異世界転移した代償に生殖器を失った俺がツンデレ女と旅に出る。

I.G

三話 能力


吹き抜ける風がまるで俺の不安をも吹き
飛ばすかのように通り抜ける。


「うっ…光…?」


森を抜け、暗闇に慣れた零次の目を太陽
の光が容赦なく照りつける。


「…すごい!」


太陽の光を受けて青々と茂った草や花が
森の外に広がっていた。だが、零次に驚
きの声を上げさせたのはそれだけではな
かった。


あれは牛?羊にしては大きい…それに木
の上には五メートルはありそうな巨大な鳥ま
でいる。


零次の目に入る生き物全てが見たことの
ないものだらけであった。


「何、ボーとしてるのよ。早く来なさ
い。」


見惚れていた零次をレビィはうざそうな
目を向けながら言い放つ。それに体を怯
ませながら零次はついて行った。


「いい? 零次。貴方に今から魔法の使
い方を教えるわ。」


「え、魔法?
そんなの使えるわけない
じゃないですか。」


草原の近くにあった小川で少し休憩を取
り、レビィは零次に言った。


「いいわ…見てなさい。」


そう言うとレビィは零次の前に立ち、こ
う言った。


「跪きなさい。今ここで。」


その言葉は今まで発していたレビィの言
葉とはまるで違った。


「えっ? え!? 体が勝手に…」


零次はレビィの言葉どおり体の力がスト
ンと抜け、そのまま倒れ込むように地面
に跪まずいた。


「くそっ…! どうして!?」


必死に動こうとしても指一本動かない。


「もういいわ。」


スッと体が軽くなり動くようになった。

「いいわね?
今見せたのは操作魔法。 
私の言った言葉には誰も逆らうことがで
きない。たとえ、ほらそこの魚も。」


そう言うと小川を泳ぐ魚に向かって「陸 
に上がれ」と言った。すると決して陸に
上がるはずのない魚がピチピチと跳ねる
ように陸に上がってきた。それを零次は
目を点にして眺めていた。


「す、すごい…でもこんなの俺なんか
に…」


「いいえ、できるわ。」


できるわけがない。そう言おうとした零
次をレビィは遮り続けた。


「どうして私があんたみたいなのをわざ
わざこの世界に召喚したと思ってるの?
いい? 別世界から召喚された者はそれ
と同時に一つの魔法という能力を得られ
るの。
その魔法は強大で元々この世界に住
む人々が使える魔法なんかよりよっぽど
強いのよ。」


「その魔法を使ってレビィさんの願いを
叶えろと?」


「あら、案外察しがいいのね…」


「でも、どうやって?」


「そうね、どんな能力かわからないか
ら…とりあえず零次、この本を使って一
つ一つ試してみなさい。私はその間寝と
くから。何か分かったら教えなさい。」


そう言うとレビィはそそくさと寝る準備
を始めた。


「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。
この本一体何なんですか!?」


「何って…魔法の本よ。それに魔法がい
ろいろ載ってるから試してみろって言っ 
てんのよ!」


レビィのいきなりの命令に零次はえぇ…
と困惑仕切った声が口から溢れた。


「あー、忘れてたわ。零次。こっちに来 
なさい。」


すでに寝る準備に入っているレビィは、
途方に暮れている零次を呼び付ける。そ
してこう言うのだった。


「零次。貴方のここに来た本当の理由は
何か答えなさい。」

その口調はさっきの操作魔法と一緒だっ
た。しかし、その全く意味の分からない
質問に零次は戸惑った。


「はい?
え、レビィさんが俺をここに
召喚したんでしょ!? 全然意味がわ
から…」 


「もういいわ。寝る。あんたは作業に
戻りなさい。」


零次の疑問の声に又もやレビィはその言
葉を遮り今度は本当に眠りについた。


何なんだ…この人は!
どこかも分からない場所に連れて来とい
てなぜここに来たの?
ってもうめちゃくちゃだ!
もうホントに…大事なあそこはなくな
るし、服もなくなるし、魔法を使えとか
言うし。今日は最悪な日だったな…。
それになんと
言ってもこの謎のレビィっていう女性の
人。怖くて自分勝手で…そう!
自己中だ! 間違いない。


零次は溜まっていた愚痴を心の中で消
化し、青空を見上げ、そしてもう一度
レビィを見た。



光沢の入った真っ黒な鎧に包まれた艷や
かな肌。そして太陽の光を反射する腰ま
で伸びた長い綺麗な白髪。目は青空にも
負けないブルーアイ。誰もが彼女を美女
として捉えるだろう。そんな女性と生殖
器を失った児時零次との旅はまだ始まっ
たばかり。


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