異世界転移した代償に生殖器を失った俺がツンデレ女と旅に出る。

I.G

一話 出会い


「召喚!」


辺りが黄金の光に包まれ、暗闇の森の中
が照らされる。


「…ちっ! また失敗…。」


その森の中には白髪の女と動か
ぬ何体もの死体があった。



ブーブーブーブー…  

「ん…朝…」


心地よい眠りから遠慮のないアラーム音
で俺はいつものように起こされた。目を
覚ませば、いつもと変わらぬ部屋が俺を
迎える。まだ現実に追いついていない意
識と体を必死に起こしフラフラになりな
がらテレビをつける。


「昨晩、〇〇県〇〇市で〇〇さんが不明
になりました。この事件を先週の事件と
結び付け、警察は捜査を行っています。」


「なんだまたか…これで13人目だろ。」


少年はポカーンと空いた口の中に朝ごは
んをゆっくりと入れていく。 

少年の名は児時零次。年は16才。高校に
通っているどこにでもいそうな男である。
近頃、零次の住んでいる近辺で行方不明
の事件が多発していた。


「って、もうこんな時間!」

ご飯を口に流し込み、誰もいない家向か
って悲しげに一言、いってきますと言っ
て家を出ていった。



両親は早くに亡くなり今は寮暮らしを
している。中学まで親戚で育てられ、寮
付きの学校に入って一人暮らしを始め
た。一人で寂しいときもあるが今の生活
を生き抜くだけでそんな気持ちになる余
裕はなかった。学校が終われば家に帰っ
て家事、勉強、バイトをこなし、朝にな
れば学校に通う。それの繰り返しが寂し
さを忘れさせていった。


けれど、その生活を失う瞬間は突然訪れ
た。



「もう9時か…急いで帰んないと」


バイト帰りのバスに乗り遅れいつもより
帰るのが遅れてしまった零次は寮への足
を速める。

その時だった。

「うわっ! 眩しい!」

突然自分の目の前が黄金の光に包まれ
た。かと思うと今度は体が宙に浮いた。
いや、正確にはそんな気がした。眩しさ
で目が開けられない零次にそれを確認す
ることができなかった。


「あぁ! うわぁ!」


零次ははっきりとしない意識を必死に保
とうとしたが、そのまま気を失った。




「よし! やっと成功した!」


森の中に女の歓喜の声が上がる。以前の
森と違うところがあるとするならそれは
その女の前に死体と少年が横たわってい
ることだった。


「ん…なんだ…朝か…」


その少年はいつもどおり、はっきりしな
い意識の中でアラームを止めようとする。


「あれ………ない…って、え!?」


目を覚ました少年は辺りの状況と目の前
の白髪の美女に目を止め、驚いて声を
出す。


「だ、だ、誰ですか!? ここは!?」


「あーあ、ギャーギャー鬱陶しい! 
静かにしろ!」


白髪の美女ば零次の困惑の声を自分の声
の圧力でねじ伏せた。


「ここは、サルテナ。私が貴方をこの世
界に召喚したの。…それよりあんた今すぐ
全裸になりなさい。」

                 「へ…!? 
いやいやちょっとやめてください。
いやホントに! 警察呼びますよ!」


零次の抵抗も呆気なくその女に
よって阻止された。



「なるほど…そうか。」


全裸になった零次の体をマジマジと
女は眺める。


何なんだこの人…危ない人だ。どうにか
してここから逃げないと。でも服が破か
れちゃったし…このままじゃ誰かに見つ
かったら露出狂扱いされちゃう。


零次はとりあえず破けた服で大事なとこ
を隠そうとする。その時だった。異変に
気づいたのは。


「え…? いや…え?」


ないないないどこにも…あれが!大事な
あれが!


「おい! 貴方名前は」


パニックに陥っている零次など気にも止
めず女は少年の名を聞いた。

                  「え!? いやいやいやそれより…」

                   「名前は何かと聞いているのよ!早く言
いなさい!」

                   「…零次、児時零次です…」

                   「そう…私の名前はメリール・レビィ。
これから貴方には私の願いを叶えてもら
う。貴方は私のためにこれから生きなさい。いいわね?」

                   「いや! いいわね?って言われても
無理です! それよりも俺の体が、
正確に言うとあそこがないんです!
これ貴方の仕業じゃないんですか!?
返してください!」

                
「返す? そんなの無理よ。貴方はこ
の世界に転移した代償として体の一部を
失ったの。むしろ失ったのがそこだった
から貴方は生きてるのよ。」


転移?
何を言っているんだこの人は…そ
れに俺があそこを失ったから生きてるっ
て全く意味がかわからない。 


零次は暗闇になれてきた目でよく自分の
周りを見渡して見た。


「ひっ!」


腰を抜かした零次の目の前には13人も
の人間がそこに横たわっていた。


「零次。」


恐怖で足を震わせる零次に対し、レビィ
はこう言った。


「私の願いを叶えるの…そうしたら貴方
をもとの世界にかえしてあげる。」


真夜中の何も聞こえぬ森の中でその声
は、まるで零次を逃さぬように
響いたのだった。

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コメント

  • AZAMI

    状況がよく分かる書き方をしていて読みやすかったです。これからも頑張ってください!
    もしよろしければ僕の作品も読んでください!

    1
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