異世界転移した代償に生殖器を失った俺がツンデレ女と旅に出る。

I.G

十三話 答え1


「アンナさんがオルサの住人!?
ってことはアンナさんはオルサから来
たってことですか?」

晴天の中、川を水が流れる心地よい音の
中に男の驚嘆の声が上がる。


「あのムカつく女、浮遊魔法を使ったで
しょ? あの魔法は
スペシャルアビリティに分類される魔法
でこの世界の住民じゃ
まず使える人間はほとんどいないの。そ
れを使えるのはあんたみたいな異世界か
ら来た人間かあの空に浮かぶオルサの人
間のどちらか。」


「えっ、レビィさんが行こうとしている
あの島ってそんな強い魔法を使える人が
いるんですか?で、でもレビィさんは操 
作魔法が使えるから、もしまた戦うよう
な事になっても今度は場所さえ悪くなけ
れば簡単に」


「いいえ、それは違うわ。」


零次の言葉をレビィは遮る。 


「あの女、アンナはどうやっていなく
なったの? 思い出してみなさい。」


「一瞬光ったと思ったら体が薄くなって
消えました。もしかしてあれも何かの魔法
なんですか?」


「あら、案外感はいいのね。そうよあの
女は恐らく転送魔法で何処かに飛んだの
よ。」


「でもアンナさんは浮遊魔法を持ってる
んですし、そんな魔法は使えないはずじゃ…」


ここで零次の言葉は途切れる。



いや違う。レビィさんはあいつらって言っ
てた。つまり他にも協力者がいるんだ。
だから…


「答えは出たの?
聞かしてみなさい。」


「…アンナさんの協力者が転送魔法を使っ
てオルサにアンナさんを瞬間移動さした
…という事でしょうか?」


「それで? どうして私は操作魔法をあ
の時使わなかったの?」


「そんなの、操作魔法を使っても何処か
に転送されてしまえば意味が無いから…
ですよね?」


「まあ半分正解というところかしら……
私はあの時その魔法を使わなかったのは
それだけじゃないわ。確かに操作魔法を
使って命令してもすぐに何処かに消える
から使っても意味が無いというのは本当
よ。
これまでも何度もそうやって逃げられた
し。
でもそれだけじゃないのよ…」


言葉が詰まる。これを言っていいのか
レビィは考える。その間を埋めるよう
に再び水の流れる音が耳に響いてくる。
そして意を決して言うのだった。


「私が使ってる操作魔法には制限がある 
のよ。」


「制限?」


それは初めてレビィが零次に対して自分
の弱みを見せた瞬間だった。


「…操作魔法は相手を長時間支配できる
訳ではないし、私の視界に入ってる相手
にしか効果は無いのよ。」


目を合わせられない。零次は今どんな事
を思うだろう。相手を完全に支配する魔
法に弱点があるのだと知ったら…私から
逃げる事が可能ではないのかと考えてし
まうのでないか。そして…また私は一人で…。


「そ、そうなんですか!?」


「……」


「それなら何か対策しないといけません
 ね。」


「は? あ、あんた何言ってるの?
そうじゃなくて私から逃げようとか、
何か考えないの!?」


レビィは困惑する。彼女は零次を操作魔
法で服従させているのだと考えていた。
しかし、それは違った。 


「逃げる? 今更そんな事とする訳ない
じゃないですか。だって俺の居場所なん
て今はレビィさんの隣しかないですし。」


零次は困惑しているレビィを不思議そうな
目で見ながら淡々と語る。


「あ、あんた私のせいでこんな世界に
来る羽目になったのにどうして…どうし
てそんな事が言えるのよ!?」


「どうしてって…」


零次もまた考える。何故俺はレビィさん
に付いて来てるのかと。考えてみれば、
この世界に来てからというもの、常識を
遥かに越えた事の連続で辛いことが多か
った。
それに加えレビィという女性には無理難
題を押し付けられ、その度に罵倒をくら
う、だかたまにみせるその彼女の優しさ
に気づいていくのがこの上なく嬉しかっ
たのかもしれない。だから…零次は躊躇
う事なく言った。


「俺もレビィさんの夢を叶えさしてみた
くなったからです。」


風が吹き抜ける。川に沿って下ってきて、
少し湿った風がレビィの白髪を揺らす。
頬は少し赤く染まる。


「そう…ならいいの。」


荒だってしまった心を落ち着かせるかの
ように一息してレビィは口にするのだっ
た。そして、これから長く続くであろう
その旅の行く末を考えるように彼女は流
れる景色を眺めるのだった。




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