Astral Beat

奈園 緋兎

誤作動

 控え室から、円形闘技場に出る。

 もう対戦相手は先に出ているようだ。

 嶺夜は、その人物と対峙する。


 「と、言い訳で、仮免試験を行う。それと、この試験は、進級試験も兼ねているからな。」


 「じゃあよろしくお願いします。」


 今回は、能力の自由行使を出来るようにするため、特殊災害対策局第一班入隊第一実技試験を行う。

 この試験に合格すると、仮免が発行される。

 この仮免があれば、ある程度異能が自由に行使出来るようになる。

 正式に入隊するには、まだ試験はあるが、そこはまた後に受けるつもりだ。
 

 「じゃあいくぞ!」


 轍次はそう言って構えをとる。

 嶺夜も構えをとるが、武術などは今まで習ったことがないので、我流のそれ。
と言うよりは、気合いで空を高速で飛んだり、手から光線を撃ったりするアニメのそれをコピペした。


 「はああああああ!!」

 
 「....ツッコまないぞ?」


 せっかく再現したのに。

 気を取り直してナイフを錬成する。

 攻めにいきたいが、相手の能力が分からないので、受け身になって探りを入れたほうが良い。

 
 「何だ来ないのか?だったら此方からいくぞ!」


 そう言って轍次は、弧を描くように嶺夜との間合いを食らう。


 (...っ! 早いっ!だが、追えない訳じゃない。)


 常人には追えないが、嶺夜も異能で身体能力が底上げされている。

 轍次の動きはしっかり見えている。

 ならば、おとなしく食らう必要は皆無だ。


 「どっせい!!」


 轍次が放った拳を、嶺夜は難なくかわす。

 しかし、次の瞬間、強い衝撃が嶺夜を襲う。


 「うぐっ!?」


 轍次は、その隙を逃さず攻撃を仕掛ける。

 嶺夜は、再びかわそうとするが、体が痺れ、動きが鈍っている事に気づく。

 そのまま攻撃を受け、吹き飛ばされ、壁に叩き付けられる。


 「ガッは!」


 「どうした。そんな事でもうへばるのか?」


 衝撃で、背骨が逝ったが、再生能力があるので、そこは大丈夫だが、

 (糞、まだ痺れてやがる。これは、)


 「電気系の能力か。」


 「まあ、一発受けりゃわかるよな。」


 なるほど、あの俊敏さなども、電気の力か。

 筋肉を収縮させて、常人以上の身体能力を発揮させているらしい。

 
 「...そういう使い方もあるってとこか。」


 「は?」


 そう言うと、嶺夜は、霊脈を自分の体に張り巡らした。

 そして、地面を蹴りあげる。

 その瞬間、足下が爆発した。

 比喩にあらず、訂正はない。

 たとえ、どれだけ動体視力を強化したとしても、到底追うことの出来ない速度を叩き出した嶺夜の右足が、地面に接触した瞬間、運動エネルギーが熱エネルギーに変換されて爆発が起きたのだ。

 
 「うわお。」


 「いや、うわお。じゃねぇ!」


 「ああ、生きてたんですか。」


 「殺る気満々じゃねぇか。」


 「否、過失です。」
 

 深さ3mのクレーターで一頻り阿保なやり取りを交わした。

 
 「そんな事より、爆発に巻き込まれた割にはずいぶん軽症ですね。」


 「寸でのとこでリフレクター張ったからな。」


 「?....まあ、いっか。」


 リフレクターと言うモノについては、後で追及しよう。

 と言うか、これだったらナイフ要らねーな。

 嶺夜はナイフを分解して、再び構えをとる。

 
 「はぁ、ったく。じゃあ、続き始めるぞ。」


 轍次は、電気を纏うと構え直す。

 と言うか、これ、調節出来るか.....?


 「ボサッとしてッと焼け死ぬぞ!」


 「うぅ...v上げてきやがった。」


 先程までとは比べ物にならない程電圧が上がっている。

 Astral beatの補正が掛かっているため、死ぬことはないが、軽度の傷のため、再生能力の判定に引っ掛からず、ダメージが蓄積される。

 これは何度も食らう余裕は無さそうだ。

 嶺夜は、轍次の攻撃を掻い潜り、攻撃を当てていく。

 
 「なかなか動きが良くなってきたじゃねぇか。」


 「はは、そりゃどう....も!」

 
 嶺夜は、右からきた攻撃をいなし、その腕を掴むと


 「せいッ!」


 「どわっ!?」


 轍次を壁に向かって投げ付けた。


 「ッ..ってェ...!?」


 轍次が顔を上げるとそこには


 「なんとか追い込めたのです。」

 
 轍次の体は、地面から生えた岩の塊に拘束されて、首は、湾曲した刃で囲まれている。

 .....これは


 「勝機無し...か。はは、降参だ。」


 それを聞くと、嶺夜は拘束を解いた。


 「ぁぁぁあ.....体中が痛いぃぃぃ。」


 「正直、そんなに電撃食らって動ける奴初めて見たぜ。」


 「耐久力には定評有りです。」


 「まあ、とりあえず、仮免試験合格だ。おめでとう。」


 「ああ、ありがとうございます。」


 「ほら、こいつが仮免だ。失くすんじゃねぇぞ。」


 嶺夜は、特災第一班仮免を手に入れた。


 「そいつがありゃ、隊員として動けるし、多少何か破壊しても大丈夫だ。」


 「へー。」


 「それじゃあ戻るぞ。」


 「はい。」


 こうして、嶺夜は仮免試験に無事合格して、特災第一班の一隊員となったのだった。




 


 

 
 




 
 



コメント

コメントを書く

「現代アクション」の人気作品

書籍化作品