HERO KILLER

ノベルバユーザー316750

プロローグ 前編

森の中を走る。その間に数々の植物等に当たって少し汚れているが、ドラゴンを誘導している中血液も出ていない所か疲れてもいない。まだまだいける。だが時間はない。数百メートル先には小さな村がある。あいつがそれに目をつけてしまった時点でアウトだ。俺達の目的はあくまでその村からドラゴンを遠ざけること。そのため強過ぎず、しかしこちらに目をつけるように刺激しながら────
「おぅりりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ドォォォォォォォォォンンン
嫌な声と音がした。まさかとは思うが、ついにあいつが耐えきれなかったのか?いや、あいつとはちゃんと話をつけているはずだ。わかってくれてるはず。そう思いながら顔を後ろに向ける。そして、苦しもがいてるドラゴンと、清清しく汗を腕で拭いでいる少女が目に入り、
「何をするんだノエルゥッ!?」
と叫んでしまった。
「何って、こいつが僕に炎ぶっかけて来たからムカついた」
「だからお前こいつに蹴りを入れたのか?!」
「勿論」
「勿論じゃねーよ!」
そう叫んで、彼は頭を抱え、
「俺さっき言ったよな?目的はあくまで『ドラゴンの討伐』ではなくて『村の救助』だって。討伐しちゃうと目立つからそれだけは止めろって」
「いいじゃない目立つことぐらい」
「お前はよくても俺はダメなんだよ!」
こうしている間にもドラゴンが起き上がりゆっくりと村の方へ顔を向け始めた。その様子を見た二人は動揺し
「あーくそぉ!殺るしかないかぁ。ノエル、手伝え」
「了━解」
短い会話をした後、彼は後ろに下がり少女はしゃがみ両手を組んで構えた。そして
「行くぞ!」「うん」
掛声を掛けた瞬間、勢いよく走り両手に片足を踏み込んだ後、「ほい」の声と共に勢いよくドラゴンに向かって飛び出した。ドラゴンへと近づいていったとき、彼の右手に槍の両方に三日月の形をした武器、『方天戟』が現れた。これをドラゴンに向けて構える。
「うおおおおおおおおおおお!!」
その声が聞こえたのか、ドラゴンはこちらを向いた。なんだか驚きつつも不敵な笑み浮かべてる感じがする。こうしている間にも口から炎を出す準備をしている。だから噴射されるまでに先端に魔力を溜めて───
「【BRAKE!!】」
その瞬間、ドラゴンの首が消え去ったのだった。




「お疲れお疲れー」パチパチパチパチ
首なしドラゴンをバックに麓を降りるとショートな少女が手を叩いて待っていた。
「てかお前のせいでこんなことになってしまったじゃねーか!」
「一撃でこいつを倒す人に言われたくないわー」
「誤魔化すな!そして帰るな!」
そう言いながら(どうしようこのドラゴン、絶対キティに愚痴ぶつけられる。辛いんだよこれ)と考えて追い掛けるのだった。




『・・・こちら清水、ターゲットを発見。ドラゴンを一撃で倒した模様。隣に女性の獣人を確認。応答を頼む』
『・・・了解。このまま監視を続けて』
『・・・OK』
そう言って携帯を切り、フードを深く被った青年は双眼鏡で少女を追い掛ける少年を再び監視した。
(これ単行本の小説にしたら3巻の途中ぐらいか。となりゃあ指令来るのは今日かも知れんな)
口にツナマヨおにぎりを含みながらそんなことを考える青年。
「・・さて、それでは準備を始めますか」
そしてその青年は森の中へ溶け込んだのだった。

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