」
諦めてホテルに戻ろうかと思ったがせっかくなのでどっちが勝つか見てから行くことにした

背の高い男「せあっ!」ビュン!
まず先制したのは挑戦者の男、肘打ちが軍人の男の腹部に入る…と思ったが軍人の男はそのガタイに似合わないフットワークで攻撃を避ける

背の高い男「くっ…まだまだ!」
背の高い男は裏拳、回し蹴りと次々に技を繰り出すが全て避けられてしまう
…不用心だなぁ、あんなことしたらすぐ疲れちゃうよ

背の高い男「ハアッハアッ!この…!」
背の高い男の右ストレートが軍人の男の腹部に入る、今度は命中したが…軍人の男はニヤリと笑いーーー
ガタイのいい男「…終わりか、じゃあこっちの番だ」ガシッ
背の高い男「え?」

バッカーンッ!と、軍人の男の凄まじいアッパーが背の高い男の顎を砕いた
ガタイのいい男「出直してこい!がーっはっはっは!」

あたしは軍人の男とノックアウトされて伸びている男を交互に見て考える
うん、勝てそう
それ故に残念だったがあたしが立ち去ろうとする前に軍人の男があたしの視線に気がついた

ガタイのいい男「お!お嬢ちゃん、日本人か?もしかしてサインが欲しいのかな?」
遥「え?違うよ、あたしも賞金欲しいからおじさんと勝負したかったけど参加料払えないから…」
あのホテルのエレベーター、来るまで地味に長いからめんどくさいけど仕方がない…

そう思っていると軍人の男は突然笑い出し、それにつられて周囲のギャラリーも笑い出す
ガタイのいい男「がっははは!そうか、勝負したいのか、よし!日本からわざわざ来てくれたんだ、参加料は無しでいいぞ!」
遥「えっ!ホント!?勝ったらあの賞金も貰える!?」
ガタイのいい男「ああ、勿論だとも!」

願っても無いチャンスだ、言ってみるものだなぁ
ガタイのいい男「そうだ、名前はなんていうんだい?」
遥「遥だよ!絶対勝つからね!」
雑誌を近くのベンチに置き、軍人の男の正面に立って構える

ギャラリー男「おい、グラウス!女の子をイジメるなよ〜!」
ギャラリー女「ハルカちゃん、かわいー!頑張ってー!」
どうやらこの軍人の男はグラウスという名前らしい…どこかで聞き覚えがあるような…?

審判「あのー、ほんとにやるんですか?」
グラウス「勿論手加減はするさ、心配するな」
えー…
遥「手加減しないで本気でいいのに…」ボソッ

審判「分かりました、コホン…では試合、遥vs.グラウス…始め!」
カーン!とゴングが鳴ると同時にあたしは屈みつつ横回転し、伸ばした足でグラウスさんに足払いを掛ける
グラウス「ぬおっ!?」

当然予想外だったらしく、盛大にすっ転ぶグラウスさん、直前まで笑っていた周囲のギャラリーもその一撃であっという間に静まりかえる

遥「女の子だからって手加減しなくていいよ!」
距離を取りつつ次に備える
グラウス「ほ、ほう、どうやらそのようだ…」
審判「ちょ、ちょっと!いくら強くても女の子相手にーーー」

審判の声を無視し、素早いフットワークで距離を詰めるグラウスさん、どうやら本気になったらしい。あたしもそれに向かっていきーーー
グラウス「ぬうん!」
グラウスさんの右フックをスライディングで避けつつ、足の間を抜けて彼の背後を取る

遥「えいっ!」
起き上がりながら、ガラ空きになったグラウスさんの右膝と左膝に両手でそれぞれ掌打を打ち込む、膝カックンとかで狙うあの場所ね

グラウス「くおっ!」
バランスを崩して膝をつき、無防備な後頭部を晒すグラウスさん、あたしはその瞬間を逃さず大人気乱闘ゲーム…『大戦場スマイルシスターズX』に登場するキャラクター、キャプテン・スワンのあの技を繰り出す

くらえ、必殺!
遥「空前…ストライキングニーっ!!」
YESッ!飛び上がり、勢いよく突き出した左膝は見事にグラウスさんの後頭部を直撃っ!5〜6メートル吹っ飛ばし、完璧にノックアウトさせた

審判「は、ハルカさんの…勝ち、です」
ポカンとしながら勝者あたしの名前を言う審判
もー、そうじゃなくてさ…

謎の声「キャプテン・ハルカ、WIN!!!」
…的なのが良かったなー

ギャラリー女「すっごーい!かっこいいよ!」
ギャラリー男「ニンジャ!ニンジャだ!」
ギャラリー子供「サインちょうだい!」
わあっ!と、あたしはまるでスターのようにいっきに人気者へとなったが、あいにく人気になるのが目的じゃない
…というかグラウスってどこかで聞き覚えのある名前だと思ったらアルマ隊の人だったのか…スーパー有名人じゃん

遥「賞金貰っていい?」
審判「え?あ、はい、どうぞ」
こうしてあたしは1400ドル(50ドルはさっきノックアウトされた人の分)を受け取り、置いておいた雑誌を持って近くのカフェへと入り、1番高いアイスココアを注文した、そして…ココアを待っている時だった

遥「…?」
遠目に見える廃工場が目に留まった
なんだろう…ただの廃工場に見えるけど…あれを見てるとなんだかぞわぞわする…

遥「…よし」
あたしの次の目的地は決まった


第2話 part3へ続く



↓プロフィール

グラウス・ガブリアス
性別 男
年齢 42歳
身長 188㎝
体重 109㎏
血液型 O
髪の色 茶
目の色 青
武器 拳
好きなもの アルマ・ルーラン
嫌いなもの ギャング組織

陸軍の女王と呼ばれた、米軍大佐のアルマ・ルーランが率いる部隊にかつて所属していた鬼軍曹
女王アルマを絶対と考え、例え軍に逆らうことになろうともアルマの指示に従っていたがそれが原因となり彼…グラウスは他の部隊へ異動させられ、命令違反を起こしたアルマも少将から大佐へ降格させられ現在の階級に
『女王と共にいられないのなら軍にいる意味はない』と異動後すぐに軍を除隊、その後は体力を生かして大工仕事をしつつ、街中で賞金をエサにアルマのように自分を負かすことのできる人物を探していたようだ

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