HERO KILLER

ノベルバユーザー316750

プロローグ 中編

俺、矢田部翔はこの世界の住人ではない。突然この世界に転移魔法俺を含めた四人が召喚されたのだ。その訳を話すと長くなるので省略しておく。とにかく王宮の王の間のような場所に息切れが激しい魔道士のような格好をした人達と騎士、メイドを中心に王様が座っている。当然混乱したがそれらが落ち着いて来た頃に王様が謝罪と訳を話してくれたのだがそれよりも俺はそこから逃げ出すことを考えていた。ネット小説を読んでいた俺ならわかる。こういうのはだいたい企みがある。巻き込まれないように早くここから抜け出す方法を探さなきゃいけない。小説では勇者召喚に巻き込まれた一般人という理由で抜け出すことが多い。そのため、ステータスカードを発行した時、職業だったり人種を一番先に確認した結果、
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矢田部翔(17歳)
職業:一般人
LV(レベル):1
MP(マジック):90
PW(パワー):120
ER(ガード):80
AL(スピード):90
SK(スキル):言語理解、英単語変換
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とりあえずホッとした。その後王様に「あのー、私の職業が勇者ではないようなので、出ていってもよろしいでしょうか?」と提案してみると、風が吹くように城を追い出された。提案したのは俺なのだがさすがに早すぎないか?止めることすらしなかったんだぞ。なんか他の三人が睨んでいたし・・・・
そんなことはさておき、面倒事から脱することに成功した後、出たときにもらった(一週間分ある)お金で宿を借り、職を得るためにギルドに行って申請してもらった。そして今では、元の世界に帰るための手段を探す旅に出ている。




「・・・・それでは、マーク一家の護衛の依頼達成、確認しました。報酬は後日引き渡します」
「は、はい・・・」(護衛どころかそれ以上の報酬が出ることやったけどね)
「しかし、ここら辺はドラゴンが出てきて大変大騒ぎになったと聞きましたが」
「そ、そうですよね。私も見かけました。本当、逃げるのに必死でしたよ・・」(逃げるどころか殺しましたけど)
「まぁそれも大丈夫だと思いますよ。何せ国から【勇者】がやって来るのですから」
「へぇそうなのですか。是非とも倒して欲しいですよね・・・」(そこには首なし死体しかないけどな)
「はい、私も期待しています」
「そうですか、それでは私はそれで」
「はい、お疲れ様でした」
そう言って力なく立ちあがり軽く挨拶をしてから外に出てため息を付く。とりあえずバレていなかったことに少し安心したのだ。
(全く、ノエルのやることはいつもハラハラするな。これさえなかったらいいやつなのに)
そう考え、彼女のことについて思い出していった。
本舘ノエル(自分でそう呼んだ。本名は知らない)は俺と同じ転移に巻き込まれた人である。ここイギリト王国と敵対しているボイツ帝国が勇者召喚したところに巻き込まれたのだ。彼女も俺と同じように危機を察知し、上手く抜け出せたのだ。獣人という設定は追っ手から逃れるための策だという。その後、ギルドで申請していたところ、俺と出会い協力体制を築いた。今では、俺と召喚魔法のルートを辿る旅に出ている。




そう考えてる内に集合場所の酒場にたどり着いた。店内に入り、彼女を探していると
「・・・あ、翔ーー!コッチコッチ!」
「・・・早速出来上がってるなノエル・・」
「いいジャーン。何杯飲んでも僕の勝手だしー」
「飲みすぎるなよ、お前弱いんだから」
「んで、バレてなかった?」
「ああ、ドラゴンの話題はあったがその事については大丈夫だ」
「いやーでも、あんたのスキル凄いね。一発で首が消えたのだから」
「お前だってそうだろ。瞬間移動なんか超能力系漫画だったら強キャラだぜ」
「・・・英単語言っただけでそれが現実になる能力持ってる人には言われたくない」
「うぐっ!・・・確かにそうだけど」
俺は勇者ではないが、ある能力を持っている。それは【英単語変換魔法】だ。文字通り、英単語で言ったものが現実になる能力。例えば、『Food』と言ったら『食べ物』が出てくるなど。ざっくり言ってチートである。そしてノエルが持っている能力が【瞬間移動魔法】。文字通り瞬間移動出来る。本気を出せば時まで跳べることが出来る。この能力を使って俺達は生き残って来た。
「まぁそんなことより今は酒だ酒!あんたも飲め!」
「ほどほどにな。お前吐くぞ」
「知るかそんなもん!もっと飲んでやる!」
その声を聞き、矢田部は財布が軽くなることとノエルがしでかすことに胃を痛め、ため息を付くのだった。




『───しーくん』
『───んん?どうした、白川?』
『指令が下ったわ。・・・あの男の始末、お願い』
『了解。あと俺はきよみずだ』
そう言って電話を切り、酒を飲みながら楽しんでる二人を監視する。
(早めに動いて正解だった。後は時間を見計らえばいい)
そう考え、おにぎりを頬張る。
「・・・たく、本当に幸せそうだよな」
何か憧れのような声で彼、矢田部翔を監視するのだった。


そして夜中、誰もいない道を彼は気持ちよく寝ている彼女を背負い、宿まで歩いている。
(本当に、ちょくちょく問題を起こすことだけ治してくれればいいやつなのに)
そう呆れながら背負っている彼女の髪を少しいじくる。その目はどこか子猫を見ているような、和やかな目をしていた。
(・・・・まぁあいつと二人なら、どんなところでも、どんな奴でも───)
「・・・きっと、乗り越えられるよな・・」




「出たな、この台詞。もう飽きたんだよ。もうちょっと考えろよ」



その声を聞き、真っ先に顔を向ける。その男は、顔は見えないが何故か勝てると思えない男だった。。

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